司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

不動産売買

7月 29 2025

判決による登記 不動産売買③

売主が登記名義変更に協力しない場合

不動産業者が仲介して決済日を設けて行う不動産売買ではほとんど起こりませんが、個人間の売買ではたまに、買主が代金を支払った後でも売主が登記名義変更に協力しないため名義変更ができないというケースがあります。このような場合は買主はどうしたら良いのでしょうか。

裁判を起こして名義変更を許可する判決をもらう

このような理不尽な状況を回避するために、買主が裁判を起こして売主に対して登記名義変更を強制する判決をもらうことができます。

裁判に勝利すると次のような判決が出ます。
「被告(売主)は原告(買主)に対し、別紙目録記載の不動産について、令和〇年〇月〇日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ」

判決が出れば売主を無視して登記手続ができる

判決文の内容を読むと、強制はしているけれども売主も手続に関与する必要があるように見えます。しかし実際には売主の関与は不要です。この判決さえもらうことができれば、売主を全く無視して買主だけで登記名義変更の手続をすることが可能です。

売買の登記手続に必要なもの

売買の登記名義変更の手続のことを正確には「売買を原因とする所有権移転登記」と言います。この手続には通常は売主側の書類として「実印で署名押印された委任状」「売主の3ヶ月以内の印鑑証明書」「売却される不動産の登記識別情報通知(登記権利証)」が必要になります。

しかし先ほど紹介した判決があれば売主側の書類は全て不要になります。判決と確定証明書があれば、それが売主側の書類の代わりになるのです。

※確定証明書とは判決が確定したことを裁判所が証明する書類です。確定した判決の主文には既判力があり、既判力とは同じ内容で再び争うことができないという強制力のことを言います。

原因日付が判決に書かれていない場合

司法書士が登記を強制する裁判に関与していれば大丈夫だと思いますが、たまに弁護士のみで登記の裁判をされている場合があります。弁護士は裁判の専門家ですが登記の専門家ではありません。

よって、出された判決に従ってどのように登記がされるのかまでは理解していないことがほとんどです。そのため判決文に原因日付が書かれていないことがたまにあります。しかし登記をするためには原因日付が必要です。その時はどうすれば良いのでしょうか

判決文に原因日付の記載が無い時の対処法

そのような場合は極めて例外的ではありますが、「年月日不詳売買」とか「年月日判決(日付は判決確定日)」のような記載で法務局は認めていることが多いです。ただし判決文に日付が入っていた方がスムーズに進むことは間違いないので、裁判の段階で日付は入れてもらうようにしましょう。

相続における調停や審判による登記

相続登記では登記義務者は故人なので、義務者の協力が不要なため「判決による登記」が必要になるケースはあまりないです。一方で、複数の相続人が遺産分割協議で争って決着が着かないために、家庭裁判所で遺産分割調停や審判になる時があります。

調停や審判は判決ではありませんが、裁判所の決定という意味では同様の効力があります。従って調停書や審判書があれば、反対している相続人の協力が無くても相続登記を行うことができます。

不動産売買について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

親族や知人への不動産売買のページ

12月 28 2022

契約不適合責任の免責 不動産売買② 

売買契約における売主の責任

売買契約における売主の責任のことを以前は瑕疵担保責任と呼んでいました。瑕疵とは欠陥のことで、不動産業界ではよく使われる用語です。瑕疵担保責任とは不動産に何らかの欠陥があった時に売主が負う責任のことです。

令和2年4月に民法が改正されてこの瑕疵担保責任が廃止されて、代わりに契約不適合責任が新設されました。

契約不適合責任とは

契約不適合責任は瑕疵担保責任よりも売主の責任が重くなっています。例えば、瑕疵担保責任では買主側から請求できるのは「契約解除」「損害賠償請求」の2つでした。

一方、契約不適合責任では、買主側は「追完請求」「代金減額請求」「催告解除」「無催告解除」「損害賠償」の5つを請求できるようになりました。

契約不適合責任の免責

このように改正された民法では売主の責任が重くなっているわけですが特に中古物件の売買では、売主の責任が重すぎると売買契約の合意が成立しないケースが増えてしまいます。なぜなら中古物件の場合、買主がある程度の欠陥を許容した上で、その代わりに安く買うという習慣があるからです。

しかし、売主は欠陥の責任を全て負わされると価格を安くすることができません。そこで価格を下げて売りたい場合は売買契約書の中に「契約不適合責任の免責条項」を入れることが広く行われています。この条項があれば売主は契約不適合責任を免れることができます。

免責に制限が付く場合

個人の売買の場合は、売主と買主の双方の同意があれば免責の範囲の制限はありません。ただし、売主が知っていた欠陥を隠して売却した場合は免責特約は無効です。

一方、売主が法人の場合は消費者契約法の適用を受けますので、一部免責特約が無効になるケースがあります。例えば、「契約不適合責任を完全に免責とする場合」や「通知期間(売主が責任を負う期間)を短期間にした場合」などです。

更に、売主が宅建業者(不動産業者)の場合は宅建業法の適用を受けますので、やはり免責が無効になるケースがあります。具体的には、宅建業者は個人の買主への売買契約において、2年間は免責できないと決められています。従って、免責となる期間が2年より短く設定されていた場合には、その免責特約は無効となります。

他に新築物件の売買の場合は、住宅品質確保法という法律が適用され基本構造部分の10年間の保証が義務付けられています。そのため、基本構造部分の保証期間を10年以内とする免責特約は無効となります。

不動産売買について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

親族や知人への不動産売買のページ

11月 18 2022

国土利用計画法の届出 

国土利用計画法の届出とは

一定の面積以上の土地取引においては、国土利用計画法の届出が義務付けられていることをご存知でしょうか。結構知らない方も多いと思いますので簡単に説明したいと思います。

一定面積とは

法律で定められている一定面積とは、市街化区域は2000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域は5000㎡以上、都市計画区域外は10000㎡以上と、かなり広い土地になります。都会では少ないかもしれませんが、地方の山林などは当てはまるケースも多くなるでしょう。

該当する取引とは

届出に該当する取引は主に売買です。法律では「対価の伴う契約による取引」となっています。ということは贈与は対価を伴わないので除外されることになります。他に相続の場合も届出は不要です。

届出の期間

届出の期間は「契約締結日を含めて2週間以内」とされています。届出人は譲受人なので、売買の場合は買主が届ける義務があります。よく間違えるのが登記完了日から2週間以内だと思っている場合です。あくまで契約締結日からなので注意してください。

届出先

届出先は、土地の所在する市町村の国土利用計画法担当窓口になります。

審査

審査される内容は「土地の利用目的」です。利用目的が適切かどうかを判断され、不適切と判断された場合は利用目的の変更の勧告を受けることがあります。

罰則

期限内に届出をしなかった場合や、虚偽の届出をした場合には罰則があります。刑事罰なので結構重いですから注意が必要です。罰則の内容は「6ヶ月以内の懲役または100万円以下の罰金」です。

相続について、より詳しい情報が知りたい方は以下をクリック

相続のトップページ