司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

9月 15 2009

シリーズ 過払金⑥ 取引の分断(4)

4:26 PM 過払金請求

 今回は、最高裁の取り上げた、分断を判断する上での7つのポイントについて、どういう場合に債務者側に有利に働くかを説明します。

1 「第一取引の期間の長さ」に関しては、これは長い方が有利です。長く取引していれば、例え完済したとしても、そう簡単に取引を止めるはずがない、次にまた借りる可能性は高いと考えられるからです。しかし具体的に、どの程度なら長いと言えるのかについては個々の裁判官に任されているのが現状です。(要は、はっきりしていないということになります)

2 「第一取引の完済から第二取引開始までの期間の長さ」に関しては、短ければ短いほど有利と言えます。期間が短ければ、完済した時に、次の借り入れを考えていたと判断されやすい訳です。これも具体的な期間について、よく問題になりますが、はっきりとは決まっていません。まあ私の経験では1年以内なら短いと言って良いように思います。ただ、1年を超えていても裁判所が一連計算を認めてくれることもありますので、諦める必要はありません。もちろん長くなるほど認められる確率は低くなっていきます。

3 「第一取引の契約書の返還はあったか」に関しては、返還を受けていない方が有利です。返還を受けたということは、その時点で契約を終わらせるつもりだったと判断されやすいのです。これは期間の長さと違って判断しやすいポイントですね。

4 「第一取引のカードの失効手続はあったか」に関しては、失効手続が無い方が有利です。同じカードを第二取引でも使用していたら、連続した取引だと主張する為の有力な証拠になります。このことからクレジットカードのキャッシングについては、ほとんど債務者有利の一連計算が認められています。(ちなみにカードの更新は失効とは違います。クレジットカードが定期的に新しいカードが送られてくるのは更新です。これは有効期限が延長しただけの前と同じカードですから、同一カードとみなされます)

5 「空白期間の貸主と借主の接触状況」に関しては、接触が頻繁にあった方が有利になります。よく主張するのが、業者が完済した後の空白期間に債務者に対して再借り入れの為の勧誘を行っていた場合です。この勧誘が多ければ多いほど、業者自身が取引を終わらせるつもりが無かったということになり、一連計算が認められやすくなります。

6 「第二取引が契約された時の事情」に関しては、例えば審査がほとんど無かったとか、最初から借り入れ枠が高額だったとか、本人確認が甘かったとか、いうことがあれば有利になります。これは、業者が前の取引の情報を引き続き利用していて、取引を終わらせるつもりが無かったという判断になりやすいからです。

7 「第一取引と第二取引で契約内容に違いがあるか」に関しては、違いが無い方が有利です。ただ、私の経験では、このポイントは前の6つのポイントに比べると裁判所は重視していないように感じています。

 さて、ざっと説明しましたが、難しいのは、この中のいくつが有利だったら裁判所は一連計算を認めてくれるのか、ということに関しては、「裁判官によって違う」という回答になってしまうことです。裁判では、判断が分かれている事件に関しては絶対はありません。一生懸命に主張しても負けることもあるということを、常に頭に置いて下さい。

もちろん、戦わずして負けるのは良くありません。判断が難しいというのは裏を返せば、「勝つこともある」わけですから、とりあえずは主張してみましょう。その際に今日のブログを参考にして頂ければ良いでしょう。

 では、次回はクレジットカードの取引の分断について取り上げます。