A 遺言書に書くこと自体はできますが、法的な効果は期待できません。遺言ではプラスの財産の分け方については効果がありますが、借金のようなマイナスの財産の分け方には効果がありません。
Q では遺言で借金を相続しないとされた相続人も、安心できないということでしょうか?
A はい。借金の相続について遺言で指定しても効果はありませんので、「借金を相続しない」と書かれた相続人も借金を免れることはできません。例え金融機関などの債権者に遺言書を見せたとしても、法定相続人ならば通常どおり請求されます。
Q では遺産分割協議書で、借金を相続しない相続人を定めることはできますか?
A いいえ。遺産分割協議書の場合も遺言書と同様に借金の相続人を決めることはできません。理由としては、遺言書や遺産分割協議書で借金の相続人を決めることを可能にしてしまうと、財産や収入が無くて返せない相続人に借金を押し付けて、事実上、借金を踏み倒すことができてしまうからです。法律は、このような行為を許していないということですね。
Q では借金の相続は、法的にはどうなるのでしょうか?
A 借金の相続は法的には法定相続分で各相続人に相続されます。法定相続人が配偶者と子ども2人ならば、配偶者2分の1・子がそれぞれ4分の1ずつとなります。借金の相続を特定の相続人に決めるためには債権者の同意が必要です。しかし現実には債権者が同意するケースは極めて稀です。債権者の立場から見たら、法定相続人全員に請求できる方がリスクが少なく有利だからです。
A はい。家族信託には遺言代用機能というのがあります。「残余財産の帰属」という項目を作って契約書に記載することで、特定の人に特定の財産を帰属させることができます。事実上、遺言と同様の効果がありますので、信託契約では頻繁に使われています。
Q では遺言との違いはあるのでしょうか?
A はい、あります。遺言の場合は遺言者が単独で作ることができますが、信託は契約なので必ず委託者と受託者の両方が必要です。他にも、遺言は単独行為なので、単独で新たな遺言を作って変更することも可能ですが、信託契約を変更するためには双方の合意が必要です。あと家族に知らせたくない場合は、単独でできる遺言を選択するべきでしょう。
Q 遺言と比べて信託の特徴は何でしょうか?
A 信託では財産を明確にしていることです。信託契約では「金融資産として〇〇円を信託する」と特定する必要があるからです。しかし遺言の場合は「A銀行B支店の金融資産」のように記載することが多いです。理由は、利息が付いたり引き出したりして遺言書を書いた時とは金額が異なることが多いので、金額を特定しない方が都合がいいからです。
Q 信託と遺言が両方あった時は、どちらが優先されるのですか?
A 信託契約書と遺言書が両方存在した場合、どちらが優先されるのかというと、信託契約書に記載された財産については信託が優先されると考えられています。これは法律の大原則に「特別法は一般法に優先する」という考え方があるからです。詳しく説明すると、信託法は民法の特別法にあたり、遺言は民法の規定で、民法は一般法になります。
A 前にも取り上げましたが、不動産の生前贈与登記または売買登記をする時に、贈与者や売主の住所が引っ越しで変わっていた場合は、前提として住所変更登記をしなければなりません。住所が異なる状態のままでは、法務局は贈与登記や売買登記を受け付けてくれません。
Q では引っ越しを何度もしていた場合はどうなりますか?
A 登記情報に記載された住所から、贈与者や売主が引っ越しを複数回していた時は、日付が問題になります。例えばA市B町1番地から、令和6年3月1日にA市B町2番地に、令和8年3月1日にA市B町3番地に引っ越しをしていた場合はどうなるか考えてみましょう。
Q その事例の場合は2つの住所と日付を並べて書くのでしょうか?
A 一見、そうするのが正解のように思えますよね。しかし正解は最後の住所と日付だけを書くのです。具体的には、令和8年3月1日住所移転 A市B町3番地 となります。途中の住所と日付は記載する必要が無いとされています。3回、4回と引っ越しているケースも中にはありますから、最後だけ書けば良いという取り扱いは非常に助かりますね。
Q 引っ越しを繰り返しているうちに元の住所に戻った時は、どうなりますか?
A 引っ越しを何回か繰り返していたら、登記情報に記載された住所に戻ってきてしまった場合は、住所変更登記を行う必要は無いと考えられています。住民票と登記情報の住所が一致する訳ですから、実務上、問題ないからでしょう。
Q 住所変更と結婚や養子縁組による氏名変更が重なっている時は、どうなりますか?
A この場合は別々に分けて申請する必要は無く。一つの登記で申請できます。登録免許税も1回分で済みますから助かりますね。
Q 住所変更登記の登録免許税は、いくらになりますか?
A 登記申請には登録免許税がかかります。住所変更登記の登録免許税は不動産1個につき1000円です。一戸建ての場合は建物と土地で2000円ですね。マンションの場合も部屋と敷地で2000円になります。(マンションの敷地が2つ以上ある場合は金額は増えます)
A 不動産の贈与登記を依頼されると、司法書士はまずは該当の不動産の登記情報を取得します。登記情報の所有者欄を見た時に、引っ越し等で現在の住所と変わっている場合があります。この場合、贈与登記の前に住所変更登記を入れる必要があるのです。
Q なぜ住所変更登記が必要なのでしょうか?
A 異なる住所で贈与登記が申請された場合、贈与者が同姓同名の別の人である可能性があります。別人である確率は低くても100%同一人物とは言えないわけです。不動産登記に間違いがあってはいけませんので、このままでは審査は通りません。一旦、住所変更登記をして、登記情報の上では同一人物であると確認できる状態にしてからでないと、贈与登記ができない仕組みになっています。
Q 引っ越しの時期が古くて役所で証明できないと言われました。そんなことがあるのでしょうか?
A 最近になって住民票の保存期間が延長されましたが、それまでは5年で廃棄されていました。これだと古い引っ越しは戸籍の附票に記載されていない場合があります。(ただし、一つ前の住所であれば、どれだけ古くても住民票の従前の住所に記載されます)
Q それは困りますね。どうしたら良いのですか?
A 住民票や戸籍の附票で証明できない場合、①権利証を出す、②上申書を出す、③固定資産税の納税通知書を出す、などの方法で法務局を説得していくことになります。3つ全部を要求されることもありますので、結構大変です。
Q 最近、スマート変更登記というのが始まったと聞きました。住所変更登記は不要になったのでしょうか?
A これはよく質問されるのですが、スマート変更登記は法務局に申出をしていないと対象になりません。たとえ申出をしていたとしても、法務局が変更情報の検索をするのは2年に1回程度で、いつするのか分かりません。これでは贈与登記がいつになったら可能になるのか分かりませんので、現実的ではありません。
A 相続登記を長い間やっていると不思議な事例に出会うことがあります。その中の一つに、住所変更登記の事例があります。
Q 住所変更登記の不思議な事例とは何ですか?
A 例えば以下のような事例です。相続登記をするためには、被相続人(故人)の住民票の除票または戸籍の附票が必要です。そこで戸籍の附票を取ったところ、「A市B町一丁目1番地 住定日 昭和50年6月10日」と記載されていました。ところが登記簿を見ると「A市B町一丁目1番地 所有者甲 登記原因 昭和50年6月5日売買」となっていました。これは非常に不思議なことなのですが、分かりましたでしょうか。
Q 何が不思議なのでしょうか、答えを教えてください?
A 答えは、A市B町一丁目1番地に住所を移したのは6月10日なのに、登記簿には6月5日の時点で同じ住所が書かれているからです。売買が行われた時にはA市B町一丁目1番地の住民票は取れなかったはずなので、一見、不思議なことが起こっているように見えます。(買主の住民票は売買の登記の必要書類です)
Q 本当に不思議ですね。なぜ、こんなことが起こっているのでしょうか?
A 実は登記簿のコンピューター化が深くかかわっています。実は事例の案件では、コンピューター化される前の紙の登記簿にはきちんと「A市B町一丁目1番地6月10日住所変更」という付記登記がされていました。売買の後に住所変更がされたことが分かるようになっていたのです。
Q それがコンピューター化されると、なぜ分からなくなるのでしょうか?
A コンピューター化される時に、付記登記で記載された住所変更登記は省略されて、最初から変更後の住所で所有者欄が記載されるというルールがあるのです。そのため住所変更されたことや日付も分からなくなってしまうのです。法務局としては効率化のために行っていることなのだと思いますが、変更の経緯が分からなくなってしまうのは困りますね。
Q どうすれば気付くことができるのですか?
A 司法書士ならば慣れているので気付くことができますが、一般の方だと難しいでしょう。紙の登記簿が保存されていれば、それを見れば分かりますが、保存されていなければ推測するしかありません。
A 保存期間が満了したために公的書類が廃棄されて発行できなくなった場合、役所で廃棄済証明を取得することができます。戸籍の保存期間は150年と非常に長いので(以前は80年だった)、廃棄済証明を取得する場面は多くないでしょう。しかし、住民票の除票の場合は現在は戸籍と同じ150年に延長されましたが、以前は5年だったので廃棄されてしまったケースは珍しくありません。
Q 廃棄済証明を取得するのは、どんな場合ですか?
A ほとんどが相続手続を行う場合です。不動産の相続手続では被相続人(故人)の住民票の除票が必要書類になっているからです。 住民票の除票とは亡くなった人は住民票から除かれるので、別途、除票と言う形で作成されることから付けられた名称です。
Q 住民票の除票が廃棄されている場合、廃棄済証明を取得すれば相続手続は可能なのでしょうか?
A 以前は廃棄済証明だけでは足りず、法定相続人全員の上申書が必要でした。しかし、所有者が不明の土地を無くすという政府の政策により手続が簡素化され、被相続人の不動産の権利証があれば上申書は不要になりました。
Q 廃棄済証明書はどこの役所でも取れるのでしょうか?
A いいえ。廃棄済証明書は廃棄になった役所でないと取得できません。遠方の場合は郵送請求になりますね。郵送請求をする時は、申請書と定額小為替と返信用封筒と本人確認書類が必要になるのが一般的です。これは役所ごとに異なっているので、事前に役所に問い合わせて確認しましょう。
Q 定額小為替とは何ですか?
A 役所に書類を郵送請求する時の費用の支払方法です。郵便局で定額小為替を購入して(手数料は1枚200円)同封して送ります。面倒なのと手数料が高いのが批判の対象になっていて、最近ではカードで払える役所も少しずつ増えてきています。
A 不動産が借金の担保になっている場合、返済が滞った時に競売にかけるために不動産に抵当権を付けます。抵当権を付けた時に借りた借金を返済し終わったら、実質的に抵当権は不要になりますが、登記簿に記載された抵当権は勝手には消えてくれません。登記簿に記載されたままだと借金が残っているように見えますから、通常は司法書士に抵当権抹消登記を依頼して削除してもらいます。
Q 抹消の時に必要な書類はどうなりますか?
A 通常は返済が終了した時点で銀行から郵送されてきます。登記原因証明情報や代理権限証書などが中に入っています。案内文には「お近くの司法書士に同封の書類を持参して抹消登記を依頼してください」と書かれていることが多いですね。
Q 返済が終了したのに抹消の書類が届きません。なぜでしょうか?
A 恐らく不動産に付いているのが抵当権ではなく根抵当権である可能性が高いです。根抵当権とは主に事業者向けの担保制度で、一度不動産に付けると極度額の範囲内で何度でも借入が可能になっている特殊な抵当権です。
Q なぜ根抵当権だと銀行から書類が届かないのでしょうか?
A 根抵当権の場合、最初に借りた借金を返済し終わっても、同じ根抵当権で新たに借り入れを起こすことができます。裏を返せば常に新たな借り入れが発生する可能性があるので、一つの返済が終わっても抹消する理由にならないのです。ですから銀行も返済が終了しただけでは抹消の書類を郵送することはありません。
Q では根抵当権を抹消したい場合は、どうすれば良いのでしょうか?
A 銀行に対して「もう新たな借入はしないから根抵当権を抹消したい」と伝える必要があります。ただし銀行も商売なので事業が順調ならば新たな貸付をしたいので、「いざと言う時のために根抵当権は残しておいた方がいいですよ」と言われる可能性はあります。
Q では根抵当権の抹消に銀行が応じるのは、どんな時ですか?
A 一つは事業を止める時、次は事業主が亡くなって相続が発生した時です。
事業主が亡くなっても他の人が事業を継ぐ場合は、根抵当権の債務者を変更して続ける場合もあります。
Q 根抵当権の抹消はしなくてはいけないのですか?
A 新たな借入が発生しないならば、必ずするべきです。なぜなら、売却をしようと思ったら根抵当権の抹消は絶対に必要になるからです。いずれしなければならない登記なので、早めにしておいた方が良いでしょう。
A 根抵当権は主に事業者が所有している不動産に付けられているもので、設定した極度額の範囲内ならば何度でも借りられるようにした特殊な抵当権のことです。事業者は仕事の都合で何度も借りたり返済したりを繰り返すので、返済する度に抵当権を抹消して、再び借りる時にまた抵当権を設定していると手間も費用もかかります。そのために考え出された仕組みです。
Q 相続不動産に根抵当権が付いていることがあるのですか?
A はい、あります。未払いの場合は抹消することはできません。根抵当権が付いた不動産を相続することになりますね。被相続人が返済し終わっている場合は相続登記以外に根抵当権の抹消登記を申請することになります。
Q 根抵当権抹消の注意事項はありますか?
A 抵当権抹消の場合だと登記原因が「債権放棄」となっている場合がありますが、根抵当権抹消の場合は「債権放棄」が原因だと、別に根抵当権確定の登記が必要になります。
Q 根抵当権確定の登記とは何ですか?
A 根抵当権は何度も貸し借りができる仕組みなので、特定の借入が無くなっても効果が無くなりません。再び借り入れるかもしれないからです。そこで「債権放棄」で特定の借入が無くなったとしても、根抵当権を抹消するためには、もう二度と根抵当権付きの借入は起こしませんという確約が必要になります。その確約に当たるのが根抵当権確定の登記になります。
Q 根抵当権抹消のためには必ず確定の登記が必要なのですか?
A いいえ。抹消登記の登記原因が「根抵当権の放棄」または「根抵当権の解除」ならば確定の登記は不要です。根抵当権そのものを無くすという意味だから確定が不要になるのです。
Q それらの登記原因にするように銀行に伝えるべきですか?
A 通常は相続が発生していて事業を継続する気が無いないならば、銀行が用意する登記原因証明情報の登記原因は何も言わなくても「根抵当権の放棄」または「根抵当権の解除」になっています。
Q 根抵当権の抹消はしなくてはいけないのですか?
A 根抵当権の抹消はした方が良いです。もし売却をしようと思ったら根抵当権の抹消は絶対に必要になるからです。買主の立場になってみると、根抵当権が付いたままの不動産は買わないですよね。不動産業者からも買主に融資する銀行からも絶対に抹消するように言われます。いずれしなければならい登記なので、早めにしておいた方が良いでしょう。
A 相続不動産について相続税の計算をする時、要件に当てはまれば「小規模宅地の特例」と言う制度を使うことができます。小規模宅地の特例を使うと、不動産評価額が8割減になるという大幅な相続税の減税につながります。当てはまる場合は必ず使うべきです。
Q 小規模宅地の特例を使う時には、すぐに売却してはいけないのですか?
A 小規模宅地の特例を使う場合は様々な要件がありますが、その中でも間違えやすいのが売却時期です。不動産の相続に当たって売却して換金するというのは頻繁に行われることですが、うっかり売却時期を間違えると小規模宅地の特例の要件を満たさなくなり大きな損失を被ることになります。
Q では小規模宅地の特例の要件を満たす売却時期とはいつですか?
A 被相続人の居住用宅地、つまり自宅不動産の場合、原則として「相続開始時から相続税申告期限まで保有していること」という要件があります。相続税の申告期限は、相続発生を知った日の翌日から10ヶ月以内です。そのため、相続開始から10ヶ月以内に売却してしまった場合、要件をクリアしていないことになってしまうため、小規模宅地の特例の適用を受けることができなくなってしまいます。
A 相続手続を司法書士に依頼した場合は、一般的に提携している税理士を紹介してくれます。実は相続税申告は全ての税理士が行っている訳ではない特殊な手続です。相続税申告をほとんど経験してない税理士も珍しくありません。しかし、相続手続を扱っている司法書士と提携している税理士は相続税申告の経験が豊富である場合がほとんどです。経験の浅い税理士に当たるリスクは少ないと思います。
A 長期間、遺産分割協議や相続登記が放置されていて現在の所有者が登記簿からは不明になっている土地が数多くあります。その中で法務局が法定相続人に相続登記をするように促す通知を出した土地を長期相続登記等未了土地と言います。
長期相続登記等未了土地は登記簿に付記登記として記載されますので、登記簿を確認すれば分かるようになっています。
Q 確か相続登記が義務化されたと思ったのですが、今後は解消していくのでは?
A 今後は少しずつ解消していくでしょう。しかし全国には非常に多くの長期相続登記等未了土地が存在するので、解消を促進するために新たに設けられたのが法定相続人情報と言う制度です。
Q 法定相続人情報とは法定相続情報一覧図のことでしょうか?
A いいえ違います。名称が似ているので勘違いする人も多いと思いますが、全く異なる制度です(もう少し区別しやすい名称にした方が良いように個人的には思いますが)。
A 長期相続登記等未了土地の相続は放置している間に相続人が増えていくパターンがほとんどなので、法定相続人が通常の場合よりも多くなるのが一般的です。すると戸籍や住民票以外にも必要となる書類も多く準備も大変になります。慣れている司法書士がやっても「大変だ」と思うケースも珍しくありません。ましてや一般の人がやり遂げるのは相当に厳しいと思います。法務局から通知が届いたら、相続登記に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。