8月 01 2011
差押① 差押は何故、必要か?
過払金請求に限らず、貸金請求や売買代金請求などの金銭を請求する訴訟を起こして勝訴判決を得たとしても、残念ながら全ての債務者(この場合、判決で負けた方を債務者と言います)が、おとなしく支払ってくれる訳ではありません。
多くの人は判決で勝ったら負けた方は支払うのが当たり前だと思っています。もちろん理屈では、その通りです。しかし、ここでちょっと考えてみて下さい。そもそも裁判になったということは、請求された側に素直に支払う気持ちが無いからこそ裁判にまでなったのです。それが判決で負けたからと言って、とたんに心変わりして素直に支払うようになるでしょうか。実際には、かなりの人が判決で負けた後も支払わないのです。
では、負けた方が支払わない場合、どうしたら良いのでしょうか。残念ながら警察が犯人を取り締まるように裁判所が負けた人から、お金を取って勝った人に支払ってくれる訳ではありません。判決で勝っただけでは裁判所は何もしてくれないのです。このまま放っておいたら泣き寝入りをしてしまうことになります。それを防ぐ為に強制執行、いわゆる差押という制度が用意されています。
判決で負けた人が支払わなかった場合、勝った人は裁判所に対して差押を申し立てることが出来ます。もちろん訴訟とは別の手続ですから新しく申立書などを書いて裁判所に手数料も納めなくてはなりません。しかし、この手続をすることによって負けた人の財産を合法的に差し押さえることが出来るのです。
それなら全ての人が判決を取って差押をすれば良いではないかと思った人もいることでしょう。実は、ここで多くの人が勘違いをしている重要なポイントがあります。それは、何を差し押さえるのかは裁判所は一切、考えてくれないし、探してもくれないということです。
もし、負けた人の住所と氏名だけを書いて差押の申立書を裁判所に出したら、裁判所から次のように質問されます。「この人の何を差し押さえるのですか」と。
要するに相手の財産の調査は判決で勝った人が自分で行う必要がある訳です。(調査に費用がかかったとしても、それはもちろん自腹です)ということは相手が、どこに財産を持っているかが分からない場合は、差押が出来ないことになります。こういう場合は、予測を立てて(簡単に言えば勘で)成功するかどうかは、やってみなければ分からないという前提で差押をすることも、よくあります。
ですから差押の成功率は決して高いとは言えません。裁判の多くが判決までいかず、和解で決着する最大の理由がここにあるのです。例え勝訴判決を取っても相手から全額を取れるかどうか分からない、それなら多少なりとも減額しても和解で終わらせようと考える訳です。裏を返せば、相手の財産が確実に分かっていて、いざとなったら、そこを差し押さえれば絶対に回収できると分かっている場合は、判決を取りにいっても良いということです。
差押の中で、よく使われるのが給料、銀行口座、売掛金などの債権執行と呼ばれるものです。一方、あまり使われないのが不動産執行、動産執行です。何故、そうなのかの説明は次にいたしましょう。









