司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

遺産承継業務

11月 21 2025

愛知銀行と中京銀行の合併 遺産整理(遺産承継)㉜

愛知県で遺産承継業務をしていると、愛知銀行や中京銀行に手続に行くことは多いです。この二つが合併して名称が変わりましたので、このことについて書きたいと思います。

Q 愛知銀行とは、どんな銀行ですか?

A 名古屋市中区に本店がある地方銀行。愛知県、岐阜県、三重県、静岡県西部(浜松市)などが主な営業エリアです。地方銀行の中では老舗で愛知県内のシェアは三菱UFJ銀行、名古屋銀行についで3位。同じ愛知県の愛知信用金庫とは無関係の別会社です。

Q 中京銀行とは、どんな銀行ですか?

A 元々は三重県で創業された銀行で、途中で名古屋市に本店を移転しました。その影響で名古屋の地方銀行としては珍しく、関西にもいくつか店舗があります。その反面、愛知県三河地方の店舗は少なく、岐阜県の店舗は現在はありません。

Q 愛知銀行と中京銀行は無くなったのですか?

A 愛知銀行と中京銀行は経営統合して新しく「あいち銀行」となりました。組織としては存続していますが、愛知銀行や中京銀行という名称は無くなりました。この経営統合により愛知県の地方銀行では最大となりました。東海三県(愛知県・岐阜県・三重県)では、十六銀行・百五銀行に次いで3位となります。

Q 愛知銀行と中京銀行が経営統合して困ったことはありませんか?

A 被相続人(故人)が愛知銀行の通帳を持っている場合は、名称がひらがなに変わっただけなので分かり易いと思います。しかし被相続人が中京銀行の通帳を持っている場合は、どこに相続手続に行ったら良いか分からないという相続人がいました。

Q 他にも注意点はありませんか?

A 愛知銀行と中京銀行で支店がものすごく近くに設置されている場合があります。この場合は非常に近い場所に「あいち銀行」が二つ存在することになり、支店名も似たような名称になっていることがあり、経営統合前の古い通帳を持って手続に行く時は分かりにくいと思います。このような場合、目安としては旧中京銀行は「〇〇中央支店」となっているケースが多いです。

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11月 17 2025

三菱UFJ銀行は残高証明書の費用を被相続人の口座から差し引いてくれる 遺産整理(遺産承継)㉛

Q 残高証明書とは何ですか?

A 銀行の預貯金や投資信託などの残高を証明してくれる書類です。残高は変動するので、証明して欲しい日付を特定して請求します。相続手続の場合は、被相続人の死亡日を特定日付にして発行してもらうことが多いです。

Q なぜ残高証明の日付を死亡日にすることが多いのでしょうか?

A 相続税の申告で使う場合、被相続人の死亡日の残高証明書が必要になるからです。相続税がかかるかどうか調べる時も、死亡日の残高証明書を取りますね。

Q では残高証明書は必ず死亡日で取得するのでしょうか?

A いいえ。遺産分割協議で使用する時は最新の日付の残高証明書を取ります。遺産分割で対象になるのは現在の財産だからです。遺産分割で揉めた時の家庭裁判所の遺産分割調停でも提出するのは最新の日付の残高証明書になります。

Q 相続手続と一緒に残高証明書を取得する時は、費用は被相続人の預貯金から差し引いてもらえますか?

A ほとんどの場合、いいえです。残高証明書の取得手数料は、ほとんどの金融機関で別払いになります。同時に相続手続をしていることを理由に、被相続人(故人)の預貯金口座から差し引くようにお願いしても、ほとんど断られます。

Q 被相続人の預貯金から差し引いてくれる銀行はないのでしょうか?

A 私の知る限り三菱UFJ銀行だけは被相続人の預貯金から差し引いてくれます。わざわざ窓口に行って支払う必要もなく、振り込む必要も無いので非常にありがたいです。是非、他の銀行も見習って差し引けるようにして欲しいところです。

Q 相続センターがある場合でも差し引いてくれないのですか?

A はい。ほとんどの銀行では相続センターが設けられている場合でも、残高証明書については各支店での取り扱いになっています。相続手続とは別に支店窓口での申請や支払いになるケースが多いのです。

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11月 14 2025

相続手続依頼書に代表者以外の署名押印が必要か? 遺産整理(遺産承継)㉚

Q 相続手続依頼書とは何ですか?

A 銀行の相続手続をする時に銀行から渡される最も一般的な書類です。必要事項を書き込んで署名押印して、戸籍や印鑑証明書などと一緒に提出します。

Q 相続人全員の署名押印が必要なのでしょうか?

A いいえ。もちろん相続人全員の署名押印をして提出しても構いません。ただし司法書士が相続手続の依頼を受けた場合は、相続手続依頼書に署名押印するのは司法書士のみなのが原則です。そうでなければ司法書士が依頼を受ける意味が無いからです。

Q なぜ相続手続依頼書には司法書士の署名押印のみで良いのでしょうか?

A それは添付書類として相続人全員からの司法書士に対する委任状も銀行に提出するからです。委任状には署名と実印による押印がされていて、印鑑証明書も添付されます。これならば相続手続依頼書に署名押印する必要はなくなります。

Q それでも相続手続依頼書に相続人全員の署名押印を求めてくる銀行があるのですか?

A はい、ありました。しかも相続センター経由でのことでした。正直、信じられませんでしたね。実印で署名押印した委任状が提出されていて印鑑証明書まであるのに、更に相続手続依頼書の署名押印まで求めてくるなんて非常識にもほどがあるからです。

Q その銀行での手続は最終的にどうなったのでしょうか?

A 粘り強く反論した結果、上層部に回されて、最終的には「印鑑証明書付の委任状が提出されているならば、相続人全員の署名押印は不要」という当たり前の結論に落ち着きました。それはそうでしょう。理屈で考えたら必ず、そういう結論になりますから。

Q 迷惑な話ですね。何故そんなことが起こったのでしょうか?

A ここで最も大きな問題は、この勘違いが相続センター経由で起こったことです。相続センターは、このような基本的な間違いが起こらないように相続に詳しい社員が集められているはずだからです。恐らく、たまたま実務に詳しくない担当者に当たってしまったということなのでしょう。

Q そんな社員がいたら相続センターを作った意味が無いのでは?

はい、私もそう思います。相続の実務に詳しくない社員は、そもそも相続センターにいてはいけないはずです。これが支店レベルで起こった事ならば「まあ運が悪かった」と思えないこともないですが、相続センターで起こったことならば見逃せません。しっかり反省して二度と起こらないようにして頂きたいですね。

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11月 04 2025

三井住友信託銀行の残高証明書の取得 遺産整理(遺産承継)㉙

Q 三井住友信託銀行の相続手続は、どうなりますか?

A 最近の大手銀行と同様に基本的には相続センターでの一括管理になっています。相続センターと電話でやり取りしながら郵送による手続になりますね。一般的に信託銀行は、通常の銀行のように支店の数が多くないため遠方からの手続になる場合が多く、支店に出向く必要のない相続センターでの取り扱いは、ありがたいと言えるでしょう。

Q 残高証明書の取得も相続センターになるのでしょうか?

A 信託銀行は都会の繁華街にしか店舗が無いので、残高証明書取得のためだけに店舗に出向くことになると相続センターを作った意味が無くなるので、残高証明書も相続センター経由で取得できるところが多いです。三井住友信託銀行も相続センター経由で残高証明書を取得できます。

Q 相続センター経由での残高証明書の取得で何か注意点はありますか?

A あります。銀行によって取り扱いが分かれますが、残高証明書の発行手数料を相続する預貯金から差し引いてくれる銀行は特に問題は起こりません。しかし三井住友信託銀行のように発行手数料を相続財産とは別に請求するところは問題があります。

Q 発行手数料を相続財産とは別に請求されると何が問題なのでしょうか?

A 振り込みにより支払うことになるので別途、振込手数料がかかるからです。例えば三井住友信託銀行の場合だと残高証明書代200円を払うために、何と550円の振込手数料を余分に払うことになります。これは痛いですね。しかし、これを嫌がると数少ない支店に直接出向いて取得することになります。場所によっては往復の交通費の方が振込手数料よりも高くなることもあるでしょう。

Q 確かに振込手数料を払うのは避けたいですね。何とかならないのでしょうか?

A 実際に、相続する預貯金から差し引いてくれる銀行も数は少ないですが存在します。となると、事務的に不可能ではないということになります。この方が相続手続をする側からしたら絶対に便利でありがたいですよね。

恐らく推測ですが、今までのやり方を変える時に、一時的に大きな負担が発生するという事情があるのでしょう。しかし可能にしている銀行は、それをやり遂げたということになりますから、是非、全ての銀行が見習って欲しいと思います。

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10月 23 2025

碧海信用金庫が令和7年4月から相続センターを設置 遺産整理(遺産承継)㉘

Q 碧海信用金庫とは、どんな銀行ですか?

A 愛知県安城市に本店がある信用金庫で、愛知県ではなじみがある信用金庫です。トヨタ系の中小企業の多い西三河地方を拠点にしていることもあって、信用金庫としては、かなり規模の大きい方です。

Q 銀行の相続センターとは何ですか?

A 相続手続には専門知識が必要で、全ての行員が相続手続に詳しいわけではないので、支店ごとに対応しているとスムーズな顧客対応ができないことも多かったのです。

そこで最近では大手の銀行を中心に、支店とは別に相続センターを設けて、相続手続は相続センターで一括対応を取るところが増えてきました。相続センターには相続手続に詳しい行員が集められているのでスムーズな対応が期待できます。

Q 碧海信用金庫には相続センターは無かったのですか?

A 信用金庫には相続センターが無いところも多く、碧海信用金庫も昨年(令和6年)までは相続センターはありませんでした。しかし、今年(令和7年)の4月から新たに相続センターが設けられました。

Q 今後は全ての相続手続が相続センターを通じて行われるのでしょうか?

A いいえ、全てではありません。預貯金の相続ではよくある残高証明書の取得は依然として各支店での取り扱いになります。ただし残高証明書が支店の取り扱いになるのは他の銀行でもよく見られることなので、碧海信用金庫に限った話ではありません。

Q 相続センターは、相続手続支援センターとは違うのでしょうか?

A 違います。ここで解説している相続センターは、あくまで銀行に相続手続に来られた方の事務処理を、銀行が一括管理するために設けられた部署のことです。

一方、相続手続支援センターは相続の専門家が集まって、相続手続の依頼を受けることを目的にしたものであることが多いです。従って名称は様々で、同じ意味で異なる名称のところも多くあります。

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9月 30 2025

分筆する時は測量図が必要 不動産売買④

Q 分筆とは何ですか?

A 一筆の土地を複数の土地に分けることを分筆と言います。土地は法務局で管理されていて、一筆ごとに登記事項証明書が1通ずつ作られています。分筆すると、それまで1通だった登記事項証明書が複数に分かれることになります。分筆によって土地の個数が増えるわけです。

Q 共有とは違うのですか?

A 違います。共有と分筆は誤解されやすいので詳しく説明します。共有とは1個の不動産を複数の所有者で持ち合うことです。共有者が何人いても不動産の個数は1個です。一方、分筆は土地のみの概念で、土地の個数自体を分けて増やすことです。

Q 分筆すると、個別に売買することができますか?

A できます。分筆された土地は一つ一つが独立した土地になるので個別に売却ができます。例えば、相続税を支払うために土地の一部を分筆して売却する時などを想像してもらえば分かり易いかと思います。分筆は均一にする必要は無いので、土地の10分の1だけ分筆しても構いません。一方、共有の不動産を売却するためには共有者全員の同意が必要であり、不動産の物理的な一部を売却することはできません。

Q 売買の時、隣地との境界がはっきりしない場合はどうするのですか?

A 隣地との境界があいまいな土地の場合、境界をはっきりさせないと売却ができません。どこまでが自分の土地になるのか分からないと買主が困りトラブルになるからです。そこで境界確定測量を行い確定測量図と言うものを作ります。

Q 分筆の時も測量図が必要なのですか?

はい。分筆の時は地積測量図が必要です。地積とは登記事項証明書に記載する土地の面積のことです。例えばAという不動産をBとCの2個に分筆した場合、BとCの地積はそれぞれ何㎡かを測量して記載しなければなりません。別の土地になる訳ですからBとCの境界に杭や鋲などを打つ必要もあるでしょう。他にもBとCの土地の範囲を記載した図面なども作成されます。

Q 境界確定測量や地積測量は誰が行うのですか?

A 土地家屋調査士です。一般には聞きなれない仕事かもしれませんが、土地や建物を測量して図面を作成して、登記事項証明書の表題部の記載を新規で作ったり変更したりするのが役割の専門家です。測量したり杭や鋲を打ったりと現場の仕事も多いので、結構費用は高いです。

Q 確定測量図と地積測量図の違いは何ですか?

A 土地家屋調査士が作成することは同じです。確定測量図は隣地の所有者も立会のもとで作られるので最も信頼性が高いです。確定測量図があれば隣地の所有者も合意していることになるからです。ただし法務局に備え付けの書類ではありません。不動産所有者が個人的に所持している書類です。

一方、地積測量図は、分筆した時などには法務局に提出されますので、保管場所は法務局です。法務局に行けば写しを取得することが可能です。新しいものは確定測量図を法務局提出用に直した形で提出されることが多いので問題は少ないようです。ただし古いものだと測量があいまいだったり、隣地の所有者の合意が無かったりする場合もあるので、新たに確定測量図を作った方が良いことが多いでしょう。

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親族や知人への不動産売買のページ

9月 08 2025

相続手続における司法書士と弁護士の違い 遺産整理(遺産承継)㉗

Q 相続における司法書士と弁護士の違いって何?

A 簡単に言うと、弁護士は特定の相続人の代理人であり、司法書士は相続人全員の代理人となります。

Q 弁護士の特定の相続人の代理とは?

A 弁護士が相続手続をする場合、必ず特定の相続人の代理となります。相続人全員の代理となることは、利益相反になるためできません。

従って、相続人同士で話し合いがまとまっている場合は弁護士の出番は基本的にありません。相続人の間で遺産分割について争っている状態だと、弁護士が特定の相続人の味方になって介入することができます。当然、他の相続人にとっては敵になりますね。(弁護士が遺言執行者になっている場合は、争いがなくても遺言書のとおりに手続を進めます)

Q 司法書士の相続人全員の代理とは?

A 司法書士は相続人の間で遺産分割について争いがある場合は基本的に介入できません。そのような状態で相談されたら「まずは遺産の分け方に決着を付けてから依頼してください」と答えます。

一方、相続人同士で話がまとまっている場合は弁護士と異なり、相続人全員から依頼を受けて相続手続を進めることができます。

Q 相続手続を司法書士に頼むか弁護士に頼むか迷った場合は、どうすればいいですか?

A 相続人の間で争いが無く手続だけを依頼したい場合は、司法書士に依頼すべきでしょう。一方、遺産分割で争いがある場合は弁護士の出番になります。

ただし弁護士は特定の相続人からしか依頼を受けられませんので、争いたい相続人が複数いる時は、それぞれが別の弁護士に依頼することになります。弁護士同士の争いになる訳です。そこまでするのが嫌だと思われる場合は相続人同士で決着を付けてから司法書士に依頼すると平和的な解決にはなりますね。

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8月 26 2025

海外在住の相続人がいる場合は、サイン証明が必要 遺産整理(遺産承継)㉖

海外在住の相続人がいる時の相続手続

最近は海外在住の相続人がいることは珍しくなくなりました。

日本に住民票や印鑑登録があり、頻繁に日本に帰国するようなケースならば日本の住民票や印鑑証明書を使うこともできますが、ほとんど帰国しないで主に海外に住んでいる場合は特殊な相続手続が必要になります。

まずは在留証明書を取得する

まずは、住んでいるところの最寄りの日本の大使館または領事館に行って、在留証明書という書類を取得して頂きます。海外に住んでいることを日本政府が証明した書類になります。海外の住民票のようなものですね。

在留証明書の写しを司法書士に送る

在留証明書を取得したら、その写しを相続手続を依頼した司法書士に送ります。この時、原本は絶対に送ってはいけません。なぜなら次に行う手続に必要だからです。司法書士は在留証明書の写しを見ながら委任状や遺産分割協議書を作成します。

サイン証明を取得する

司法書士が作成した書類が海外の住所に届いたら、その書類と在留証明書の原本を持って大使館または領事館に行きます。そこで大使館員や領事館員が見ている前で司法書士の作成書類にサインをします。サインの確認後、大使館または領事館がサイン証明を発行して司法書士作成書類にホチキスで留めます。これでサイン証明の完成です。

サイン証明は時間がかかるので早めに取り掛かろう

海外在住の相続人がいる場合、大使館や領事館が近くになければ行くだけで時間がかかります。近くにあっても在留証明書とサイン証明の2回行く必要があります。

サイン証明を取得した後は、在留証明書と一緒に原本を郵送して頂く必要がありますので、海外からだと郵送に時間がかかります。このように何かと時間がかかりますので、海外の相続人には早めに動いて頂いた方が良いでしょう。

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1月 20 2025

不動産売買の媒介契約は3種類ある 遺産整理(遺産承継)㉕

遺産承継における不動産売買

遺産承継業務は不動産や預貯金・株式などの相続手続全般を取り扱う業務です。その際に不動産の売却のサポートを依頼されるケースがあります。売却して金銭に換えてから相続人に分配される場合もあれば、特定の相続人が不動産を相続して売却する場合もあります。

不動産を売却する時の仲介の仕組み

不動産を売却する時は、通常は不動産仲介業者に依頼して買手を見つけてもらいます。意外と知られていませんが不動産仲介は成功報酬システムです。買手と条件が合って売買契約を結んで始めて仲介手数料が発生する仕組みです。契約が結ばれない限り、何人の買手と交渉しても一切料金はかかりません。

不動産仲介契約の種類

売主と不動産会社の契約のことを不動産仲介契約と言います。不動産仲介契約は「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があります。それぞれ次のような特徴があります。

一般媒介契約

一般媒介契約は複数の不動産会社に仲介を依頼することができます。報酬は成約した会社にだけ支払います。一見、最も良さそうに見えるので素人の方は選択しがちなのですが、実はプロはあまり利用しません。なぜなら大きなデメリットがあるからです。一つがレインズへの登録義務が無いこと、もう一つが売主への進捗状況の報告義務が無いこと、他にも仲介の優先順位が下がるという現実もあります。

不動産会社の立場から考えて頂ければ理解しやすいと思いますが、一般媒介契約は、他社で成約した場合はタダ働きになるリスクがある訳です。どうしても買い手を見つける優先順位が下がってしまいます。

レインズとは

レインズは正式名称を「不動産流通標準情報システム」と言い、売り物件が出た時にレインズに登録すると、会員になっている不動産会社は全てその情報を見ることができます。かなりの数の不動産会社がレインズの会員になっていますので、登録するだけで広範囲の買手探しにつながる訳です。
ちなみにレインズは一般の方が見ることはできません。あくまで不動産会社に特化されたマッチングシステムです。

専任媒介契約

専任媒介契約は不動産会社を1社だけに絞って仲介を依頼する契約です。メリットとしては7営業日以内のレインズへの登録が義務付けられています。他にも2週間に1回以上の売主への進捗状況の報告も義務付けられています。この2つのメリットは非常に大きいので、事情をよく知っている人は専任媒介契約を選択する傾向があります。

専任媒介にすると買手を探すのも依頼した1社だけだと誤解している人がいますが、レインズに登録してもらえれば事実上ほとんどの不動産会社に物件を見つけてもらえます。一般媒介でレインズに登録されないで複数の不動産会社に依頼するより、専任媒介の方が圧倒的に多くの買手の目に触れる可能性が高いのです。

あと専任媒介契約の特徴として、他社に仲介を依頼することはできませんが、依頼人が自分で買手を探してきた場合はその買主との契約は可能です。

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約は、専任媒介契約の特徴である自分で見つけてきた買主とは契約できるという部分を無くした契約です。つまり自力で見つけてきた相手とも売買契約はできません。それはさすがに厳しすぎると思われる方も多いでしょう。私もそう思います。個人的には専任媒介契約が最もバランスが取れていると考えます。

専属専任媒介契約のメリットとしては、一つは5営業日以内のレインズへの登録、もう一つは1週間に1回以上の売主への進捗状況の報告です。このメリットも専任媒介契約と比較して圧倒的とは言えないので、自力で見つけた相手との契約ができないというデメリットの方が大きいかなと思います。

両手と片手

不動産仲介の業界用語として「両手」と「片手」があります。両手は売主から依頼を受けた不動産会社が買手も見つけた場合、片手は買手は別の不動産会社が見つけた場合です。

不動産売買に詳しくない方が「一般媒介契約の方が良いのでは」と思ってしまう理由の一つが、不動産仲介は基本は両手だと思っていることです。確かに両手ならば複数の不動産会社に依頼した方が多くの買手が見つかるだろうと思ってしまいそうですね。

しかし実際には専任媒介契約と専属専任媒介契約ではレインズに登録しますから他の不動産会社の目に触れて、買手は別の不動産会社が見つけてきたというケースも多いです。レインズ会員の不動産会社すべてが買手を探してくれるなら、その方が良いという考え方もあると覚えておいてください。

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11月 25 2024

銀行の相続手続の最近の変化 遺産整理(遺産承継)㉔

昔の銀行の相続手続

以前の銀行の相続手続は、ほとんどが口座を開設した支店に行かなければなりませんでした。支店が遠方の場合は行くだけで大変でしたし、支店の中に相続に詳しい行員が少なく、かなりの時間待たされることも珍しくありませんでした。今でも地方の信用金庫や地方銀行には、このスタイルのところが残っています。

最近の銀行の相続手続1

最近は銀行の相続手続も変化してきています。一つは、どこの支店でも受け付けるところが増えていることです。メガバンクや大手の地方銀行には、このやり方が浸透してきています。ゆうちょ銀行は昔からこのスタイルでした。遠方の支店で口座開設をしていた場合には非常にありがたい変化です。

最近の銀行の相続手続2

二つ目は予約制の導入です。相続手続は他の手続に比べて非常に時間がかかります。待ち時間が加わると更に時間が長くなるので、予約制にすると時間の短縮につながってありがたいです。メガバンクはほとんどが予約制になりました。

最近の銀行の相続手続3

これは個人的にはあまりありがたくない変化ですが、手続が2段階になっている銀行が以前より増えました。2段階とはどういうことかと言うと、まずは受付をして基本的な相続情報を記入した受付表のようなものを提出します。これを提出してからでないと相続手続に必要な書類を受け取ることができないシステムのことを言います。

正直なところ面倒で手間がかかるので、私は評価していません。ゆうちょ銀行は昔からこのやり方でした。最近、他の銀行でもやり始めたところがありますが、まだ多数派ではありません。

最近の銀行の相続手続4

最近めっきり増えてきたのが相続センターを別に設けて、一ヵ所で全ての相続手続を処理するというやり方です。相続専門スタッフを集中的に配置して効率的に処理できるので賢い方法だと思います。

ただしこの方法だと手続は全て郵送でのやり取りになるので一つ難点があります。必要書類も郵送で送ってしまうので、返却されるまで他の銀行の手続ができないことです。ただ遠方の支店に行かなくても良い点や、手続の時間を待たなくても良い点などメリットもたくさんあるので、トータルでは評価できる変化だと思います。

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