強制執行
仮執行宣言付支払督促を得た場合、少額訴訟の判決や民事訴訟の判決が確定した場合、
相手方が素直に支払ってくれれば問題ありませんが、それでも支払ってこないケースは残念ながら存在します。
そんな場合は強制執行(差押)を申立てることによって、強制的に回収する必要があります。
債権回収の場合、よほど高額の請求以外は、債権執行を利用します。ここでは、最も利用の多い債権執行について説明します。
債権執行とは
相手方の財産のうち、債権に当たるものを差し押さえる手続です。具体的には、「給料」・「銀行口座」などが代表的です。差押の中では最も費用が安く利用が多いので、差押と言えば債権執行を第一に考えるべきです。
特に給料の差押は、相手方が会社を辞めない限り確実に回収できるので、最も効果が高いです。
☆ 他にも不動産執行や動産執行がありますが、不動産執行は費用が高すぎる為、動産執行は回収率が低すぎる為、あまり利用されないのが実情です。
債権執行の種類
(1) 給料の差押
相手方が会社員や公務員の場合は絶大な威力を発揮します。裁判所からの差押命令が直接、会社や役所に届きますので、相手方は上司に呼び出されて事情を聞かれるのが普通です。届いた時点で、差押の取下を条件に全額支払ってくる場合もあります。
メリット
① 費用が安い
他の強制執行に比べて費用が圧倒的に安いです。印紙・郵券合わせて約8000円で手続が出来ます。
② 回収成功率が高い
相手方が会社や役所を辞めない限り、必ず回収出来ます。
最も成功率が高い差押と言えるでしょう。
デメリット
① 勤め先が分からないと利用できない
強制執行でよく誤解されているのが、「裁判所が相手の調査をしてくれる」と思っている人が多いことです。現実には、裁判所は一切の調査をしません。
差し押さえるべき債権の調査は全て債権者がする必要があります。
従って、相手方の勤め先の情報が無い場合は、給料の差押は出来ません。
(相手方の調査も請け負っている法律事務所もたまにありますが、そういう事務所はたいてい非常に高額です)
② 給料の全額が差押の対象になる訳ではない
法律上、差押が可能なのは給料の4分の1までと決まっています。会社を辞めない限り、いつかは回収できますが、全額回収するには時間がかかる場合があります。
(相手方が、会社に差押が届いているというプレッシャーに負けて、自主的に全額支払ってくる場合もあります)
(2) 銀行口座の差押
相手方の銀行口座を差押えます。裁判所からの差押命令が直接銀行に届き、銀行は命令書に書かれた口座を凍結しますので、自由な引き出しが出来なくなります。
メリット
① 費用が安い
給料の差押と同じく債権執行の一種なので、費用は他の強制執行に比べて安いです。
② 一度の全額回収の可能性がある
給料と異なり銀行口座は全額の差押が可能です。従って、口座の残金によっては、一気に全額回収できる可能性があります。
③ 複数の口座を差押えることは可能
一つの口座では残高が足りない時や、どの口座に残高があるか分からない時などに、複数の口座を差押えることは可能です。
デメリット
① 空振りの可能性がある
相手方が事前に口座の残高を0円にした場合は、空振りに終わる可能性があります。
② 銀行名と支店名が分かっている必要がある
銀行口座の差押には、銀行名と支店名が必要です。意外と知られていませんが、口座番号は必要ありません。裁判所は調査をしてくれませんので、銀行名と支店名が分からなければ差押は出来ません。
債務名義
強制執行を行う時に必ず必要になる書類が債務名義です。債務名義には、仮執行宣言付支払督促・仮執行宣言付判決・確定判決・和解調書・調停調書・公正証書(執行認諾文付)などがあります。
そのまま使えるものもあれば、以下の文書が追加で必要な場合もあります。
(1) 執行文
債務名義を使える時期や条件が決まっている場合、その時期や条件が満たされていることを証明した文書です。
(2) 送達証明書
債務名義が相手方に送達されていることを証明する文書です。
☆ 公正証書(執行認諾文付)は公証人役場で作成するものです。唯一、裁判手続が不要な債務名義です。
料金
☆ 支払督促・少額訴訟・民事訴訟の後に申立てる場合は、2万円割引します。
☆ 裁判所に支払う印紙代・郵券代が別途かかります。
☆ 第三債務者が複数の場合は、追加費用がかかります。