司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

7月 27 2026

相続税の節税 相続税⑭

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 相続税は、どういう場合にかかるのですか?

A 相続税は基礎控除を超える相続財産がある場合にかかります。相続税の基礎控除の計算方法は「3000万円+法定相続人の数×600万円」です。基礎控除の範囲内ならば相続税の申告をする必要がありません。一方、基礎控除を超えた場合は被相続人の死亡後10カ月以内に相続税の申告をする必要があります。

Q 相続税の基礎控除の金額を超えるかどうか微妙です。どうしたら良いですか?

A とりあえず相続税の申告をしておいた方が良いでしょう。微妙ならば基礎控除を超えたとしても、大した税額にはならないと予想されるからです。一方、相続税の申告をしないで基礎控除を超えてしまった場合、ペナルティとして本来の税額よりも高額の追徴課税が課せられますから注意しましょう。

Q 夫婦間の相続税の節税には、どんなものがありますか?

A 夫婦間には非常に大きな節税方法があります。それは「配偶者の1億6000万円控除」と呼ばれるものです。夫から妻、妻から夫の相続においては1億6000万円まで相続税がかかりません。これを使えば夫婦間では相続税がかかるケースはほとんどありません。ただし相続税の申告をしないと、この控除は使えません。知らないで申告期限を過ぎてしまうと大きな損失になるので注意しましょう。

Q 不動産の相続税の節税には、どんなものがありますか?

A 不動産の相続には「小規模宅地の特例」という節税方法があります。非常に良く使われる節税で、一定の条件を満たすと宅地の評価額が8割減になるという効果が大きい方法です。不動産が相続財産に含まれている場合は小規模宅地の特例が使えないかを、まずは検討することになるでしょう。

Q 相続の際に生命保険は、どのような扱いになるのですか?

A 生命保険は相続では特殊な扱いになります。まず民法では相続財産にはならないと規定されていて、従って遺産分割の対象にはなりません。しかしこれだと相続税を逃れるために高額の生命保険を掛ける人が出てきてしまうので、相続税法では一定の控除額を超える部分は相続税の対象にするという規定になっています。一定の控除額とは「500万円×法定相続人の数」となります。このように生命保険は民法と税法で取り扱いが異なるという珍しい事例になります。

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7月 21 2026

相続放棄と代襲相続 相続放棄㉕

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 代襲相続とは何ですか?

A 被相続人よりも先に法定相続人が亡くなった時に、その相続権を子が相続することです。例えば親よりも先に子が亡くなった場合、親が亡くなった時に孫が相続人になります。他には法定相続人が兄弟姉妹の時に、兄弟姉妹が被相続人よりも先に亡くなっていた場合は甥姪(兄弟姉妹の子)が相続人になります。

Q 親が相続放棄をしたら代襲相続は発生するのですか?

A 基本的には発生しません。相続放棄をすると最初から相続人では無かったものとみなされます。この理屈で言うと、代襲相続も発生しないことになります。ですから借金を相続しないために親が相続放棄をした場合、子は相続放棄をする必要がありません。ただし注意すべき事例が、いくつかあります。

Q 父の借金の相続放棄をした後に、祖父の財産を相続できますか?

A 父Bが借金を残して亡くなり、子Cが父Bの相続放棄をしました。その後、祖父Aが亡くなった場合、祖父Aから見て孫であるCは、祖父Aの財産を代襲相続することができます。これはCが相続放棄したのはあくまで父Bの相続であり、祖父Aの相続については放棄していないからです。このように相続放棄とは特定の被相続人に対してのみ効果があるものなのです。

同じように甥姪が兄弟姉妹(甥姪から見て親)の相続放棄をした後で叔父叔母が亡くなった時も、叔父叔母の財産を代襲相続できます。

Q 父の借金の相続放棄をした後に、祖父が亡くなり借金が見つかりました。相続放棄をする必要がありますか?

A はい、あります。最初にした相続放棄は父についての相続放棄であって祖父についてのものではありません。父が祖父よりも先に亡くなっているので代襲相続が発生しています。祖父の借金を相続しないためには祖父についての相続放棄をする必要があります。従って、この場合は相続放棄を2回(父の相続放棄と祖父の相続放棄)することになるので注意しましょう。

Q 祖父が亡くなった後、遺産分割協議をする前に父が亡くなった場合、相続放棄はどのようにすれば良いですか?

A まず祖父にも父にも借金があった場合、祖父の相続放棄と父の相続放棄を両方することは可能です。ただし実務的には父の相続放棄をすれば父が相続した祖父の相続権も同時に放棄することになります。

次に祖父にだけ借金があった場合、祖父の相続放棄をして父の財産だけ相続することは可能です。父に借金が無い場合は有効な手段なので覚えておきましょう。ただし父にだけ借金がある場合は、父の相続放棄をして祖父の財産だけ相続することはできません。なぜなら祖父が先に亡くなっているので祖父の財産は既に父が相続しているからです。この点、父が先に亡くなった場合の代襲相続とは結果が違いますので注意しましょう。

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相続放棄

7月 15 2026

遺留分放棄と相続放棄の違い 遺言㉜

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 遺留分とは何ですか?

A 遺留分とは、例え遺言で相続人から除外されたとしても、最低限相続できる権利のことを言います。ただし兄弟姉妹や甥姪には認められていません。遺留分を無視した遺言を残してしまうと、遺言で渡した相続人が他の相続人から遺留分の請求を受けてしまう恐れがあり、相続争いの原因になる可能性があります。

Q 遺留分の請求を受けたら支払わなくてはならないのですか?

A 遺留分の請求のことを法律用語で「遺留分減殺請求」と言います。遺留分減殺請求を受けても支払わないと、訴訟を起こされる可能性が高いです。遺留分減殺請求訴訟は法律家の間でも割と良く行われる訴訟の一つになっていますので、甘く考えるのは危険です。

Q 遺留分を気にしないで遺言を残すには、どうしたら良いですか?

A 遺留分の放棄という制度を使う方法があります。遺言者の生前に遺留分の放棄をしてもらえば、気にしないで遺言を残すことができます。ただし遺留分の放棄を生前にするためには家庭裁判所の許可が必要になります。

Q 遺留分の放棄には、なぜ家庭裁判所の許可が必要なのですか?

A 遺留分の放棄は重大な権利の放棄なので慎重に判断する必要があるからです。そのため家庭裁判所の許可には、いくつかの要件があって、
①放棄する人が誰かに強制されていないこと(自分の意思で放棄していること)
②放棄するのに合理的な理由があること(家業を継がせるために財産を分散させないためなど)
③放棄と引き換えになるような代償を与えられていること
などです。

Q 放棄の引き換えの代償とは具体的には何ですか?

A 色々考えられますが、ストレートに生前に金銭を渡す場合や、不動産の一部を渡す場合、他には生命保険の受取人に指定する場合など様々な方法があります。

Q 遺留分の放棄をすると相続できなくなるのですか?

A これが間違えやすいポイントです。遺留分の放棄をしても通常の相続権は失いません。遺留分が請求できなくなるだけです。例えば「遺言書には不動産について書かれていたが、銀行預金については記載が無かった」ばあい、不動産の遺留分請求はできませんが、銀行預金は普通に相続人として遺産分割協議に参加できます。

Q 遺言者に借金があった場合は、遺留分を放棄したらどうなりますか?

A これが最も注意すべきポイントです。遺留分の放棄は相続権の放棄ではないので、借金は普通に相続します。知らないで遺留分放棄すると大変な損害を被る可能性がありますので、注意しましょう。

Q 遺留分放棄と相続放棄の違いは何ですか?

A 次のような違いがあります。
①遺留分放棄は生前に家裁の許可があればできるが、相続放棄は生前にはできない
②相続放棄は最初から相続人では無かったことになるので借金も含めて全て放棄できるが、遺留分放棄は遺留分以外の相続権は残る
③遺留分放棄は遺留分の無い兄弟姉妹や甥姪にはできないが、相続放棄は法定相続人全員ができる

などです。

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遺言

7月 10 2026

所有不動産記録証明制度 相続登記㊺

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 相続人が相続不動産を探す方法はありますか?

A 令和8年2月から新設された所有不動産記録証明制度を利用すれば、相続した不動産を探すことは可能です。相続登記が義務化されたことに伴って、不動産を相続人が探しやすくするために設けられた制度です。

Q 所有不動産記録証明制度を使えば全ての不動産が分かるのですか?

A 名義人の住所や氏名が一致している不動産ならば全て検索できます。全国どこの不動産でも探せますので非常に便利です。申請の際に現在の住所氏名とともに過去の住所氏名も記載できるので、どちらかに一致していれば探せます。

Q 所有不動産記録証明制度は誰が申請できるのですか?

A 名義人が生存している時は名義人本人が、名義人が亡くなった時は相続人が申請できます。相続人の場合は相続関係を証明する書類(戸籍等)が必要です。

Q 所有不動産記録証明制度はどうやって申請するのですか?

A 書面またはオンラインで申請できます。書面の場合は法務局の窓口に提出する場合と、郵送申請する場合に分けられますから、3種類の申請方法があることになりますね。オンライン申請は登記専用の特殊なシステムを使うことになりますので、一般の方は少し難しいかもしれません。

Q 所有不動産記録証明制度を申請する法務局には管轄がありますか?

A ありません。全国どこの法務局でも申請が可能です。

Q 所有不動産記録証明制度の申請に手数料は必要ですか?

A 手数料として書面申請は1600円、オンライン申請は1500円となっています。書面による郵送申請の場合は返信用封筒と切手の提出が必要です。

Q 所有不動産記録証明制度を利用する時の注意点はありますか?

A 申請書の記載と登記された記載が一致していないと検索されない可能性があります。氏名の漢字が違うとか、旧姓で登記されていたりとか、土地区画整理で住所の表記が変わっていたりとか、ですね。

Q 所有不動産記録証明制度は良い制度ですか?

A 良い制度だと思います。今までは遠縁の親族が亡くなった場合、どこにどんな不動産があるか分からなくて、相続登記が漏れてしまうことがありました。この制度ができたことによって、登記漏れをかなりの割合で防ぐことができると期待されています。

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相続登記

7月 07 2026

遺産分割前の預貯金の相続

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 故人の預貯金を遺産分割前に引き出すことはできますか?

A 以前はできると考えられていましたが、今は法律が改正されて変わりました。以前は、預貯金は名義人が亡くなったのと同時に法定相続人に分割されると考えられていました。この考え方だと遺産分割前でも相続人は銀行で法定相続分を引き出せることになります。しかし銀行の実務の対応は違っていたので、度々問題になっていました。

Q 遺産分割前に相続人が引き出しに来た時の銀行の対応は、どうなっていたのですか?

A 多くの場合で銀行は拒否していました。遺産分割がどうなるか分からない段階で引き出しに応じてしまうと、相続争いに銀行が巻き込まれる恐れがあるからです。そこで最高裁判所が調整するために判決を出しました。

Q 遺産分割前の預貯金の相続について最高裁は、どんな判決を出したのですか?

A 遺産分割前に預貯金が法定相続分で分割されるという考え方を否定しました。この最高裁判決により銀行の実務対応が肯定されて、遺産分割前には相続人の個別の引き出しには法的にも応じる必要が無くなりました。しかし、そうなると新たな問題が起こってきました。

Q 遺産分割前の預貯金の相続で、最高裁判決が出た後の問題とは何ですか?

A 葬儀費用などに充てるために、遺産分割前の預貯金の引き出しが必要な時に対応できないという問題です。そこで法律の改正が行われました。改正後は「法定相続分の3分の1まで、ただし150万円を超えない額」までは引き出しが認められるようになりました。

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6月 29 2026

令和7年9月から名古屋市で住民票のルールが変更 生前贈与⑫

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 名古屋市で住民票のルールが変わったと聞きましたが、本当ですか?

A はい、本当です。住民票や戸籍のルールが変わることを改製と呼びます。令和7年9月のことなので、それ以前の住民票のことを「改製原住民票」とか「改製前住民票」と言います。

Q 令和7年の住民票の改製で何が変わったのですか?

A 令和7年9月以前は、一つ前の住所の欄は「従前の住所」と記載されていました。ところが改製後は「転入前住所」と言う記載に変わりました。同一区内での引っ越しの場合、転入にはならないので記載されなくったのです。よって贈与や売買の登記をするための前提として住所変更登記をする時に、同一区内の引っ越しがあると、証明するのが大変になりました。

Q 古い住民票だと、どうなっていたのですか?

A 令和7年9月以前の住民票の場合、一つ前の住所は「従前の住所」という記載になっていて、同一区内であっても一つ前ならば問題なく記載されていました。この記載は、どれだけ古い時期の引っ越しであっても一つ前ならば記載されていたので、放置されていた住所変更登記をする時には非常に重宝していました。

Q これからは古い時期の引っ越しを証明するためには、どうしたら良いですか?

A 一つ前の住所ならば、改製前住民票を取得する必要があります。改製前住民票を取れば、一つ前の住所は古くても記載されているので、最も確かな方法になります。ただ余分に1通取ることになるので、「何で新しいルールで前よりも不便になってるの」という強い疑問は感じますね。

Q 住民票のルール改製は名古屋市だけなのですか?

A いいえ。順次拡大していくと役所の担当者は言っていました。じわじわと他の役所にも広がっていくものと思われます。

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5月 26 2026

借金の相続は遺言でも決められない 遺言㉛

司法書士の橋本剛太がお答えします。

Q 借金の相続について遺言書に書くことはできますか?

A 遺言書に書くこと自体はできますが、法的な効果は期待できません。遺言ではプラスの財産の分け方については効果がありますが、借金のようなマイナスの財産の分け方には効果がありません。

Q では遺言で借金を相続しないとされた相続人も、安心できないということでしょうか?

A はい。借金の相続について遺言で指定しても効果はありませんので、「借金を相続しない」と書かれた相続人も借金を免れることはできません。例え金融機関などの債権者に遺言書を見せたとしても、法定相続人ならば通常どおり請求されます。

Q では遺産分割協議書で、借金を相続しない相続人を定めることはできますか?

A いいえ。遺産分割協議書の場合も遺言書と同様に借金の相続人を決めることはできません。理由としては、遺言書や遺産分割協議書で借金の相続人を決めることを可能にしてしまうと、財産や収入が無くて返せない相続人に借金を押し付けて、事実上、借金を踏み倒すことができてしまうからです。法律は、このような行為を許していないということですね。

Q では借金の相続は、法的にはどうなるのでしょうか?

A 借金の相続は法的には法定相続分で各相続人に相続されます。法定相続人が配偶者と子ども2人ならば、配偶者2分の1・子がそれぞれ4分の1ずつとなります。借金の相続を特定の相続人に決めるためには債権者の同意が必要です。しかし現実には債権者が同意するケースは極めて稀です。債権者の立場から見たら、法定相続人全員に請求できる方がリスクが少なく有利だからです。

Q では遺言で特定の相続人に財産を全て相続させると書かれていたら、借金がある場合は、遺言で指定された相続人が特別に有利になるのでしょうか?

A 確かに、このような遺言が残されていたら「財産は全て相続するのに、借金は法定相続分しか負担しなくて良い」という状況になり、不公平になります。そこで最高裁判所が、この不公平を是正する判決を出しています。

Q 不公平を是正する最高裁判決とは、どのようなものですか?

A それは、「相続人同士の間では、財産を全て相続した相続人が、借金も全て相続すると解釈できる」という判断をしました。ここで重要なのは「相続人同士の間では」と言う部分です。
債権者との間では変わらず法定相続分で借金は相続されます。債権者は法定相続分で各相続人に請求できます。

そこで遺言で指定されていない相続人が、債権者に請求されて自分の法定相続分の借金を支払った場合は、その支払った分を遺言で指定された相続人に請求できるとしたのです。つまり債権者に対しては支払拒否はできないけれど、支払った分を財産を相続した相続人から取り返すことができるのです。なかなかうまいことを最高裁は考えたと思います。

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遺言

5月 19 2026

遺産の承継において信託と遺言では、どちらが良いか 家族信託㉞

司法書士、橋本剛太です。

Q 信託契約で遺産の承継を決められるのですか?

A はい。家族信託には遺言代用機能というのがあります。「残余財産の帰属」という項目を作って契約書に記載することで、特定の人に特定の財産を帰属させることができます。事実上、遺言と同様の効果がありますので、信託契約では頻繁に使われています。

Q では遺言との違いはあるのでしょうか?

A はい、あります。遺言の場合は遺言者が単独で作ることができますが、信託は契約なので必ず委託者と受託者の両方が必要です。他にも、遺言は単独行為なので、単独で新たな遺言を作って変更することも可能ですが、信託契約を変更するためには双方の合意が必要です。あと家族に知らせたくない場合は、単独でできる遺言を選択するべきでしょう。

Q 遺言と比べて信託の特徴は何でしょうか?

A 信託では財産を明確にしていることです。信託契約では「金融資産として〇〇円を信託する」と特定する必要があるからです。しかし遺言の場合は「A銀行B支店の金融資産」のように記載することが多いです。理由は、利息が付いたり引き出したりして遺言書を書いた時とは金額が異なることが多いので、金額を特定しない方が都合がいいからです。

Q 信託と遺言が両方あった時は、どちらが優先されるのですか?

A 信託契約書と遺言書が両方存在した場合、どちらが優先されるのかというと、信託契約書に記載された財産については信託が優先されると考えられています。これは法律の大原則に「特別法は一般法に優先する」という考え方があるからです。詳しく説明すると、信託法は民法の特別法にあたり、遺言は民法の規定で、民法は一般法になります。

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5月 15 2026

複数回の引っ越しがある場合の住所変更登記 生前贈与⑪

Q 贈与者または売主の住所が引っ越しで変わっていた時は?

A 前にも取り上げましたが、不動産の生前贈与登記または売買登記をする時に、贈与者や売主の住所が引っ越しで変わっていた場合は、前提として住所変更登記をしなければなりません。住所が異なる状態のままでは、法務局は贈与登記や売買登記を受け付けてくれません。

Q では引っ越しを何度もしていた場合はどうなりますか?

A 登記情報に記載された住所から、贈与者や売主が引っ越しを複数回していた時は、日付が問題になります。例えばA市B町1番地から、令和6年3月1日にA市B町2番地に、令和8年3月1日にA市B町3番地に引っ越しをしていた場合はどうなるか考えてみましょう。

Q その事例の場合は2つの住所と日付を並べて書くのでしょうか?

A 一見、そうするのが正解のように思えますよね。しかし正解は最後の住所と日付だけを書くのです。具体的には、令和8年3月1日住所移転 A市B町3番地 となります。途中の住所と日付は記載する必要が無いとされています。3回、4回と引っ越しているケースも中にはありますから、最後だけ書けば良いという取り扱いは非常に助かりますね。

Q 引っ越しを繰り返しているうちに元の住所に戻った時は、どうなりますか?

A 引っ越しを何回か繰り返していたら、登記情報に記載された住所に戻ってきてしまった場合は、住所変更登記を行う必要は無いと考えられています。住民票と登記情報の住所が一致する訳ですから、実務上、問題ないからでしょう。

Q 住所変更と結婚や養子縁組による氏名変更が重なっている時は、どうなりますか?

A この場合は別々に分けて申請する必要は無く。一つの登記で申請できます。登録免許税も1回分で済みますから助かりますね。

Q 住所変更登記の登録免許税は、いくらになりますか?

A 登記申請には登録免許税がかかります。住所変更登記の登録免許税は不動産1個につき1000円です。一戸建ての場合は建物と土地で2000円ですね。マンションの場合も部屋と敷地で2000円になります。(マンションの敷地が2つ以上ある場合は金額は増えます)

Q 同じ住所に住んでいるのに、行政の住居表示実施で住所の表記だけ変わってしまった時でも、登録免許税はかかるのでしょうか?

A いいえ。住居表示実施は引っ越しではなく、単に表記の仕方が変わっただけなので登録免許税は非課税になります。

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4月 27 2026

住所変更登記で引っ越しの経緯が証明できない時 生前贈与⑩

Q 贈与者の住所が引っ越しで変わっていた時とは?

A 不動産の贈与登記を依頼されると、司法書士はまずは該当の不動産の登記情報を取得します。登記情報の所有者欄を見た時に、引っ越し等で現在の住所と変わっている場合があります。この場合、贈与登記の前に住所変更登記を入れる必要があるのです。

Q なぜ住所変更登記が必要なのでしょうか?

A 異なる住所で贈与登記が申請された場合、贈与者が同姓同名の別の人である可能性があります。別人である確率は低くても100%同一人物とは言えないわけです。不動産登記に間違いがあってはいけませんので、このままでは審査は通りません。一旦、住所変更登記をして、登記情報の上では同一人物であると確認できる状態にしてからでないと、贈与登記ができない仕組みになっています。

Q 引っ越しの時期が古くて役所で証明できないと言われました。そんなことがあるのでしょうか?

A 最近になって住民票の保存期間が延長されましたが、それまでは5年で廃棄されていました。これだと古い引っ越しは戸籍の附票に記載されていない場合があります。(ただし、一つ前の住所であれば、どれだけ古くても住民票の従前の住所に記載されます)

Q それは困りますね。どうしたら良いのですか?

A 住民票や戸籍の附票で証明できない場合、①権利証を出す、②上申書を出す、③固定資産税の納税通知書を出す、などの方法で法務局を説得していくことになります。3つ全部を要求されることもありますので、結構大変です。

Q 最近、スマート変更登記というのが始まったと聞きました。住所変更登記は不要になったのでしょうか?

A これはよく質問されるのですが、スマート変更登記は法務局に申出をしていないと対象になりません。たとえ申出をしていたとしても、法務局が変更情報の検索をするのは2年に1回程度で、いつするのか分かりません。これでは贈与登記がいつになったら可能になるのか分かりませんので、現実的ではありません。

スマート変更登記は、あくまで何もしないで放置してある不動産に対して法務局がサービスするものです。売買や贈与などのアクションを起こした時の前提になる変更登記の場合は、今までどおり住所変更登記が必要です。

Q 相続の場合の住所変更登記は、どうなるのでしょうか?

A 相続の場合は登記情報に記載されている所有者は亡くなっていますので、取り扱いが異なります。亡くなった所有者の住所が変更になっていた場合は住所変更登記は不要です。ただし相続登記の申請時に住所変更の事実を証明する公的な書類は必要になります。

Q 相続の際、住民票の除票や戸籍の附票で証明できない場合は、どうなるのでしょうか、贈与や売買の時と同じですか?

A いいえ。相続の場合は亡くなった所有者の権利証が提出できれば、法務局は認めてくれます。実は以前は贈与や売買の時と同じ取り扱いでした。

しかし、所有者不明土地問題がクローズアップされて、政府が相続登記が放置されることを防ぐことに本腰を入れ始めました。それで相続登記が義務化されたのですが、同様に住所変更の証明も簡略化されたのです。スマート変更登記が始まったのも同じ理由で、所有者の住所が分からなくなるのを防ぐのが目的ですね。

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