司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

11月 30 2023

差押の取下による時効の中断(更新)

10:13 AM 時効

時効の中断(更新)とは

時効の中断(改正法では更新)とは、今まで進行してきた時効期間がゼロに戻り、再びスタートすることを言います。

裁判上の請求や差押、債務承認(支払または支払の約束)などが代表的な中断の理由になります。

差押が空振りになった場合、時効は中断するのか

では差押をしたものの空振りに終わって取下げになった場合は、時効は中断するのでしょうか。実はこれは非常に難しい問題で結論が出ていません。

裁判では、「中断する」と言う判決と「中断しない」と言う判決が両方出ていて、明確になっていないのです。法律家としては、この質問を受けた場合、「はっきりしていません」と答えるしかない状況です。

取下げの効力について

例えば預貯金の差押をして口座に残高が無かった場合、取下げをします。いわゆる差押の空振りです。法律上は取下げの効力は「最初から無かったものとみなす」なので、単純に考えれば差押をしなかったことになると思えます。

ちなみに私はこの考え方を支持していて、取り下げた場合は差押は無かったことになり時効は中断しないのではないかと考えています。

時効は中断するという判決

では時効は中断するという判決はなぜ出てくるのかについて説明しましょう。

そもそも時効と言うのは、「債権者が取立などの行為を何もせずに放置していた場合、放置するような債権者を保護する必要は無い」という考え方に基づいています。法律では「権利の上に眠るものは保護しない」という言い方をします。

しかし、債権者が差押と言う行為をした場合、たまたま空振りになったとしても、「債権者は権利の上に眠っていたわけではない。そのような債権者は保護するべきである」と考える裁判官もいるのです。

その結果、差押が空振りになり取り下げたとしても時効は中断する、という判決も存在することになります。

結論は出ていない

このように判決が分かれている場合、法律家としては非常に困ります。争った時に勝てる保証が無いからです。法律家個人の見解で「私はこう考える」というのはありますが、実務では決着は付いていない訳ですから保証はできません。

この論点については最高裁判所まで争われたことが今まで無いので、あいまいなままです。早いうちに最高裁判所が決着をつけてくれることを期待したいと思います。

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