11月
07
2016
最近、時効援用の相談で増えているのが、せっかく時効が成立していたにもかかわらず、直近の裁判所から届いた書類を放置してしまった為に、時効援用が出来なくなってしまったという、非常にもったいない相談です。
場合によっては、ゼロになったはずの借金が、放置してしまった結果、100万円以上の支払いをするはめになることも珍しくありません。このようなケースに当たると、私も、やるせない気持ちになります。「もう少し早く電話をかけてくれれば、借金がゼロになったのに」、という思いです。
このようなことが起こる原因の一つに、「知恵袋」や「質問箱」などに、いい加減な回答をしている人がたまにいることです。
例えば、「〇〇裁判所から支払督促という書類が届きましたが、請求している業者に見覚えがありません。どうしたら良いでしょうか」というような質問に対して、堂々と「業者に見覚えが無いなら架空請求です。放っておきましょう」などという回答をしている人がいるのですが、これは大きな間違いです。
時効にかかっているような請求の場合、多くのケースで債権譲渡が行われていますので、最初に借りた業者とは違う名称の業者から請求を受けることは良くあります。従って、見覚えの無い業者であっても架空請求ではないケースも多いのです。(そもそも架空請求だったとしても、裁判をされたら放っておいてはいけません)
私は、消滅時効にかかっている債権の請求は、違法ではないが不当だと考えていて、このような請求を不当請求と呼んでいます。しかし、裁判を起こされて放置してしまったら、不当請求が正当な請求になってしまうのです。これは何とももったいないことだと思います。まさに業者側の思うつぼなのです。
最近は、分からないことは、まず「知恵袋」や「質問箱」などにあげて回答を見る習慣が定着していますが、回答している人は専門家とは限りません。特に法律関係では、大きな間違いが目立ちますので、疑問に思ったら専門家に相談することをおすすめします。
11月
04
2016
旧武富士からパルティール債権回収というサービサーに譲渡された貸金債権には注意が必要です。理由は、公示送達によって本人が知らない間に判決が取られているケースがあるからです。
通常、裁判の被告(貸金請求の場合は債務者)が引っ越しなどにより住所不明になった場合、そのままだと判決を取ることが出来ません。訴えられたことを被告に知らせない状態で裁判を進めることは原則、出来ない事になっているからです。
しかし、公示送達という方法を使うと、これが可能となってしまうのです。ある意味、これは恐ろしいことで、自分の全く知らない間に負け判決が裁判所で出されていることになります。
当然、裁判所も被告に対する影響が大きいことは承知しているので、公示送達を利用するには高いハードルを設けています。
それは何かというと、公示送達を利用する時は、住民票の住所に実際に手紙を送ってみて戻ってくることを証明したり、現地調査を行い表札などの写真を取って来て、そこに住んでいないことを確実に証明しなくてはなりません。
正直、結構な手間がかかるので、大量の貸金請求を抱えている貸金業者は通常、ここまではやりません。公示送達は、かなり珍しい手続なのです。
しかし、旧武富士の場合は事情が異なります。ご存知のように旧武富士は事実上倒産しました。倒産した場合、武富士には未回収の債権を積極的に取り立てる義務があるのです。何故なら、回収できる債権を持ったまま倒産すると、違法な行いになってしまうからです。ですから手間がかかっても、例外的に公示送達を行っている確率が高いのです。
従って、旧武富士からパルティール債権回収に渡った債権の場合は、本人に全く覚えが無くても、過去10年以内に判決を取られている可能性があり、時効援用通知を送っても時効では解決できない可能性がありますので注意が必要です。時効でなかった場合は、分割払いの交渉をすることになるでしょう。
また、パルティール債権回収は、困ったことに、債務者に送ってきた請求通知に、過去に判決を取っていることを書いてくれません。従って、時効援用通知を送る前に、判決の有無を確認するのが良いかもしれません。自分で電話するのが抵抗がある方は、専門家に頼むのが良いでしょう。もちろん、今回のブログに書いたような内容を経験的に知っている事務所に相談に行かれるべきだと思います。
実際に当事務所に来られた相談者の方も、全く裁判を起こされたことに身に覚えが無く、判決を取り寄せたところ、判決書の被告の住所には当時、住んでいなかったことが確認できました。公示送達によって判決を取られたことは、ほぼ間違いないでしょう。仕方がありませんので時効での解決はあきらめ、任意整理の分割払いの交渉と和解契約の締結をすることにより、解決しました。