6月 19 2008
シリーズ 個人再生①
さて、今回からは新シリーズとして、個人再生を取り上げたいと思います。債務整理の中では最も複雑で、素人には難しい手続だと言われています。
例えば、専門家に頼まずに破産を申し立てる人は、数は非常に少ないですが一応存在します。(ちなみに東京地裁では、個人の破産申立を認めていませんので必ず弁護士をつけるように勧められます。ただ、この取扱は憲法の「裁判を受ける権利」に抵触するのではないかと問題にはなっています) あと、任意整理は専門家にしか出来ませんが、その代わりに素人が出来る特定調停が用意されています。
これらの手続きと比べて個人再生は、その複雑さ故に、素人が専門家の助けを借りずに最初から最後までやり遂げたという話を、少なくとも私は聞いたことがありません。私自身も、個人再生に関しては素人が自分で進めていくのは難しいだろうと思っています。従って、このシリーズでは、専門家に依頼する時に知っておいた方が良いことを伝えたいと思います。
では、「どんな人に個人再生は向いているか」、というテーマで考えてみましょう。
まず、大前提として任意整理や特定調停で処理できる人は対象外だと思います。任意整理や特定調停の方が自由度が高いので、これらの手続きで充分に債務が減額できるならば、わざわざ厳格な手続である個人再生を選択するメリットが無いからです。もちろん、過払いになっているような人は、そもそも債務が残っていない訳ですから、他の手続を考える余地はありません。このことから、任意整理や特定調停では充分に債務が減らない人が、当てはまる最初の条件でしょう。取引の年数が短い人と言い換えることも出来ます。
次に支払能力の問題があります。上の条件に当てはまって、尚、支払能力が無い場合(例えば失業中とか)は破産を選択するしかありません。ただ、次の仕事が決まっていて内定ももらっていると言う場合は認められる可能性があります。私が依頼を受けた人の中で、このような人がいましたが、裁判所の認可をもらうことが出来ました。
支払能力に関しては特定調停と同じで、裁判所は非常に厳しくチェックしてきます。では、どの程度の支払能力があれば良いのかを簡単に説明しましょう。
個人再生では、申立人の債務の総額が500万円以下ならば一律100万円に債務が減額します。500万円を超えた場合は5分の1に減額されます。例えば、債務総額が400万円なら支払額は100万円、600万円なら支払額は120万円になるということです。実は、これ以外にも1500万円を超えた場合の規定があるのですが、ほとんどの人が当てはまりませんから、ややこしくなるので無視して下さい。
次に個人再生特有の清算価値というルールがあります。これは財産の総額と言い換えた方が分かりやすいでしょう。要は、その人が持っている主要な財産を金銭に換算して合計したものです。裁判所が考える主要な財産には、不動産・生命保険・自動車・退職金などがあります。細かい評価額の出し方については後ほど説明します。今、覚えておいて欲しいのは清算価値の総額と、前に出した支払額とを比べて清算価値の方が高かったら、支払額は清算価値の金額になるということです。例えば債務総額が400万円なら支払額は100万円ですが、清算価値が150万あったら支払額は150万円にアップするということになります。ここで注意して頂きたいのは、財産を換価する(売却してお金に換える)必要は無いということです。あくまで、清算価値と同じだけの金額を毎月の収入から支払っていけばよいのです。
以上のようにして算出した支払額を3年間で払うことになります。従って、支払額を36回に分割すれば一月の支払額が出ます。この支払額ぎりぎりだと裁判所も難色を示しますから、だいたい2万から3万上回るくらいの支払能力があれば、裁判所の要求に答えられる可能性が高いでしょう。
ここまで読んでいかがでしたか。難しかったかもしれないですね。最終的には専門家に依頼されると思いますから全部分かる必要はありません。ただ、専門家を判断する材料にも使えますので、知っておいて損は無いと思います。
それでは次回ですが、「どんな人に向いているか」の論点がまだ残っていますので、続きを書く予定です。









