司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 02 2013

総量規制について考える

「総量規制」が始まって約3年が経過しました。これは通称3分の1規制とも呼ばれていて、年収の3分の1以上の借入に対してストップをかけるものです。

ところが、この総量規制には明らかな抜け穴がありました。全ての金融機関が対象になっている訳ではないというところです。具体的には、クレジットカードのショッピング(キャッシングは総量規制の対象です)、そして銀行ローンです。

そこで一時期、総量規制で借りられなくなった人が、クレジットのショッピングを利用して取込詐欺をしてしまう例が後を絶ちませんでした。

取込詐欺とは、詐欺業者の言われるままに指定された商品を(パソコンやゲーム機などが多い)クレジットで購入し、その商品を業者に買い取ってもらうことでお金を得るシステムです。

名目上は、クレジットのショッピングになりますので、総量規制にはひっかからずにお金を工面することが出来ますので、一時的に非常に流行りました。しかし、買取価格は二束三文ですし、後ほど商品の代金が請求されますので、結局は支払不能に陥ってしまいます。

また、支払不能になった後、いざ自己破産などをしようとすると、詐欺行為として裁判所から追求される可能性もあり、破産にも影響が出るかもしれません。こういう場合は、あくまで業者に言われるままにやったことで、本人は被害者であるということを裁判所に訴えていきますが、それでも、裁判所が慎重になるようなことは、やらないに越したことはありません。

最近は、上記のようなことも知られてきて、少なくはなってきていますが、完全には無くなっていないようなので、注意しましょう。

あと、もう一つの総量規制対象外である銀行ローンが最近、増加傾向にあります。銀行ローンと言っても、最近多いのは個人向けの無担保ローンです。ようするに、昔、消費者金融がやっていた無担保ローンを最近では銀行が積極的に行っているのです。まさに総量規制によって消費者金融の市場が縮小したところを銀行がさらっていったような形になってきています。

例えば、新生銀行は新生フィナンシャルという消費者金融を傘下に抱えています。新生フィナンシャルは旧レイクという消費者金融で、今でもレイクという名前は商品名として残っています。コマーシャルを見た人も多いでしょう。

ところが、最近では、新生フィナンシャルは消費者金融なので総量規制に引っかかってしまいますので、貸出が伸びていません。経営的にも苦しいと言われています。そこで、銀行が考えたのが、新生フィナンシャルのATMなどの無人店舗を新生銀行に譲渡してしまって銀行のものにしてしまい、銀行ローンとして貸し出していくということです。これなら、総量規制は気にする必要は無くなります。何とレイクという商品名まで銀行がそのまま使用しているのです。

結局、最近の自己破産や個人再生の相談を受けていると、銀行ローンから借りている人が目立つようになってきています。これでは、総量規制など、あまり意味が無かったのではないか、かえって一時的に混乱させただけではないかと思わざるを得ません。

私はもともと、利率の引き下げには賛成でしたが、総量規制には反対でしたから、こんな政府が民間の貸出の量まで口出しをして規制するなんてことは、共産主義ではあるまいし、やはり無理があったのではないかと思っています。

PS
これはあくまで私の勝手な仮説ですが、ひょっとして財務省の頭のいい役人が、「消費者金融は儲けすぎだ。消費者金融の儲けを、我らの天下り先である銀行に移してしまえ。」と考えたとしたら、そのたくらみは見事に成功したということになりますね。もちろん仮設であって何か証拠がある訳ではありませんが、結果的にあまりにも銀行が得をする状況になっているので、こういう考えも浮かんでしまいます。