司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

7月 09 2015

登記識別情報とは? 昔の権利証との違い(相続登記③)

不動産登記法が改正されてから、新しく登記を行うと、従来の「権利証」とは異なり「登記識別情報」というものが発行されます。
今回は、まだ見慣れない人も多いと思われる登記識別情報について説明しましょう。

権利証から登記識別情報へ

長らく日本の不動産登記では、所有権を証明する重要書類として「権利証」が使われてきました。
権利証とは正式名称を「登記済証」と呼び、不動産を譲ることを「権利証を譲る」と表現する場合もあり、金庫などに大切に保管していた人も多かったのです。
(厳密には、権利証を持っているだけでは所有権の証明にはなりませんが、一般的にはそのように考えられていますね。)

ところが長く親しまれていた権利証が、不動産登記法の改正により発行されなくなりました。
その後は、新しく「登記識別情報」という名前の1枚の紙が発行されるようになりました。

実は、この登記識別情報は、従来の権利証とは大きく性質が異なっています。では何が違うのでしょうか。

その違いを理解するためには、まず何故、権利証が重要な書類なのかの説明をする必要があります。

売買、借入時の必要添付書類としての権利証

不動産の権利を売買で他人に移転する場合、所有権移転という登記手続が必要です。
金融機関から金を借りて不動産を担保に入れる場合も、抵当権設定という登記手続が必要です。
その手続をする際に、申請する法務局に対し必ず権利証を添付書類として提出しなければなりません。
権利証が添付されていなければ、登記は却下されてしまいます。

権利証を持っていなければ、他人に売ることができない、金を借りて担保に入れることも出来ません。だからこそ権利証は重要書類だったのです。

これが登記識別情報になった場合、どのように変わるのでしょうか。

登記識別情報の注意点!重要なのは、紙ではない!

登記識別情報とは「紙に書かれた12桁のパスワード」です。重要なのは発行された紙ではなくて、パスワードそのものなのです。

従って、売買による所有権移転登記や、担保に入れるための抵当権設定登記の際に必要なのは、パスワードであって紙ではありません。
ここが最も大事なところです。

ようするに、登記識別情報の場合は、紙が手元に置いてあっても、そこに書かれていたパスワードを他人に知られてしまったら、取られたのと同じことになってしまうのです。

「何と恐ろしいことだ」と思った人も多いでしょう。
しかし、一応、予防策があります。
それは、発行された紙には、パスワードが書かれた部分に特殊なシールが貼ってあって読めないようになっています。

そのシールは一度はがすと、二度と貼れないように特殊な加工がしてあります。
従って、次に登記手続をするまでは貼ったままにしておけば、見られる心配はなくなります。
もし、はがれていれば、それは誰かが見たということが分かるようになっているのです。

では、万が一、はがれていたのを見つけたら、どうしたら良いのでしょう。それは、次回に説明したいと思います。

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