4月 07 2020
婚姻20年以上の夫婦の贈与の特例は注意してください! 生前贈与⑤
婚姻20年以上の夫婦の贈与の特例とは
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で居住用の不動産を贈与した場合、2000万円までは贈与税がかからないという制度があります。これ以外に1年間に110万円までは贈与税の非課税枠がありますから、プラスして使えば2110万円分の不動産を贈与税無しで贈与することが可能です。
婚姻20年以上の夫婦の贈与の特例は得なのか
一見、「2110万円も贈与税がかからないなんて、何てお得な制度なんだ。早速、使わなければ」と思えてしまいます。実際に、この制度の人気は高く使う人も多いです。しかし、ちょっと待ってください。本当に夫婦の贈与の特例制度は誰にとってもお得なのでしょうか。
夫婦間には相続の時に1億6000万円もの控除がある
意外と知られていませんが、夫婦間では相続の時に1億6000万円までは相続税がかからないというルールがあります。ですから、ほとんどの世帯では夫婦間の相続では税金がかかりません。
生存中に2000万円分の贈与を急ぐ必要は、あまり無いのです。
生前贈与には贈与税以外の税金がかかる
「贈与税が無ければ得になる」と多くの人が考えてしまう理由として、贈与税以外の税金のことを気付いていない人が多いことがあげられます。
不動産を生前贈与すると、贈与税以外に登録免許税と不動産取得税という2種類の税金がかかってきます。
登録免許税とは
登録免許税とは、不動産の贈与による移転登記(名義変更)をする際に法務局で請求される税金です。登録免許税を払わないと、登記申請自体を受け付けてもらえません。そして贈与の場合にかかる登録免許税は、固定資産評価額の2%です。評価額の高い不動産の場合は結構な金額となります。
不動産取得税とは
不動産を贈与や売買で取得した場合、取得した人に不動産取得税がかかります。金額としては、固定資産評価額のだいたい3%くらいが目安となります。だいたいと書いたのは、様々な軽減措置があるので、個別に検討しないと正確な金額は分からないからです。
相続の場合は税金が優遇されている
一方、不動産を相続で取得した場合は、かなり税金は優遇されています。
例えば登録免許税は評価額の0.4%なので、贈与の時の5分の1で済みます。また不動産取得税については相続で取得した場合は非課税となっていますので支払う必要はありません。
これらにプラスして相続税の1億6000万円控除がある訳ですから、夫婦間の税金に関しては圧倒的に相続で取得した方が有利です。
夫婦間の不動産の贈与は税金以外の理由が必要
このように税金面では例え婚姻20年以上の特例を使ったとしても相続で取得した方が有利ですから、夫婦間で不動産の贈与をするならば税金以外の理由が必要です。
人は合理的な考えだけで行動する訳ではありませんので、感情的な理由で贈与することがあっても構わないと私は思います。ただしその場合は「税金面で得する訳ではない」、ということは分かった上で贈与を行ってください。そうしないと後で後悔することになります。
古い家屋の場合は、それほど問題にならないかも
どうしても生存中に贈与したい、という希望をもっている人からの相談は実際にあります。特に築年数の古い家屋のみの贈与の場合は税金の額が小さいので、強い希望があれば贈与を選択しても良いかもしれません。
築年数の古い家屋の場合、評価額がかなり低いことが多いので、登録免許税や不動産取得税が安く抑えられるからです。
同じ理由で利用価値の低い土地の場合も評価額が低いので検討の余地はあるでしょう。
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