司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

9月 06 2011

差押② 給料の差押

差押の中で最も良く使われるのが給料の差押です。何故、良く使われるのかと言えば最も成功率が高いからです。

差押①でも書きましたが、差押とは実際には成功率が高くありません。(理由は差押①をご覧下さい) そんな中で給料の差押は数少ない非常に成功率の高い方法なのです。何故なら給料は貯金と違って、会社が本人に渡す前に差し押さえてしまえば、隠すことも使ってしまうことも出来ないからです。差し押さえる側にとって、これほど有利な条件はありません。(逆に裁判で負けた側にとっては給料の差押は最も注意しなければならないものです)

貸金業者は、お金を貸す時に必ず勤め先を聞いて書類に記入させます。これは、いざと言う時に給料の差押を可能にする為です。会社名と住所が特定されていれば(最悪、会社名さえ分かれば住所は調べられますが)、給料の差押が可能になるのです。そして契約書には、たいていの場合、「勤め先に変更があった場合は必ず知らせること」という条項が書かれています。これは勤め先が分からなくなると給料の差押ができなくなってしまうからです。

そうは言っても給料を差し押さえられたら生活が出来なくなってしまうと思われた人もいるでしょう。しかし、そこは法律も考えていて給料全額の差押は禁止されています。その額は毎月の給料の4分の1と定められています。ようするに差し押さえられるのは給料の4分の1までで、4分の3は受け取ることが出来るということになります。もっとも、高額の給料を受け取っている場合は法律の例外として、4分の1以上の差押が認められています。しかし、高額の給料を受け取っている人は、そもそも裁判で負ける前に支払ってしまう場合が多いでしょうから、現実には4分の1が適用されると考えておいて、ほとんど問題ないでしょう。

給料の差押が実行された場合、まず裁判所から会社に(公務員の場合は国や地方自治体に)差押の通知が届きます。本人に届くのは、その後です。通知を受け取った会社は毎月の給料から4分の1を差し引いて本人に渡すことになります。

4分の1だと、給料によっては、かなりの回数を重ねないと請求されている金額に届かない時もあります。しかし、法律の規定で差押を1回すれば請求金額に届くまで、ずっと差押の効力は持続することになっています。ようは1回差し押さえれば、全額回収するまで会社は毎月、4分の1を差し引き続けることになるのです。

一見、長時間かかるので効率が悪いように見えますが、それでも、あらゆる差押の中で最も良く使われるのは何と言っても回収が確実だからです。相手の会社が倒産するか、本人が退社でもしない限り必ず、いつかは回収できることになります。

最初に書きましたように差押は、もともと、あまり成功率が高くありませんから確実に回収できるというメリットは非常に大きいということです。