1月 09 2018
こういう自筆証書遺言はトラブルになる!(遺言⑧)
遺言の中でも自筆証書遺言は気軽に書けるため人気があります。
誰にも相談せずに秘密にしておけるのも、メリットと感じられる人もいるようです。
公正証書遺言は、費用もかかりますので、その点でも避けられているのかもしれません。
しかし、司法書士として多くの遺言の相談を受けてきた経験から言えることは、記載の不備で遺言として利用できないという自筆証書遺言が想像以上に多いという事実です。
自筆証書遺言は、誰にも相談せずに書けるというメリットがある反面、間違いに気付くチャンスが無いとも言えるのです。
では、具体的にどんな遺言がトラブルになったのでしょうか。
折り合いの悪い子がいた場合
お父様が亡くなって、子どもが3人いました。
お母様は既に亡くなっています。
お父様は自筆証書遺言を残していました。
不動産を長女に、預貯金を次男に譲るという内容です。
この遺言で不動産の名義変更をして欲しいという依頼です。
ここまでで、「あれ?」
と思いましたか?
思った人は、なかなか鋭いですね。
そうです。子どもは3人、財産を譲るのは長女と次男ということは、長男はどうなった?ってことですよね。
遺言というのは、感情も入ってくるものなのです。
折り合いの悪い親族には、財産を譲らないようにする遺言を残すことは、珍しいことではありません。
残念!遺言に間違い発見
ところが遺言を拝見すると、重大な間違いが見つかりました。
「〇〇県〇〇市の不動産を長男に相続させる」という記載だったのです。
さて、問題です。
この部分の一体何が間違っているのでしょうか?
実は上記のような記載では不動産の特定が不十分で、法務局は登記を受け付けてくれません。
〇〇県〇〇市の不動産といえば、お父様からしてみれば、間違いの無い自分の不動産としてイメージしているのですが、実際には〇〇県〇〇市のどの不動産のことかがきちんと書かれていなくてはダメだったのです。
何丁目何番地まで、もっと言えば面積までです。建物ならば鉄骨か木造かまで入れた方が無難です。
せっかく自分の意思を残そうと思って遺言を書かれたのに、利用できなければ無駄になってしまいます。
自筆証書遺言は遺留分の配慮を
また、今回の遺言では遺留分に対する配慮もなされていませんでした。
次男には遺言でも否定できない遺留分の請求権があります。
相続人が子ども3人だとすると、3分の1×2分の1で6分の1ですね。
通常、専門家が遺言作成の依頼を受けた場合、遺留分にも配慮した遺言の内容にします。そうしないと後で遺留分減殺請求を受けてトラブルになる可能性があるからです。
遺留分減殺請求は、する方も、される方も、気持ちの良いものではありません。
しかも、遺留分減殺請求によって、売りたくなかった不動産を売却しなければならなくなることも起こりえます。
法的に有効な遺言を書くのは意外と難しいものです。
開封されるのは書かれた人が亡くなった後ですから、その時点では訂正も出来ません。このような遺言の性質を考えると、どうしても自筆証書で残したい場合は、自身が書いた遺言を専門家に一度見てもらった方が良いのではないでしょうか。












