司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

8月 20 2025

親が認知症の時の消滅時効の援用 時効(147)

9:59 AM 時効

認知症の親の借金の請求書が届いた

「認知症の親の借金の請求書が郵便で送られてきて驚いた」と言う相談は結構多いです。「認知症なので事情を聞くことも出来ず、どうしていいか分からない」と残された家族はパニックになりがちです。でも解決方法はあります。

親が認知症の時、子どもは時効の援用ができるのか?

その借金が5年以上放置されていた借金ならば、時効援用通知を出すことで請求を止める方法があります。しかし、あくまで親の借金なので、そのままでは子どもが代わりに通知を出すことも専門家に依頼することもできません。

まずは成年後見人を付ける

親が認知症になってから法律行為をするには、家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。通知を出すのも専門家に依頼するのも法律行為なので、時効援用するためには成年後見人の選任申立をする必要があります。後見人が選任されたら、その後見人から通知を出したり専門家に依頼することが可能になります。

成年後見人の申立は家族が申立人になれる

成年後見人の選任申立は家族が申立人になれます。ですから子どもが自分で申し立てても良いし、専門家に申立てを依頼することもできます。

成年後見人は家族がなれるとは限らない

成年後見人選任申立書には「後見人候補者」という欄があります。恐らく一般の方は「この候補者の欄に家族の氏名を書いておけば家族が後見人に選ばれるのだろう」と考える人が多いと思います。しかし家庭裁判所は必ず家族を選ぶとは限りません。家族が選ばれないケースも結構ありますので覚悟しておきましょう

家族が選ばれないケース

家族が選ばれないケースとして比較的多いのが、認知症の方の財産がそこそこ多い場合です。しかし時効の援用を考えているということは認知症の親には借金があるわけですから、財産が多いとは言えないでしょう。ですから家族が選ばれる可能性は通常よりは高いとは思います。それでも100%ではないことは覚えておきましょう。

成年後見人になったら時効の援用が終わった後も続けることになる

もう一つの注意点として、「時効の援用」だけのために後見人になることはできないということです。現在、後見人を途中で辞めることができるような法改正が検討されているという情報もありますので、将来的にはできるようになる可能性はありますが、まだ現実化はしていません。ですから後見人に選任されると時効の援用が終わった後でも後見人の仕事が残ります

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