司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2013年1月

1月 23 2013

自己破産解決事例①

住宅ローンの滞納が半年くらいあり、住宅を任意売却した事例です

Nさん、男性、住宅ローン有り
50代、無職
借入先 5社、 借入総額 3500万円(住宅ローン含む)

勤めていた会社が倒産したことが、きっかけで、それまで支払えていた住宅ローンが払えなくなり、最初のうちは何とか住宅を守ろうと、以前からパチンコ代などを少額借りていた消費者金融から、限度額一杯まで借りて支払っていました。

しかし、年齢もあって、なかなか就職先が決まらず、そのうち生活費も足りなくなって、住宅ローンを滞納するようになりました。しばらくは銀行も何も言ってこなかったのですが、ある日、銀行から「このまま放置されると保証会社に債権が移転します。」と通知が来ました。

私は、あわてて銀行に電話して、保証会社に債権が移転すると、どうなるのでしょうか、と聞くと銀行は「保証会社は厳しいですから、近いうちに競売になるかもしれません」と言われました。

しかし、現状では、滞納分を支払える目処は全くありません。ここに至って、「どうせ住宅が守れないなら、もう破産してしまおう」と考えるようになりました。既に子供は独立しており、妻とも離婚していましたので、覚悟を決めたら、住宅ローンなど無い方が、むしろ身軽でいいかもしれないと思ったのです。

幸いに、以前、他の仕事でお世話になった司法書士さんがおりましたので、そこに破産手続きを頼むことにしました。聞くと、破産には2種類あって、費用が高くて期間も長い管財事件と、費用が安く期間も短い同時廃止事件があるそうです。当然、私は同時廃止にして欲しいと頼みましたが、どうやら条件があるようです。

その条件とは、不動産がある場合、固定資産税評価額(市役所の税務課で取れます)の土地の分を2倍、建物の分を1.5倍にして、両方の金額を足したものと、住宅ローンの残債務を比較して、住宅ローン残債務額の方が高ければ、同時廃止が認められるということでした。

私は祈るような気持ちで市役所に行き、固定資産税評価証明書を取って計算してみたところ、幸いなことにローン残高が上回っていました。借金が多くて、うれしかったのは、この時くらいです。すぐに司法書士事務所に報告して同時廃止手続に着手してもらいました。

無職だったこともあり、めぼしい資産は不動産くらいで、手続は割と順調に進んでいきました。ただ、不動産がいつ無くなるのかということは気がかりでした。引越しをする必要があるからです。銀行からは早く売却してくれと言ってきます。

司法書士に紹介してもらった不動産業者に依頼して売却先を探しました。どっちみち私に入ってくるお金はないので、どこに売っても構わなかったのですが、何しろ貯金が無いので、引越し代だけは確保して欲しかった。それだけを不動産業者には言いました。

しかし、不景気の真っ只中だったので、なかなか買い手がつきません。結局、破産手続きの方が先に終了してしまいました。銀行は最早、不動産の売却代金以外からは回収できないので、あまり相場より安い金額ではOKを出しません。

結局、破産手続きが終了してから3ヶ月近くたってから、ようやく売却が決まりました。私は引越し代も確保できて、以外に長い期間、元の住宅に住むこともできて非常に助かりました。

会社が倒産してからは本当に暗い気持ちで暮らしていましたが、今は借金も無くなり、意外とさっぱりした気持ちでいます。覚悟を決めて良かったと思っています。

○司法書士からのコメント○
住み慣れた住宅を失うのは誰でもつらいものです。その為、つい決断が遅れてしまう人が多いのですが、遅れれば遅れるほど事態が悪くなることが多いのも事実です。

今回のように失業して、早期の再就職の見込みが立たない場合、住宅ローンを返済し続けるのは正直言って難しいでしょう。やはり自己破産を決断されて正解だと思います。(無職の場合は個人再生は利用できません)

今は不動産の価値も下がっている時期なので、逆に言うと、債務者に有利な同時廃止事件で処理できる件数が増えています。ものは考えようで、価値が下がっている時には破産も、それほど負担にはならないということです。

破産して借金の不安を無くした上で就職活動をした方が、精神的にも安定しますし、良い結果をもたらすのではないでしょうか。(実際に、この人は、破産終了後の割と早い時期に就職が決まっています)

1月 17 2013

個人再生解決事例①

自動車の取り扱いの変更で、自動車が手元に残ったのが印象的な事例です。

Tさん、男性、住宅ローン有り
40代、会社員
借入先 6社、 借入総額 約900万円

当初、住宅ローンを組んだ時には問題なく返済できていたんですが、途中、転職になりボーナスの額が大幅に減ってしまった時から住宅ローンのボーナス払い分の返済が苦しくなりました。それで、ボーナス払いをのりきる為にクレジットカードや消費者金融のキャッシングを利用するようになりました。今、考えると、これが全ての始まりだったように思います。

一向にボーナスが上がる気配も無いので、貸金業者への返済のたしになるかもと思い、パチンコを始めてしまいました。学生時代は結構、勝っていたので、何とかなるかもと思っていたのですが、現実はそんなに甘くはなく、かえって借金を増やすことになってしまいました。

悪いことは続くもので、こんな苦しい時に入院が必要な病気にかかってしまいました。退院した後も元の体力は戻らず、前と同じようには働けなくなってしまいました。それが原因で、結局、再び転職することになり、今度はボーナスだけでなく毎月の給料も減ってしまいました。ただ、体力的には前の会社よりも楽だったので、徐々に体調は良くなっていきましたが、その代わり、経済的には一層、苦しくなり、借入の金額が増えていきました。

丁度、この頃、子供の学費がかかる時期に重なりました。とても貯金では対応できず、日本政策金融公庫から学資ローンを借りることになりました。自分のせいで子供の将来を狭めるようなことは、どうしてもしたくなかったのです。

より生活が苦しくなり、毎日、借金の支払いをどうするかを考えるようになり、精神的にも追い詰められていきました。夫婦ゲンカも多くなり、妻とは別居するようになりました。妻の収入があてにできなくなったので、ついに住宅ローンの支払いが苦しくなり、このままでは住宅を失ってしまうという危機感が高まり、もう普通の方法で借金を払っていくのは無理だと観念して債務整理を考えるようになりました。ネットで調べるうちに住宅を維持しながら他の借金を減らせる方法があることを見つけ、司法書士の先生にお願いすることにしました。

最初は、住宅が守れるなら、車はあきらめるしかないかと思っていましたが、先生に聞くと、「最近、取り扱いが変わったので、車は残るかもしれない」と言われました。それで手続を進めていくと、本当に車が残りましたので、すごく助かりました。正直、都会ではないので、車がないと生活が非常に不便なのです。

無事に支払える金額に減額され、住宅も車も残り、妻も最近では理解してくれるようになってきました。本当に手続をして良かったと思っています。

○司法書士からのコメント○
相談に来られた時には、かなり切迫した状況でした。もう少し遅くて住宅ローンの滞納が始まっていたら、これほどスムーズには進まなかったかもしれません。(他の借金の滞納はありましたが、住宅ローンの滞納はありませんでした)

車の件では、最高裁判所の判決が出てから取り扱いが変更になり、現在では、車検証の所有者名義がローン会社になっていない場合は、ローン会社は車を引き上げることが出来ないということになっています。今回の件は、これに該当した為、ローン会社も車の引き上げをあきらめました。ラッキーだったと言えるでしょう。

より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

http://www.hashiho.com/debt/kojinsaisei/

1月 08 2013

過払金請求への道⑤

今回は過払金請求への道の最後、⑤「家族にナイショでずっと借りていた。ずっと借りていたので、ひょっとしたら過払いになっているかも。興味はあるんだけど、家族にばれるのが怖くて踏み切れない。」という理由でためらっている人への回答です。

実は、この理由でためらっている人は非常に多く、そのおかげで倒産の噂が浮かんでは消えるアイフルなどの消費者金融は何とか持ちこたえています。消費者金融やクレジット会社の側から見たら、そのままためらっていて欲しい人たちということになります。でも、これって、ちょっと悔しくありませんか。

私の今までの実務経験上、過払金請求で家族にばれたという例はありません。自己破産や個人再生だと家族にナイショで行うのは確かに難しいと思います。しかし、過払金請求は手続の性質上、司法書士と業者の間で済んでしまいます。そもそも、業者は司法書士が受任通知を出したら、直接、依頼人と連絡を取ったり接触したりすることを禁じられます。

あと、現在は司法書士や弁護士が過払金請求の依頼を受ける時は面談が義務付けられています(これを守っていない事務所は、ルールを守っていない事務所ですから注意して下さい)。その際、事務所に出入りしているところを見られてしまうんじゃないかと気になるかもしれません。

これを防ぐ為には、少し遠方の事務所を選ばれると良いでしょう。実際に、こういう理由で他の県から来られる人も珍しくありません。もちろん、あまり遠すぎるのも大変ですから、せいぜい隣の県くらいが、いいんじゃないでしょうか。

過払金請求は、医者などと違って何回も通う必要はありません。1回の面談で手続に入れることが、ほとんどです。家族にナイショの人は、手続が終わった後に、もう一度、事務所に書類を取りに来ることがあるくらいです。ですから、多少、遠方でも充分、依頼はできると思います。

今回で、過払金請求をためらっている人への私なりの回答は全てになります。参考にして頂けたでしょうか。