12月 07 2010
最近の破産の状況(前編)
過払いの話が続きましたので、本日は破産について話したいと思います。
任意整理や過払金請求が増加したからかもしれませんが、破産の件数自体は一時期よりも若干減っているようです。ただし、今後は業者の業績悪化や、改正法による利率の引下げなどによって任意整理や過払金請求は減少してくると予想されますので、破産が再び増加してくる可能性があります。そこで最近の破産の状況について説明しましょう。
このブログの破産のシリーズでも書きましたが、破産には大きく分けて管財事件と同時廃止事件があります。ところが実際に裁判所に申し立てられている破産の8割以上が同時廃止事件です。何故、このように偏った件数になっているのでしょう。
実は同時廃止とは財産を、ほとんど持っていない債務者(名古屋の場合は40万円以下)を、より簡単で安い費用で処理できるように定められた手続なのです。まあ、債務者の味方と言っても良いかもしれません。これに対して管財事件は裁判所に払い込む費用だけで40万近くかかるという(弁護士・司法書士費用は別)、破産を考えている債務者にとっては非常に厳しい手続となっています。
従って、これまでは圧倒的に同時廃止事件が多かったのですが、最近になって、ちょっと異変が起こっています。裁判所が今まで同時廃止として認めていたようなケースで管財に変更になる場合が増えてきたのです。何やら裁判所の方針として管財事件を増やす方向で考えているようなのです。
例えば、今までは事業主は管財事件になることが多かったのですが(事業主は売掛金や在庫などを持っている為、財産調査に精密さが求められる為です)、それでも過去に事業をやっていて破産にかかる借金が始まったのが事業を止めた後からのものであった場合は同時廃止が認められていました。あるいは、今現在、事業を継続中であっても、実質、一人で経営しているような従業員のいない零細の事業主や事務所は、やはり同時廃止が広く認められていました(一人ならば、売掛金や在庫も、それほど多くないのが普通ですから)。
ところが最近では、今まで認められていた上記のようなケースでも管財事件に回されることが圧倒的に多くなったのです。
これは正直、改悪だと私は思います。破産とは債務整理における最終手段です。他の手段では、どうしようもなくなった人が最後にたどりつくのが破産という手続なのです。医療で言えば手術のようなものかもしれません。それにもかかわらず、この最後の手段の選択のチャンスを非常に狭くしてしまっているからです。
任意整理や個人再生が選べなかった人は、他に破産という手段が残されていますが、破産が選べなくなったとしたら他に選ぶ手段がありません。これは大問題です。
では何故、このような傾向に裁判所が傾いているのでしょうか。次回は、これについて私の考えを述べたいと思います。









