司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 08 2008

シリーズ 個人再生③

11:25 AM 個人再生

 個人再生の3回目は清算価値について説明します。

清算価値とは個人再生独特の表現で、債務者の持っている財産の総額のことを指します。前回までのシリーズで、「清算価値が、債務額の5分の1または100万円よりも高ければ、個人再生で支払う額は清算価値の額になる」と言う話をしました。従って、清算価値がいくらになるかは支払額を決定する上で非常に重要です。清算価値を計算するには独特のルールがありますので、今回はそのルールを説明しましょう。

 まず代表的なのは現金と預貯金ですが、これは単純に残っている金額になります。注意すべきは給料からの天引きで積み立てている場合です。天引きなので本人が忘れている時があるのです。給料明細を見ればすぐに分かりますから、依頼した後で専門家が気付いて本人がびっくりするというケースが良くあります。天引きと言うのは確実に毎月実行されますから、意外に高額の積立が発見されたりするのです。

 次に裁判所が最も気にするのが不動産です。これは、時価からローンの残債を差し引いた金額が清算価値となります。オーバーローンの場合はマイナスになりますから清算価値は0円です。自分が住んでいる住宅にも、この法則は適用されますから、オーバーローンになっていなければ清算価値に含まれます。ちなみに時価に関しては不動産業者の見積書を2通用意して裁判所に提出しなくてはなりません。別々の業者から2通取って、その平均値を時価とします。

この時、注意するのは親の土地に子供が家を建てた場合です。このケースでは住宅ローンは家の建設資金だけですから、土地は関係ないと思ってしまう人が多いのですが、実は違うのです。何故なら例え家の建設資金であっても、住宅ローンの担保には家と土地の両方が入っているからです。家と土地はセットでなければ誰も買いませんから、銀行は必ず両方担保に入れます。その結果、清算価値を計算する時には、家と土地の時価の合計から住宅ローンの残債を差し引いて、残った金額を家と土地の時価の割合で比例配分することになります。具体的には、家の時価が500万円で土地の時価が2000万円、住宅ローンの残債が1000万円だったとします。この場合、家と土地の合計2500万円から住宅ローン1000万円を差し引いて1500万円になります。次に家と土地の時価の割合が1対4ですから、1500万円を1対4で配分した結果、家の分の清算価値は300万円になります。

このように親の土地の上に子供が家を建てた場合は清算価値が残る場合が多いので注意が必要です。

 次に生命保険について説明します。生命保険は「掛け捨て」の場合と「貯蓄型」の場合があります。当然、清算価値に含まれるのは貯蓄型の場合です。貯蓄型の生命保険には解約返戻金というものが発生します。生命保険会社に電話して解約返戻金証明書を取得して裁判所に提出する必要があります。

この時、注意して頂きたいのが、契約者貸付の有無です。契約者貸付とは貯蓄型の生命保険から一定額を借りられる制度のことです。契約者貸付がある場合は、解約返戻金から貸付分を差し引いた金額が清算価値になります。ちなみに契約者貸付は借入とはみなされないので、個人再生や自己破産の債権者には含まれません。理由はちょっと複雑なので、ここでは書きません。債権者にはならないとだけ覚えておいて下さい。

少々長くなりましたので、今回はこれで終了です。次回は引き続き清算価値について説明します。