相続財産 : 不動産(土地・建物)が3カ所
被相続人 : 母
相続人 : 子
母が九州在住で、子が名古屋市に住んでいます。子は訳あって幼い頃に母と分かれて、ほとんど面識がありません。母が生きているのかどうかも知りませんでした。
ある時、九州の市役所の税務課から通知が来て、「お母さんが亡くなって不動産の相続が発生した。戸籍を調べたら相続人があなただけなので、今後の固定資産税の支払先を決める為に相続手続をして欲しい」というものでした。
これに対して依頼人は、「ほとんど面識の無い人の財産など受け取れない」と回答しました。それで市役所の役人は困ってしまって、「それなら相続放棄の手続をして家裁の通知書のコピーを送って欲しい」と言いました。もちろん、「本当に相続しなくていいんですか。まあまあの価格の不動産ですよ」という台詞も忘れなかったようですが、依頼人の意思は変わりませんでした。
世の中には、いろいろな考え方の人がいるということを、この時は痛感しました。私も相談に来られた時、「相続してすぐに売却して、現金に換えられたら問題ないんじゃないでしょうか」と提案しましたが、やはり依頼人の意思は固かったのです。
非常に珍しい事例だったので、とても印象に残っています。