司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2月 24 2022

借金の相続と消滅時効 時効(100)

10:24 AM 時効

借金を相続した時

親族の借金を相続してしまったら、どうすれば良いのでしょうか。自分が作った借金ではないので、「できれば払いたくない」と考える人が多いのではないでしょうか。そんな時の解決法について解説しましょう。

借金の相続の間違えやすい点(重要)

借金の相続について多くの人が間違えているポイントがあります。それは、相続人の誰かが借金を全額相続するという勘違いです。実際は「借金は法定相続分で分割」されます。

つまり法定相続人が複数いる場合は、借金を全額相続することは無いのです。支払義務があるのは法定相続分だけです。金融業者が相続人に請求する時、このことについて詳しく説明しない傾向があるので注意しましょう。

もう一つ多くの人が間違えているポイントがあります。それは、「借金の相続割合は遺産分割協議で変更できない」ということです。

従って、遺産分割協議によって相続人の誰か一人に借金を押し付ける、ということは法的にはできないのです。(ただし、自ら一人で払うという相続人が名乗り出た場合は、その人が支払能力がある限り、金融業者は応じるとは思います)

この2点は多くの人が誤解していますので、マメ知識として覚えておくと良いでしょう。

まずは相続放棄を考えよう

消滅時効には「5年以上支払っていない」とか「過去に裁判をされていない」とかの条件があります。これらの条件を満たしているかどうかは本人が亡くなっていると分からないこともあるでしょう。

従って、相続した借金の清算を考える場合、まずは相続放棄を検討するべきです。なぜなら相続放棄の条件は相続人が判断できるからです。相続放棄の条件は以下のとおりです。

  1. 亡くなった親族に財産が無い。あるいは財産があっても自分は相続していない。
  2. 亡くなってから3ヶ月以内、または借金の請求が来てから3ヶ月以内である。

これら2つの条件を満たしていれば相続放棄が可能です。ただし相続放棄できるのは、あくまで自分の法定相続分の借金だけです。他の相続人の分の借金は、それぞれの相続人が相続放棄をする必要があります。

更に第一順位の相続人(子や孫)が全て相続放棄をした場合は、第二順位(親や祖父母)または第三順位(兄弟姉妹や甥姪)に借金が相続されますので、新たな相続人も相続放棄をする必要があります。

次に消滅時効を考えよう

相続放棄の条件を満たしていない場合は消滅時効の援用を検討してみましょう。消滅時効にも最初に指摘した条件がありますが、本人でないと分からないこともあり判断が難しい部分があります。もし条件を満たしていることに、ある程度自信がある時は迷わず消滅時効の援用を試してみるべきです。

条件を満たしているか自信が無い場合は難しい判断になります。時効の援用は成功すれば借金がチャラになりますので効果は絶大です。その大きな効果に期待してチャレンジしてみるかどうかは、最終的には相続人本人が決めることになるでしょう。(時効の援用をあきらめた時は、支払うか自己破産するかという選択になりますね)

消滅時効の援用の場合も、自分の相続分のみにしか効果はありません。他に相続人がいる時は、相続人全員が時効の援用をする必要があります。ただし、第一順位の相続人全員が時効の援用をした時でも、第二順位・第三順位の相続人に借金の相続が移ることはありません。これは相続放棄の時との大きな違いなので注意してください。

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