司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

債権回収一般

11月 13 2025

金銭消費貸借契約書の作成 債権回収(個人の貸金請求)

Q 個人にお金を貸す時の注意事項はありますか?

A 必ず借用書を取っておくことです。借用書が無ければ、もし相手が返さなかった場合、回収するのが極めて難しくなります。

貸したのが何百万と言う金額ならば、コストをかけて困難な回収をしても元が取れるかもしれませんが、少額の貸付ならば、コストをかけた回収では元が取れません。そんな少額の回収の場合でも、契約書があれば、他に証拠を集める必要が無いのでコストが下がり、元が取れる可能性が出てきます。

Q 借用書は、どのような内容で書けば良いのでしょうか?

A 借用書の正式名称は「金銭消費貸借契約書」と言います。お金の貸し借りの契約のことを法的には金銭消費貸借契約というからです。

借用書で書くべき内容は、まずは貸した金額と日付、貸主と借主の住所氏名に押印です。押印は借主だけでも構いません。ただし、これらの事項を書き忘れる人は、あまりいないでしょう。他にも一般の人が忘れがちな内容があります。

Q 他に借用書に書くべき内容とは何でしょうか?

A 重要なのは「具体的な返済の約束」です。返済の期日、一括なのか分割なのか、利息の有無、利率、遅延損害金、分割の場合の期限の利益喪失条項などです。これらの返済の約束が書かれていないと、借主から「このお金は借りたんじゃなくて、もらったものだ」と言われた時に反論できない契約書になります。

Q 利息と遅延損害金とは何が違うのでしょうか?

A これはよく質問されます。遅延損害金と言う言葉は、一般の方にはあまりなじみがないからでしょう。利息とは契約書に書かれていれば、契約通りの期日に返済していても支払うものです。ちなみに個人間の貸し借りの場合は利息の定めが書かれていなければ利息の請求はできません。

一方、遅延損害金とは契約で定められた期限に返済できなかった場合にペナルティとしてかかってくるものです。ペナルティですから利息よりも利率が高いことが一般的です。

Q では遅延損害金が契約書に書かれていなかった場合は、かからないのでしょうか?

A いいえ。利息とは異なり、遅延損害金は例え契約書に書かれていなかった場合でも発生します。これは遅延損害金が契約を守らなかったことに対するペナルティという性質を持っているからです。

ちなみに契約書に書かれていない場合は当然に遅延損害金の利率も書かれていません。その場合の利率はどうなるかと言うと、法定利率になります。

Q 分割の場合の期限の利益喪失条項とは何でしょうか?

A これも良く質問されます。借用書を作る上では非常に重要なことです。簡単に言うと「分割金の支払いが途中で滞ったら、残りの金額を一括で請求できる権利」ということになります。このように書くと「そんなの当り前じゃないか」と思われる人も多いのですが違います。

銀行や貸金業者からお金を借りると必ず期限の利益喪失条項は契約書に入っています。一般の方は気づいていないだけなのです。もし期限の利益喪失条項が契約書に無かったら、毎月の分割の期限が来るまで分割金を請求できません。残りを一括請求することができないのです。

Q 内容とは異なりますが、借用書に収入印紙は必要ですか。貼っていないと無効なのでしょうか?

A いいえ。収入印紙は税法上要求されているもので、税務署に見つかれば印紙税法違反で徴収はされるでしょう。しかし民法とは関係ありません。例え印紙が貼っていなくても民法上は全く問題が無く、裁判に持ち込むことも可能です。

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1月 15 2024

就業場所への送達 債権回収②

相手が受け取らない場合

裁判の書類は普通郵便では届きません。通常は特別送達という方法で郵送されます。

特別送達とは書留をより厳格にしたものと理解して頂ければ近いと思います。ですから本人や同居人が受け取らない場合は送ることができなくなります。書類を送れなければ裁判を始めることができません。

就業場所(勤務先)への送達

しかし相手が受け取らないことで裁判を回避できてしまったら、始められない裁判が多数発生してしまいます。そこで就業場所への送達が認められています。ただし、いきなり送ることはできません。あくまで自宅へ送っても相手が受け取らない場合に限ります。

従業員へ渡すこともできる

就業場所へ郵送した場合、本人が仕事で外出していていないこともあるでしょう。そのような時、従業員へ渡すことも認められています。これを補充送達と言います。更に正当な理由なく従業員が受け取りを拒否した場合、その場に置いてくることも可能です。これを差置送達(さしおきそうたつ)と言います。

いずれの送達でも裁判は開始します。

仮執行宣言付支払督促の送達

支払督促を送達して2週間が経過した場合、債務名義として仮執行宣言付支払督促を裁判所に申し立てることになります。

最初の支払督促を就業場所へ送達した時は、特例として仮執行宣言付支払督促を始めから就業場所へ送達することができます。自宅へ送る手間が省ける訳です。支払督促も仮執行宣言付支払督促も同じ裁判所の同じ部署だから、このようなことが可能なのです。

差押の時は再び自宅に送る必要がある

ただし仮執行宣言付支払督促を取得できた後、それを使って差押をする時は再び自宅に先に送らなくてはなりません。これは、仮執行宣言付支払督促は簡易裁判所の支払督促係、差押は地方裁判所の執行係と、裁判所も部署も異なるからです。裁判所は縦割りの役所なので、面倒でも仕方がありません。(正直、何とかならないのかと思ったことは何度もあります)

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8月 01 2023

補充送達とは 債権回収① 

送達とは

送達とは、裁判所の書類を関係者に送付することを言います。一般にはあまり使われない言葉ですね。裁判になった場合、訴状や支払督促を相手方に送達しなければなりません。送達されなければ裁判は始められせん。相手方に反論の機会を与えるためです。

補充送達

しかし、相手方が不在が多く送達できない場合、それで裁判が進まないとしたら公平な取り扱いとは言えません。それで、裁判では様々な送達方法を用意しています。例えば、自宅に送達してもダメだった場合は、就業先への送達が認められています。

更に就業先でも相手方が不在だった場合は、従業員へ渡すことも認められています。この従業員への送達のことを補充送達と呼んでいます。

※これ以外にも、自宅で不在だった時に家族が受け取るのも補充送達になります。

当事者への通知

就業場所での補充送達の場合、民事訴訟規則43条の規定により、当事者本人の自宅宛てに通知しなければなりません。

送達と通知の違いですが、送達は特別送達という裁判所特有の郵便で行われます。特別送達はポストに入る郵便ではなく書留のように手渡しが原則です。しかし、前述のように相手が受け取らないというリスクがあります。一方、通知は普通郵便でよいので必ず送ることができます。

就業場所での補充送達が行われた時は念のため当事者の自宅へも普通郵便で通知するという規則になっているのです。まあ親切な規定と言えますね。

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7月 30 2015

個人の貸金請求①

〈事例〉
京都在住で、1000万円を仕事上の知り合いに貸し付けて、金額が高額なので契約書を書き、署名押印してもらった。その際に、念の為、借主の知人2人を連帯債務者として、一緒に署名押印してもらった。
その後、返済日が過ぎても支払いが無いので何度か催促したが、催促するたびに数万円が振り込まれるだけで、のらりくらりと引き延ばされて、結局、返済日から1年以上が経過しても、合計で60万円ほどしか返済されていない。
もうこれ以上催促しても埒が明かないと思い、ネットで検索したところ、名古屋の事務所で気に入ったところが見つかった。丁度、愛知県に行く用事があったので、思い切って相談した。

(事件の経過)
京都から電話がかかってきたので、「うちは名古屋ですが、事務所に来れますか」と聞いたところ、「愛知県に行く用事があるので、ついでに寄れます」と言われたので、相談を受けました。
内容は典型的な個人間の貸し借りです。ただ一つ変わっていたのが、通常は「連帯保証人」と書かれているところが、「連帯債務者」となっていたことです。
連帯債務者というのは一般的には、あまり聞き慣れない言葉ではないかと思います。法的には連帯保証人と良く似ているのですが、「負担部分」という法的効果があるのが特徴です。これについては説明すると長くなるので省きます。
金額が高額なので、内容証明等で請求しても満額支払ってくる可能性が低いと考え、いきなり訴訟に踏み切りました。もちろん、貸主も借主も京都ですから、京都の地方裁判所に提訴です。当然、裁判所に出頭して質疑応答するのは貸主本人で、私は書類作成で支援することになります。
連帯債務者3人に同時に提訴しました。こちらとしては誰かが支払ってくれれば良い訳です。
ところが、提訴して、しばらくしたら、借主から自己破産の通知が送られてきました。どうやらこちらの提訴が引き金になって、借主が自己破産を決意したようです。これで、回収の可能性は連帯債務者2人に絞られました。2人は、実際にお金を借りた訳ではないので、客観的に見れば、気の毒ではありますが、私は貸主から依頼を受けているので、ここは非情にならざるを得ません。うらむなら自己破産して責任を押し付けた借主をうらんでもらうより仕方がありません。(そうは言っても、もし借主から依頼を受けていれば、私も迷わず自己破産をすすめたでしょうから、法律家とは因果な商売です)
事実上、他人の借金を合法的に押し付けられた形になった連帯債務者2人は、危機感を感じたのか、双方とも弁護士を付けて争ってきました。お互いが違う弁護士を付けてきましたから、どうも連帯債務者同士の意思疎通は良くないようだと想像できます。(二人が結託して同じ弁護士に依頼した方が、こちらとしては嫌です)
その後、口頭弁論を2回経過し、双方の弁護士からの主だった反論は、「こんな高額を本当に貸したのか信用できない。」とか、「貸した時の経緯を詳しく説明しろ」とか、「貸した金は何に使われたのか知っていたか」とか、です。まあ、率直に言って苦しい言い訳です。何しろ、こちらは署名押印のある契約書を持っていますから、貸付の経緯や詳しい事情など証明しなくても、裁判上は圧倒的に有利です。恐らく弁護士もその辺の事情は良く分かった上で、何か仕事をしていないとまずいから、反論として弱いことを承知の上で言っているのでしょう。
次回は、第3回の口頭弁論ですが、これ以上、強力な反論が出てこないようならば判決を求めるように貸主には伝えてあります。さて長くなってきましたので、続きはまたの機会に致しましょう。

7月 23 2015

請負代金請求事件①

<事例>
親方の下で、しばらく働いていたが、その後、独立して一人親方として仕事をするようになった。しかし、独立してすぐには仕事も無いので、しばらくは前の親方から仕事を回してもらって下請のような形で工事をしていた。その際、前の親方には収入の1割を上納する習慣があったので、その通りにした。実際のお金の流れは、元請会社から親方に対して工事代金が支払われ、親方はその中から私に渡す分から1割を差し引くという形であった。
最初はうまくいっていたが、ちょっとした人間関係のトラブルがあり、親方が私に下請代金を支払わなくなった。親方ともめるのは得策ではない思い、しばらくは黙っていたが、半年近くも未払いが続くと生活が苦しくなり、やむなく司法書士に相談に行った。

(事件の経過)
未払いの請負代金請求事件です。相談者は3次下請の一人親方で、相手方は2次下請の元親方です。相談に来た時は人間関係が相当にこじれいて、「もう、請求に躊躇はしないので、あらゆる手段で回収して下さい」と言われました。
今回のような小規模下請業者の商習慣では、いちいち請負契約書を交わしたりはしないようなので、契約を直接証明する証拠はありませんでした。ならば間接証拠を集めることになります。有力な間接証拠として、元親方が相談者に出した発注書がありました。これに工事内容や金額が記載されていたので、「これがあれば何とかなるかな」と判断しました。
まずは、元親方が転居していたので住民票の調査で転居先を見つけて、内容証明を送りました。しかし、全く反応はありません。まあ、これは予想通りです。半年近くも未払いが続いていた訳ですから、このような場合、内容証明であっさり支払ってくるケースは稀です。相談者にも事前に説明してあったので、納得して頂けました。
そして、いよいよ訴訟になりました。訴訟にあたっては間接証拠しかありませんので、補強の為に陳述書を作成しました。陳述書とは、具体的な事実についての記憶を書面にしたものです。陳述書は内容が詳しければ詳しいほど信用力が増しますので、どれだけ事件について相談者が覚えているかが勝負になります。実際に書いてもらったところ、最初はボリュームが少なかったのですが、書いているうちに徐々に細かいところまで思い出してきて、何回か書き直してもらっていると、相当に詳しいものが出来上がりました。
さて、これらの証拠を添付して裁判所に訴状を提出しました。既に第一回期日は決まっています。今後どうなるかは、また報告しましょう。

5月 28 2014

個人の貸金の請求について

最近、個人の貸し借りの貸金請求の相談を受けることがあります。これについては以下のような注意点があります。

まずは消費者金融に対する過払金請求とは違って、相手方から証拠が提出されるということは、まずありません。(過払金請求の成功確率が高いのは、貸金業者側に証拠提出義務があるからです。しかし、訴訟全体でみれば、むしろ過払金請求の方が特殊であって、通常は相手方に証拠提出義務はありません)従って、本人が借用書のような証拠を持っていることが重要です。

もう一つは、例え訴訟で勝ったとしても、相手方に支払うだけのお金があるか、ということです。最近では過払金請求でも、中小の貸金業者に支払能力が無く回収できないというケースが増えていますが、個人の貸し借りの場合は貸金業者以上に支払能力が無いケースが目立ちます。

以上の二つの点をクリアしないと、個人の貸金請求は成功する確率が著しく低くなります。当事務所では上記2点をクリアしていない場合は、請求自体をおすすめしておりません。

では、個人の貸金請求における証拠とは何かというと、具体的には次の二つです。

一つは、相手に金を渡した証拠です。貸金請求を行うと、「そもそも、そんな金、受け取ってない」という反論をされることがよくあります。銀行の振込みなら相手方の名前と金額と日付が分かる振り込み明細、現金渡しなら領収書や受け取り証などになります。

二つ目は、返還の約束を証明するものです。これも相手方から、「確かに金は受け取ったが、それはもらったものだ、借りたんじゃない。」という反論が多いのです。これを証明するのが借用書になりますね。ちなみに借用書が一つ目の受取証も兼ねているケースもあります。

以上2点が代表的な貸金請求の証拠になります。最低でも、これらの証拠が無いと、相手が徹底的に反論してきた場合、不利な結果になることが多いです。

もっと、安心して金を貸したいと考えられている人は、やはり金を貸す時は公正証書を作るべきです。特に強制執行認諾文が付いている公正証書なら最強です。これがあれば、何と相手が金を約束どおりに返さなかった場合、裁判を起こすことなく相手の財産を差し押さえることができるからです。

あと、相手が会社員や公務員なら、相手の勤め先は必ず把握しておきましょう。何故なら、差し押さえで最も成功率が高いのは給料の差し押さえだからです。

あと、相手が事業主の場合は、複数の銀行口座を把握しておくことを、おすすめします。不動産はどうかと聞かれる人が多いのですが、不動産の差し押さえの場合、結構な額のお金を裁判所に預ける必要がありますので、よほど高額の貸金でなければ割に合わず、あまりおすすめできません。それに、事業主の不動産はたいていの場合、既に銀行などの担保に取られていますので、例え差し押さえても回ってくる確率が低いというのも、おすすめしない理由の一つです。

10月 08 2013

法テラスへの疑問

先日、約40万円弱の債権回収の相談がありました。この相談者は最初、法テラスに連絡して弁護士を何人か紹介されたそうです。ところが、まともに相談にのってくれた弁護士は結局見つからず、結局、ネットで検索して当事務所にたどりついたそうです。(こういうことがあるから、ネットによる情報公開は大切なのです)

全く法テラスは一体何をしているのでしょうか。この相談者にとっては余分な手間と時間を取られ、さらに引き受けてくれる法律家はいるんだろうかという余分な不安も抱えることになり、はっきり言ってマイナスの影響しか与えていないという印象でした。

紹介された弁護士は非常に冷たい対応だったそうです(金額が低かったからでしょう)。40万円の回収に着手金を30万円要求されたり(間接的に断っているのと同じです)、代理人としての回収を希望しているのに「自分でやれば」とすすめられたりとか。

私が相談にのって詳しく説明した後、「希望されるなら引き受けます」と言ったら、非常に感謝して、引き受けること前提で話をしてくれた人は初めてだと言っていました。

それにしても、いかにも一般市民の味方のような顔をして、こんな対応しかできないのでは、法テラスの存在価値などないんじゃないでしょうか。最初からネットで探して相談に来ていれば、この人は不快な思いをせずにすんだ訳ですから、むしろ有害だとも考えられます。

繰り返しますが、このような対応をしているようでは、法テラスの先行きは暗いと言わざるを得ません。引き受ける気が無いのなら最初から紹介すべきではないのです。それこそ、「140万円以内なら司法書士を、お探し下さい」と案内する方が、よほど市民のためではないか思います。

最近はテレビコマーシャルなども流れるようになって、一般に認知されるようになってきた法テラスですが、認知が高まったということは社会的責任も高まったということです。現状では認知に見合った責任を果たしているとは言い難い状況のようです。「出来ないものまで引き受ける」体質は早急に改善して頂きたいものです。

7月 12 2013

未成年の契約

学習塾はもちろんのこと、英会話教室・音楽教室・スポーツ教室などでも、未成年の子供を主な顧客としている教室は少なくありません。すると、未成年の契約という問題が発生することが、たまに見られます。

まあ、小学生ではあまり無いとは思いますが、中学生や高校生が対象の教室の場合、生徒本人が申込書を持って入塾あるいは入会の受付を済ませるということが起こる場合が、まれにあるようです。

最初に結論から言うと、このような申込は、教室側から考えた場合、絶対に避けなければいけません。何故なら、未成年者との契約になってしまい、後で親から取消の請求をされる恐れがあるからです。しかも、この取消請求、法律的には圧倒的に教室側が不利です。仮に裁判で争っても、負ける可能性が極めて高いです。

教室によっては、受付にアルバイトしか置いていないところもあります。そういう場合は、よほど指導を徹底しておかないと、書類一式そろっていたら申込みを受け付けてしまうかもしれません。きちんとマニュアル化して、「未成年者の申込みは受け付けない」ということを周知徹底しておく必要があります。

ただし、申込書に親の署名と印鑑が押されていれば、申込の主体は親だと考えられますので、子供は単なるメッセンジャーとして申込書を運んできたことになり、受け付けてもトラブルは少ないでしょう。(でもゼロではありません。トラブルを完全に無くす為には、一度は親に来てもらって意思確認をするのが万全です。最低でも電話確認ぐらいはしておくことを、おすすめします)

一方、法律では、未成年であることをわざと隠して、相手を錯覚させて契約をした場合は取消が出来ない、とも定めています。他にも、実際には親の同意が無いのに、親の同意があるとウソをついてした契約も同様に取消が出来ません。これは、詐欺をはたらいたのと同じ行為を法律で保護するのは妥当ではないという考え方からきています。未成年だからといって、必ず取り消せる訳ではないということです。

もう一つ覚えておきたい規定に「追認」があります。
追認とは、仮に未成年者の契約であっても、後から親が認めたら、その後の取消しは出来なくなります。親が認めた時点で有効な契約として確定するということです。

実は、この追認が様々なシチュエーションが考えられる為、よく問題となります。
例えば、未成年者が勝手に契約をして(この時点では取消可能な契約です)、後から親が、契約の内容について長々と文句を言ってきた場合、「追認があった」と判断される可能性があります。(あくまで可能性です。必ず、そうなる訳ではありません)

これは、「契約の内容に文句を言うということは、契約を結んだこと自体は認めているということだろう。」と裁判所で判断される可能性があるからです。従って、もし親が取り消すつもりなら、ただ一言、「私が知らない間に勝手に子供がしたことです。だから取り消します。」でいいのです。余分なことを言うと、かえって墓穴を掘ることになります。

他には、未成年の契約の後に教室が授業料の請求をした時に、親が「今は払えません」と答えたら、これは立派な追認です。今は払えないという答えは、教室の授業なりレッスンなりを受けることが前提となっているからです。

例を挙げていくと、きりがありませんので、このくらいにしておきますが、ようは追認と言っても、色々なパターンがあるということです。教室経営者の皆さんは参考にして下さい。

7月 04 2013

前払いのすすめ

各種の教室で授業料の未払い問題が発生している中で、未払いが発生する最も多い原因が、授業料を後払いにしていることです。

月謝制にしろ、チケット制にしろ、授業料は絶対に前払いにすべきです。前払いにしていれば、未払いが発覚した時点で、授業の参加を断ることが出来ます。しかし、後払いでは、受けてしまった授業は品物ではなくてサービスなので、後で返してもらうことは出来ません。このようにサービス業においては、返品という概念が存在しないため、トラブルを防ぐためには前払いにするしかありません。

もちろん、前払いにしても未払いは発生します。様々な事情で受講を断ることが出来ない場合も存在するからです。例えば、今まで何人もの生徒を紹介してくれた人からの紹介で入った生徒の中に未払者が出てしまった場合は、紹介者の顔をつぶしてしまいますから断りにくいでしょう。

だからと言って放置してしまうと、他の生徒に知れた時に大きく評判を落としますから非常に難しい問題です。やはり、こういう時は、先に紹介者に未払いの事情を詳しく説明した上で、了解をとって回収に動くことをおすすめします。

他には、経営者が人が良すぎたり、相手の言うことを信用しすぎたりした時にも未払いは発生しやすくなります。何故なら、最初から開き直って支払わない人は少数派で、最も多いのは、会うたびに「次は支払います」、「分割なら払います」という人だからです。

このような人の良い経営者の場合、恐らく督促の段階でも厳しくすることは苦手でしょうから、ストレスをためて本業に影響が出ないように、全ての回収を法律家に任せてしまう方が良いかもしれません。

6月 28 2013

日常家事債務

日常家事債務とは法律用語です。一般の人は聞きなれない言葉かもしれませんが、日常生活で割と起こりうる場面で重要になってくることなので、知っておいた方が良いと思います。

例えば、こんな例があります。
父親と子供が一緒に英会話教室に申し込みに来ていて、申込書には父親の名前が書かれている。ところが、しばらく経つと未払いが発生して、督促をすると父親はどこかに行方不明になってしまい電話に出るのは母親だけ。そこで母親に請求すると、「私は申し込んだ覚えは無い。だから支払う必要は無いでしょう」と言われ、全く回収できない。

このケースでは、本当に母親には支払義務は無いのかが問題になります。

契約自体は父親と教室の間で結ばれているのは明らかです。よって、契約の当事者は教室と父親です。通常は、契約の当事者以外の人には支払義務は発生しません。例えば、夫が消費者金融からお金を借りた場合、保証人になっていない限り妻には返済義務はありません。

しかし、法律には、この例外として「日常家事債務」というものを規定しています。

日常家事債務とは、日常的に発生する債務に関しては、例え夫婦の一方が契約したものであっても、夫婦連帯して債務を負担するという規定です。
ようするに、夫が契約した日常家事債務に当たる支払いは、妻にも支払義務が生じるということになります。(もちろん、逆もまた、しかりです)

では、何が日常家事債務に当たるのでしょうか。

例えば、光熱費、日用品などの生活必需品、医療費、教育費などは典型的なものと言われています。他にも、夫婦の収入レベルに応じて、この範囲は拡大したり縮小したりします。(最終的には裁判所の判断になります)

すると、英会話教室の授業料などは教育費として判断される可能性が高そうです。よって、このケースの場合、母親には支払義務があると考えて、法的な請求をしていく余地は充分にあると思います。

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