2月 02 2011
過払調停の問題点
本日の話題は過払調停です。
債務整理に関心のある人は調停と言えば、一般的に特定調停を思い浮かべるでしょう。特定調停とは弁護士や司法書士の行う任意整理を裁判所を介して一般人でも行えるようにと始まった手続です。
当初は費用の安さも手伝って特定調停は非常に件数を伸ばしていましたが、ここ数年は減少傾向にあります。その最大の理由は特定調停では過払金の請求が出来ないということにありました。
特定調停が始まった頃には、まだ過払金の請求は一般的なものではありませんでした。ところが最高裁判所の判決が出てからは過払金請求が一気に広まって、過払金請求の出来ない特定調停に以前ほどの魅力がなくなってしまったのです。
その代わりに激増したのが過払金請求訴訟です。簡易裁判所及び地方裁判所における過払金請求訴訟は増加の一途をたどり、ついには増えすぎて処理できないと裁判所が悲鳴を上げるほどになりました。
そこで裁判所が新しく考え出したのが過払調停という制度です。これは、本来は訴訟にするか調停にするかは裁判所に書類を提出する時に本人または代理人が決めることなのですが、その常識を覆して、もともと訴訟として提出された場合でも裁判所の判断で調停に変更されるというものです。(事前に電話で調停に変更して良いか聞いてくれる裁判所もあります)
この制度の何が問題かと言うと、まず、裁判所や裁判官によっては本人の意向を無視して強引に訴訟を調停に変更してしまう場合があることです。例えば私の地元である名古屋地方裁判所で実際にあった出来事ですが、本人が「調停ではなく訴訟で進めて欲しい」という上申書を提出していたにもかかわらず認められずに調停に変更されたことがありました。(もちろん書類は訴訟で出しているのです)
では何故、過払請求は調停ではダメなのかと言うと、いくつか理由があります。その一番の理由は何と言っても和解金額が下がるケースが多いということにあります。(これは国家権力が過払金請求者の権利を侵害しているとも考えられる訳で非常に問題だと思います)
どうして金額が下がることがあるのかと言うと、率直に言って調停委員が貸金業者から甘く見られているからです。調停とは裁判所から指定された調停委員が取り仕切る手続です。調停委員は過払金請求の専門家とは限りません。我々、司法書士のように最新の貸金業者の状況や和解の適切な基準などは知らない人が圧倒的に多いのが実情です。そして調停委員が詳しくないということを相手方の貸金業者が知っているというところが問題なのです。
当然、貸金業者は司法書士や弁護士に対するよりも低い和解金額を提示する傾向があります。最近は専門家に頼まずに自分で過払訴訟を出す人も増えてきていますが、こういう人達にとっては過払調停は脅威だと思います。一般人が裁判所に行って調停委員から「この金額が妥当だから、この金額で和解しなさい」と言われたら、果たして断れるでしょうか。ほとんどの人は和解基準が、どの程度か分かりませんので承諾してしまうでしょう。
もう一つの問題点は時間が余分にかかるということです。調停になった場合、まず訴訟外で和解交渉をまとめることが難しくなります。貸金業者も調停になったら安く決着する可能性があるので、事前に交渉しなくなります(訴訟の場合は、ほとんどの業者が弁論期日前に電話をかけてきます)。
あと、調停の場合は最低でも1時間は裁判所に居なければなりません。これは最低ラインで、ひどい時には2時間以上も調停室に閉じ込められるケースがありました。調停の場合、ほとんどの業者は裁判所に出てきません。では、どうやって交渉するのかと言うと、調停委員が裁判所から直接、業者に電話をかけるのです。ですから、調停室には必ず各部屋に電話が設置されています。そして、困ったことに、この電話が非常にかかりにくい業者があるのです。例えばプロミスなどは、かけても常に話中で、つながるまでに1時間近くかかる場合があるのです。そうすると調停室に入ってから交渉が始まるまでに無駄な時間が膨大に発生することになります。
このように、いろいろと問題点が多いのが現状の過払調停です。もし、選択することが可能な裁判所だったら調停を選択しない方が無難でしょう。強制的に調停に変更になった場合は、自分の気に入らない金額なら絶対に、まとめないという覚悟が必要でしょう。









