A 相続登記を長い間やっていると不思議な事例に出会うことがあります。その中の一つに、住所変更登記の事例があります。
Q 住所変更登記の不思議な事例とは何ですか?
A 例えば以下のような事例です。相続登記をするためには、被相続人(故人)の住民票の除票または戸籍の附票が必要です。そこで戸籍の附票を取ったところ、「A市B町一丁目1番地 住定日 昭和50年6月10日」と記載されていました。ところが登記簿を見ると「A市B町一丁目1番地 所有者甲 登記原因 昭和50年6月5日売買」となっていました。これは非常に不思議なことなのですが、分かりましたでしょうか。
Q 何が不思議なのでしょうか、答えを教えてください?
A 答えは、A市B町一丁目1番地に住所を移したのは6月10日なのに、登記簿には6月5日の時点で同じ住所が書かれているからです。売買が行われた時にはA市B町一丁目1番地の住民票は取れなかったはずなので、一見、不思議なことが起こっているように見えます。(買主の住民票は売買の登記の必要書類です)
Q 本当に不思議ですね。なぜ、こんなことが起こっているのでしょうか?
A 実は登記簿のコンピューター化が深くかかわっています。実は事例の案件では、コンピューター化される前の紙の登記簿にはきちんと「A市B町一丁目1番地6月10日住所変更」という付記登記がされていました。売買の後に住所変更がされたことが分かるようになっていたのです。
Q それがコンピューター化されると、なぜ分からなくなるのでしょうか?
A コンピューター化される時に、付記登記で記載された住所変更登記は省略されて、最初から変更後の住所で所有者欄が記載されるというルールがあるのです。そのため住所変更されたことや日付も分からなくなってしまうのです。法務局としては効率化のために行っていることなのだと思いますが、変更の経緯が分からなくなってしまうのは困りますね。
Q どうすれば気付くことができるのですか?
A 司法書士ならば慣れているので気付くことができますが、一般の方だと難しいでしょう。紙の登記簿が保存されていれば、それを見れば分かりますが、保存されていなければ推測するしかありません。
A 保存期間が満了したために公的書類が廃棄されて発行できなくなった場合、役所で廃棄済証明を取得することができます。戸籍の保存期間は150年と非常に長いので(以前は80年だった)、廃棄済証明を取得する場面は多くないでしょう。しかし、住民票の除票の場合は現在は戸籍と同じ150年に延長されましたが、以前は5年だったので廃棄されてしまったケースは珍しくありません。
Q 廃棄済証明を取得するのは、どんな場合ですか?
A ほとんどが相続手続を行う場合です。不動産の相続手続では被相続人(故人)の住民票の除票が必要書類になっているからです。 住民票の除票とは亡くなった人は住民票から除かれるので、別途、除票と言う形で作成されることから付けられた名称です。
Q 住民票の除票が廃棄されている場合、廃棄済証明を取得すれば相続手続は可能なのでしょうか?
A 以前は廃棄済証明だけでは足りず、法定相続人全員の上申書が必要でした。しかし、所有者が不明の土地を無くすという政府の政策により手続が簡素化され、被相続人の不動産の権利証があれば上申書は不要になりました。
Q 廃棄済証明書はどこの役所でも取れるのでしょうか?
A いいえ。廃棄済証明書は廃棄になった役所でないと取得できません。遠方の場合は郵送請求になりますね。郵送請求をする時は、申請書と定額小為替と返信用封筒と本人確認書類が必要になるのが一般的です。これは役所ごとに異なっているので、事前に役所に問い合わせて確認しましょう。
Q 定額小為替とは何ですか?
A 役所に書類を郵送請求する時の費用の支払方法です。郵便局で定額小為替を購入して(手数料は1枚200円)同封して送ります。面倒なのと手数料が高いのが批判の対象になっていて、最近ではカードで払える役所も少しずつ増えてきています。
A 根抵当権は主に事業者が所有している不動産に付けられているもので、設定した極度額の範囲内ならば何度でも借りられるようにした特殊な抵当権のことです。事業者は仕事の都合で何度も借りたり返済したりを繰り返すので、返済する度に抵当権を抹消して、再び借りる時にまた抵当権を設定していると手間も費用もかかります。そのために考え出された仕組みです。
Q 相続不動産に根抵当権が付いていることがあるのですか?
A はい、あります。未払いの場合は抹消することはできません。根抵当権が付いた不動産を相続することになりますね。被相続人が返済し終わっている場合は相続登記以外に根抵当権の抹消登記を申請することになります。
Q 根抵当権抹消の注意事項はありますか?
A 抵当権抹消の場合だと登記原因が「債権放棄」となっている場合がありますが、根抵当権抹消の場合は「債権放棄」が原因だと、別に根抵当権確定の登記が必要になります。
Q 根抵当権確定の登記とは何ですか?
A 根抵当権は何度も貸し借りができる仕組みなので、特定の借入が無くなっても効果が無くなりません。再び借り入れるかもしれないからです。そこで「債権放棄」で特定の借入が無くなったとしても、根抵当権を抹消するためには、もう二度と根抵当権付きの借入は起こしませんという確約が必要になります。その確約に当たるのが根抵当権確定の登記になります。
Q 根抵当権抹消のためには必ず確定の登記が必要なのですか?
A いいえ。抹消登記の登記原因が「根抵当権の放棄」または「根抵当権の解除」ならば確定の登記は不要です。根抵当権そのものを無くすという意味だから確定が不要になるのです。
Q それらの登記原因にするように銀行に伝えるべきですか?
A 通常は相続が発生していて事業を継続する気が無いないならば、銀行が用意する登記原因証明情報の登記原因は何も言わなくても「根抵当権の放棄」または「根抵当権の解除」になっています。
Q 根抵当権の抹消はしなくてはいけないのですか?
A 根抵当権の抹消はした方が良いです。もし売却をしようと思ったら根抵当権の抹消は絶対に必要になるからです。買主の立場になってみると、根抵当権が付いたままの不動産は買わないですよね。不動産業者からも買主に融資する銀行からも絶対に抹消するように言われます。いずれしなければならい登記なので、早めにしておいた方が良いでしょう。
A 長期間、遺産分割協議や相続登記が放置されていて現在の所有者が登記簿からは不明になっている土地が数多くあります。その中で法務局が法定相続人に相続登記をするように促す通知を出した土地を長期相続登記等未了土地と言います。
長期相続登記等未了土地は登記簿に付記登記として記載されますので、登記簿を確認すれば分かるようになっています。
Q 確か相続登記が義務化されたと思ったのですが、今後は解消していくのでは?
A 今後は少しずつ解消していくでしょう。しかし全国には非常に多くの長期相続登記等未了土地が存在するので、解消を促進するために新たに設けられたのが法定相続人情報と言う制度です。
Q 法定相続人情報とは法定相続情報一覧図のことでしょうか?
A いいえ違います。名称が似ているので勘違いする人も多いと思いますが、全く異なる制度です(もう少し区別しやすい名称にした方が良いように個人的には思いますが)。
A 長期相続登記等未了土地の相続は放置している間に相続人が増えていくパターンがほとんどなので、法定相続人が通常の場合よりも多くなるのが一般的です。すると戸籍や住民票以外にも必要となる書類も多く準備も大変になります。慣れている司法書士がやっても「大変だ」と思うケースも珍しくありません。ましてや一般の人がやり遂げるのは相当に厳しいと思います。法務局から通知が届いたら、相続登記に詳しい専門家にご相談されることをお勧めします。
A 山林や農地などを相続された場合、登記簿に記載されている建物が、とっくに取り壊されていて存在していないというケースに出くわすことがあります。相続人が都会に住んでいたりすると、現地を見に行ったりすることが無いので、相続の相談に行って始めて気付くということは珍しくありません。
Q 取り壊されているのに、何か問題があるのですか?
A 問題あります。登記簿と言う公式な表示に「建物がある」と記載されたままになっている訳ですから、売買したり贈与したり、新しく建物を建てたりする時に支障が出る可能性があります。
Q こういう場合は、どうすれば良いのですか?
A 建物を解体しても登記簿は自動的には抹消されません。建物についての滅失登記と言うものを申請しなければなりません。特定の建物の登記簿の表記を無くしてしまう登記になります。
Q その滅失登記というのは司法書士に頼むのですか?
A いいえ。建物滅失登記は表題部の登記なので、取り扱うのは土地家屋調査士になります。ただし司法書士に相続登記や贈与登記などを依頼していれば、通常は依頼した司法書士と提携している土地家屋調査士を紹介してもらえます。新たに探す必要はありません。
Q 滅失登記とは初めて聞きました。それは相続登記をしてから行うものなのでしょうか?
A いいえ。滅失登記は相続登記を省略して行うことが可能です。相続した建物が既に取り壊されていたら、いきなり滅失登記をして構いません。この辺りは建物の売買や贈与とは異なります。相続した建物の売買や贈与の場合は必ず相続登記をしてから行う必要があります。あと建物を取り壊す場合でも、土地については通常どおり相続登記をしなければなりません。
A 不動産は登記事項証明書(登記簿)によって管理されているからです。不動産の表記が登記事項証明書の表記と一致して始めて、不動産が特定されたことになります。遺産分割協議書だけでなく売買契約書などの法的な書面で不動産を特定する場合は、登記事項証明書の表記を使うということを覚えておきましょう。
Q 登記事項証明書の不動産の所在地番と住所は異なるのですか?
A 異なることが多いです。不動産の所在地番を決めているのは法務局であり、住所は市区町村役場です。最初は所在地番しかなく後から住所ができました。人口が増えて住居が増えたため所在地番だけでは郵便配達などに不都合が生じるようになり、より細かい住所を設けるようになったと言われています。ただし所在地番と住所が同じところもあります。