司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

7月 28 2018

遺言⑬ 信託銀行の遺言書管理信託とは

5:36 PM 遺言

信託銀行の商品の中に「遺言書管理信託」というものがあります。
一見、便利そうな名前が付いていますが、料金を考えると「?」と思える商品なので取り上げてみたいと思います。

例えば、ある信託銀行の遺言書管理信託のページを調べると、以下のような説明がされています。

  • 遺言書の保管
  • 当行がお預かりした遺言書は、ご相続の開始時まで安全に保管します。

  • 定期的照会
  • 当行から定期的に相続開始通知者、遺言書指定受取者の住所変更や異動の有無を照会させて頂きます。

  • 遺言書の返却
  • 遺言書指定受取者に確実にお渡しします。自筆証書遺言の場合、家庭裁判所の検認手続が必要になり別途費用がかかります。

    そして、上記サービスの手数料として以下の金額が表示されています。
    基本手数料  公正証書   32万4000円
           公正証書以外 54万円
    遺言書保管料       年間6480円

    正直、この説明と料金を見た時、サービスの少なさと料金の高さに驚いてしまいました。
    これだけのサービス内容にしては、高額に思えます。
    特に公正証書遺言は、もともと原本は公証役場で保管されていて、謄本は本人が保管、そして正本を遺言執行者が保管するという、比較的万全な体制です。
    上記のサービスでは、正本を保管するということだと考えられますが、本当に必要なのかよく考える必要がありますね。

    と言っても料金設定やサービス内容は自由ですから銀行を責めるつもりはありません。
    ただ消費者の皆さまには、「サービス内容に比べて、かなり高額の料金である」という事実は分かっておいて欲しいとは思いました。
    (分かった上で、やはり銀行を選択するというのは、もちろん自由です。)

    たとえば、もし同様のサービス内容で私の事務所が依頼を受けた場合、年間5000円程度の保管料は頂きますが、それ以外の料金(銀行の基本手数料にあたるもの)は頂きません。
    実に数十万円の差が出てしまいます。

    しかも銀行のサービスは、遺言書の作成料金や家庭裁判所の検認料金は含まれていないのです。
    これを消費者の皆さまが知っていた場合、どのように判断するのでしょうか。
    費用を抑えたい場合、これからは特に情報を調べる力が必要になってきていると感じています。

    最近、信託銀行は相続に力を入れていて遺産整理業務も積極的に宣伝しています。
    遺産整理業務とは不動産や預貯金・証券などの解約・名義変更を一括して行うサービスです。

    銀行の遺産整理業務も値下げを予定していると新聞に報道されていました。
    消費者にとってはうれしいことではありますが、実は、元の料金が余りにも高額で(一般的な司法書士事務所の倍以上)、利用者が非常に少なかったので見直そうとしているのが実情なのです。

    銀行の遺産整理業務は、まず最低料金が高いです。
    現在108万くらいが現在の相場となっています。
    (見直しが入る予定)
    最低料金に該当しない資産額の場合でも、割合報酬(1.5%~2%が相場)は高めです。
    (一般的な司法書士事務所では最低25万~30万円で割合報酬は約1%)。

    他にも、不動産の名義変更をする場合、結局、銀行も司法書士に外注しています。
    銀行に遺産整理業務を依頼した場合、司法書士の外注費用は別途請求されてしまいます。
    しかし、司法書士に依頼した場合は、不動産の名義変更の費用は司法書士料金に含まれているのが普通です。

    ですから、遺産整理業務の場合でも、銀行と司法書士事務所ではトータルで数十万円の差が出てしまいます。
    消費者の皆さまには、こういうことを良く知った上で選択して欲しいですね。

    より詳しい情報を知りたい方は以下をクリック

    https://www.hashiho.com/inherit/testament/

    https://www.hashiho.com/inherit/isanseiri/