司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

8月 20 2008

シリーズ 個人再生⑧

7:44 PM 個人再生

 お久しぶりです。今回は2回目の面談についてです。

 2回目の面談をむかえるにあたって、前もって再生計画案と言う書類を裁判所に出しておかねばなりません。面談は、この再生計画案について審査するのが目的です。再生計画案とは個人再生のルールに従って減額された金額を、各債権者に対して、どのように支払っていくかを定めた書類です。

では、再生計画案における支払方法について説明しましょう。まず、支払年数は基本的には3年です。特別の事情がある場合は、最長5年まで認められる場合があります(常に認められる訳ではないので、3年と思っていた方が無難です)。支払回数は毎月払いか、3か月おきかを選べます。支払忘れを防ぐ為にも、私は毎月払いをすすめています。あと、少額債権(他の債権者に比べて特に少額の債権)には特例として一括払いが認められています。これは義務ではありませんから、同じように分割にしても構いません(ただ、月払いの金額が数百円になるような時は一括にした方が良いでしょう)。以上のような原則をふまえて再生計画案を作成します。

2回目の面談は、再生計画案が適法に作成されているかどうか、支払いに無理がないかどうかをチェックされます。実際には、計画案は事前に提出してありますので、再生委員も目を通してきています。面談では、簡単な確認だけで5分~10分くらいで済んでしまうことが多いです。(正直、2回目の面談は、やる必要があるのかなと思います。書類審査だけで済ませても良いのでは、というのが私の意見です) 前回に説明しましたが、裁判官の面談の場合は、再生計画案は書類審査になります。支部裁判所や地方の裁判所では、そもそも面談自体がありません。再生委員がついた時だけ2回も面談をするのは、あまりにも負担に違いがありすぎると思うのは私だけでしょうか。

 2回目の面談でも1回目と同じように、再生委員のOKが出ると「この再生計画案で問題無い」という報告書が出されます。そうすると、裁判所は「書面決議に付する決定」を出します。

書面決議とは、各債権者に向けて裁判所が、再生計画案と、その計画案に反対するものは送り返すように書かれた決議用紙を郵送して、一定期間内に返送されなかった債権者は賛成したとみなされる一種の投票行為です。この場合、住宅ローン特則を付けた場合の住宅ローン債権者は投票から除外されます。

書面決議期間が過ぎた後に、返送された反対票をカウントして、以下の条件を満たした場合は再生計画案は否決され、不認可となります。要するに個人再生は失敗したことになるのです。

その条件とは以下の二つです。①再生計画案で示された債権総額(減額された後の金額のことです)のうち、金額にして過半数の反対があった場合 ②再生計画案で示された債権者数のうち、半数以上の反対があった場合(金額ではなく、頭数を問題にしています)

ここだけ読まれると不安になる人も多いかもしれません。しかし、実際には反対をする債権者は、ほとんどいません。たまにいたとしても、上の条件を満たすほどの反対票が集まることは、ほとんどありません。少なくとも私が今まで扱った事件では一つもありませんでした。それは何故かと言うと、個人再生を反対して、つぶしても債権者には何のメリットもないからです。仮に個人再生が、つぶれたとしたら、その債務者が次に考えるのは自己破産です。債権者からしたら、破産されたら一銭も取れない訳ですから、それなら個人再生を認めて、いくらかでももらった方が良い訳です。そのような背景があるので、反対する債権者は実際には、ほとんどいないのです。

 実は、個人再生には2種類の手続があって、今まで説明してきた手続のことを小規模個人再生と言います。これ以外に、給与所得者再生という手続がありますが、あまり使われていません。給与所得者再生には書面決議がありません。一見、有利な手続に思えますが、残念ながら大きな不利益が一方にあります。それは、給与所得者再生では大抵の場合、支払総額が小規模個人再生よりも大きくなってしまうのです。要はたくさん払うことになる場合が多いのです。先ほども説明したように、書面決議は実際には反対する債権者は、ほとんどいません。それならば、支払総額が低い方が債務者にとって良い訳で、結局、小規模個人再生を選択するのが圧倒的に多くなる訳です。

 では、次回は書面決議を無事に通過した後の流れについて話しましょう。

 

 

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/