司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

11月 19 2007

最近の状況

 債務整理の業務を行なってきて随分と時間が経ちました。その間に、いろいろと状況が変化してきました。今回は、私が行なってきた業務を少し振り返ってみたいと思います。

私が開業した頃は、まだ債務整理と言えば「自己破産」という考えが主流でした。ようやく「特定調停」や「個人再生」という、自己破産とは違う手続が整備されてきたところでしたが、まだポピュラーなものではありませんでした。相談の時に、自己破産以外の方法が使えるかもしれないと伝えると、相談に来た人は大抵驚いた顔をしていたものです。

ましてや「過払い」などと言う言葉を知っている人も皆無でした。その頃は、司法書士や弁護士ですら、過払金の取り戻しについて詳しく知らない人が多かったのです。業者も今よりずっと過払金の支払いに抵抗していましたから、満額取れるケースは少なく元金の7割とか8割で和解することも珍しくありませんでした。

その頃は債務整理を専門に打ち出す司法書士は、愛知県には、ほとんどいませんでした。手前みそになりますが、愛知県で債務整理中心のホームページを立ち上げたのは、私が初めてだと思います。

それから、二つの大きな変化が訪れます。

一つは司法書士に簡裁代理権が与えられたことです。今でこそ当たり前になりましたが、昔は司法書士には任意整理を行なう資格が無かったのです。従って任意整理を司法書士がやり始めたのは、ごく最近のことなのです。

もう一つの大きな変化は、最高裁判所の画期的な判決が、ここ3年位の間に立て続けに出たことです。

これらの判決により過払金の返還請求が飛躍的に有利になりました。それとともに、「過払い」という言葉もポピュラーになり、今では過払いを見逃したら司法書士や弁護士の責任問題に発展します。

この二つの変化により、状況は劇的に変わりました。債務整理の仕事の大半は「任意整理」と「過払金請求」になり、「自己破産」と「個人再生」が急激に減少したのです。

最近になって開業した事務所の中には、開業以来、「自己破産」と「個人再生」は受けていないという事務所もあると聞きます。

しかし、こういう状況は重大な問題を、はらんでいます。要するに「自己破産」や「個人再生」の経験をつんでいない司法書士が増えてしまったということです。

それに対して、貸金業法が改正されてグレーゾーン金利が無くなることが決定しましたから、今後は「任意整理」と「過払金請求」が減ってくることは明らかです。

逆に増えることが予想されているのが「自己破産」と「個人再生」です。総量規制が始まると貸し出し基準が厳しくなり、返済の為の借入が出来なくなりますから行き詰まる人が増えてきます。金利水準は大手を中心に下がっていますから、利息制限法の利率に引き直しても支払えない場合が多くなります。住宅ローンの金利も先行き不透明で、今後金利が上昇した場合、支払いが厳しくなるケースが出てくる可能性もあります。

これらのことを考え合わせると今後は「自己破産」と「個人再生」が増えるだろうと容易に予想がつきます。しかし、あまりにも一時的に「任意整理」と「過払金請求」が増えすぎてしまった為に、技術的な経験が蓄積されていない司法書士が現場の仕事に携わるようになったことは新たな問題と言えるでしょう。

これから移り変わる状況に対して、司法書士業界が、うまく対応していけるのかどうか、司法書士業界全体の課題になるでしょう。