10月 24 2011
個人再生における自動車ローンの扱い
久々に個人再生の話題です。
平成22年6月4日の最高裁判決の影響で個人再生における自動車ローンの扱いが変化した裁判所があるようなので注意が必要になりました。(まだ全国の裁判所に広がっているのかどうかは不明です)
注意すべきケースは車検証の所有者の欄にディーラー(販売店)が書かれている場合です。
理屈から考えるとローンが払い終わっていない場合、自動車の所有権はローンの担保としてクレジット会社に留保されている状態です。従って、多くのケースでは車検証の所有者の欄はクレジット会社になっているでしょう。
ところが、ローン未払いの時の車の引き上げや売却の関係で、この所有者欄がディーラーになっている場合も少なくないのです。これが問題をややこしくしています。何故なら、クレジット会社はローンを組んでいる以上、正統な所有権を主張する権利がありますが、ディーラーには無いからです。所有者欄がディーラーになっている法的な根拠を問われても、ディーラーは回答に困ってしまうでしょう。要は事務手続上の問題に過ぎないからです。
しかし、裁判所は法律を厳格に解釈して以下のような判断をくだす可能性があるのです。(実際に名古屋地裁本庁の再生係で、下された判断のようです)
その判断とは、車検証の上でディーラーが所有者となっている以上、クレジット会社に自動車の引き上げや、換金の権限は無い。従って、個人再生の際、クレジット会社が自動車を引き上げて換金するのは、特定の債権者に対する偏頗弁済(一部の債権者に対して多く弁済すること)となり違法である。もし、これを行うならば、クレジット会社が換金して返済された分を清算価値として計上(財産に加えて支払額を増やせということです)するべき、というものです。
このとおり処理すれば、換金された自動車の時価相当額は丸ごと清算価値に上乗せされることになり、自動車の価格によっては支払額の大幅アップに、つながりかねません。
以前の処理では、換金されても清算価値の増加は無く、クレジット会社のローン残額も減って、何の問題もありませんでした。今でも車検証の所有者欄がクレジット会社になっていれば問題なく、この処理が行なわれます。
要は、車検証の所有者欄がディーラーになっているか、クレジット会社になっているかで、やっている処理自体は同じなのにもかかわらず、著しく依頼人に不利になるケースが出てきた訳です。
ただし、清算価値は100万円までは支払額に影響を与えませんので、自動車の時価と、その他の財産を合わせても100万円に届かない場合は心配する必要はありません。今までと変わりがないと考えて良いでしょう。要は安い自動車に乗っている人は、あまり心配いらないということになります。(自分は軽自動車だから大丈夫とは思わないで下さい。軽自動車は最近、人気なので意外に時価は高かったりするので事前に調べた方が良いでしょう)
それにしても、単に引き上げ売却の際の都合で習慣化していた制度を、厳格に解釈して依頼人の経済的再生を、やりにくくしてしまっている裁判所の判断は疑問を感じます。今後、処理を重ねていくと多くの矛盾が出てくると思われますので、その中で少しでも改善されていくことを期待したいと思います。
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