司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 30 2025

保険は名義人の財産とみなされる 個人再生㊺

9:53 AM 個人再生

間違えやすい保険の財産価値

積立型の保険契約は、自己破産や個人再生を行う時に財産価値として計上するかどうかが大きな問題になることが多いです。理由は自己破産の場合は同時廃止になるかどうか、個人再生の場合は支払額がいくらになるかに影響するからです。

※自己破産の同時廃止とは短期間で費用が安い手続のことです

保険については、名義人が誰かを把握していないことがある

保険は、契約者(名義人)と保険料を支払っている人が異なっていることが割と多いのが特徴です。しかも、異なっていることに契約者が気付いていない場合もあります。これは非常に大きな問題になることがあるので注意が必要です。

トラブルになりやすいケース

典型的なケースが、親が保険料を支払っていて子が契約者になっている場合です。子が借金の相談に来た時に、保険の契約者を聞いても「知らない」とか、「親が払ってるから恐らく親でしょう」とか答えることがあります。

しかし、保険の契約書を確認すると子が契約者になっていることが発覚することがあり、これは珍しいことではありません。

保険は契約者の財産とみなされる

このようなケースでは、保険の積立金は『契約者』の財産とみなされます。保険料の支払者ではありません。理由は解約した時に契約者に対して返金されるからです。これを専門用語で解約返戻金と言います。すると先ほどの事例だと子の財産となるわけです。例え解約していなくても、破産や再生を申し立てる時点で解約したとしたら、戻ってくる予定の金額が財産とされます。保険会社に解約返戻金証明書を請求すると、保険を継続中でも金額が書かれた証明書を送ってきます。

保険の継続年数が長いと予想以上に高額になっていることがある

親が払っているので全く意識していなくて、解約返戻金証明書を見たら、とんでもない高額になっていて驚いたというケースがあるのです。長期間払っていると結構な金額になっていても、おかしくありません。そして問題は自己破産や個人再生をする場合は、これが債務者本人の財産だとみなされることです。

自己破産の場合は管財事件になる

自己破産の場合は通常、債務者の財産が40万円を超えると管財事件になります。管財事件になると債務者の財産は換価されて債権者に分配されます。つまり先ほどの事例で言うと、財産の合計額が40万円を超えていると、保険は強制解約されて解約金は債権者に支払われることになります。

個人再生の場合は清算価値に加算されて支払額に影響する

個人再生の場合はもう少し複雑で、債務者の財産のことを清算価値と呼びます。この清算価値の合計が「100万円」または「債務総額の5分の1」のどちらよりも多かった場合は、清算価値が個人再生の支払額となるというルールがあります。

例えば、債務総額が600万円で清算価値が150万円だった場合、債務総額の5分の1は120万円で、清算価値は100万円と120万円のどちらよりも多いので、支払額は清算価値である150万円になるというわけです。

保険の解約返戻金が高額だと個人再生ができないこともある

このように保険の解約返戻金は清算価値に影響を与え、清算価値は支払額に影響を与えます。つまり保険の解約返戻金が予想以上に高額だった場合、支払額が分割しても支払えない金額になる可能性があるということです。そのような場合は個人再生をあきらめざるを得ないこともあります。

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