12月 12 2022
転付命令(てんぷめいれい)強制執行(差押)④
転付命令とは
転付命令とは強制執行の手段の一つで、預貯金の差押の時に良く行われる手続です。目的は差押の競合を避けるためです。
差押の競合とは
例えばAさんがBさんに対して勝訴判決を取って、Bさんの銀行預金を差し押さえたとしましょう。しかし、他にもBさんにお金を貸しているCさんがいて、Cさんも同じ銀行に差し押さえをしてきたらどうなるのでしょうか。(決して珍しいことではありません)
この状態を「差押の競合」と言います。差押が競合すると複数の差押金額の合計額は預貯金の額を超えることが多くなります。ようするに債権者は全額の回収ができなくなるわけです。この場合、AさんやCさんが銀行に取り立てに来ても、銀行は支払うことができません。供託という手続を取って法務局に預金を預けることになってしまいます。その後、裁判所の手続で債権額に応じた割合で分配することになるのです。
※滅多にありませんが、運よく預貯金の額が差押金額の合計を超えている時は、銀行はAさんとCさんの両方に支払うことができます。
競合を避ける方法としての転付命令
このように競合が起こると回収金額が減る確率が高くなりますので、できるだけ競合は避けたいと思うのが債権者の考え方です。この競合を避けるために最もよく使われる方法が転付命令です。
先ほどの例で説明すると、まず銀行の預金者はあくまでBさんです。これを法律で考えると、Bさんが銀行に対して預金と言う債権を持っていることになります。転付命令が発動されると、銀行に対する債権者がBさんからAさんに強制的に変更されます。転付命令後は、銀行はAさんを預金者として扱うことになります。
取り立てとの違い
ではAさんが銀行に取り立てに行くのと何が違うのかを説明します。取り立ての場合、銀行の預金者は以前としてBさんのままです。Aさんは差押をしたので代わりに取り立てに行っているだけなのです。
一方、転付命令の場合は、銀行の預金者はAさんに変更されます。もはやBさんは銀行にとっては無関係の第三者になります。Bさんと銀行の関係が切れてしまいますので、転付命令後は銀行預金はBさんの財産ではなくなります。ですから、Cさんが新たに差押をしようと思っても、Bさんの財産ではなくなっているので出来ません。だから競合することが無くなるのです。
転付命令の注意点
メリットばかりに思える転付命令ですがデメリットもあります。それが「預貯金が不足している場合でも返済されたことになる効果」です。
具体例で説明しましょう。
Aさんが100万円の差押命令と一緒に転付命令を申し立てたとしましょう。このように差押命令と転付命令を同時に申し立てることはよくあります。ところが実際には預金は50万円しかありませんでした。転付命令が無ければ、残りの50万円に対して再び差押をすることが可能です。
しかし、転付命令には決済されたという法的な効果があるので、例え不足していても返済されたとみなされてしまうのです。従って、不足分を再び差押をすることができません。
強制執行について、より詳しい情報が知りたい方は 強制執行のページ をクリック









