司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

7月 23 2015

請負代金請求事件①

<事例>
親方の下で、しばらく働いていたが、その後、独立して一人親方として仕事をするようになった。しかし、独立してすぐには仕事も無いので、しばらくは前の親方から仕事を回してもらって下請のような形で工事をしていた。その際、前の親方には収入の1割を上納する習慣があったので、その通りにした。実際のお金の流れは、元請会社から親方に対して工事代金が支払われ、親方はその中から私に渡す分から1割を差し引くという形であった。
最初はうまくいっていたが、ちょっとした人間関係のトラブルがあり、親方が私に下請代金を支払わなくなった。親方ともめるのは得策ではない思い、しばらくは黙っていたが、半年近くも未払いが続くと生活が苦しくなり、やむなく司法書士に相談に行った。

(事件の経過)
未払いの請負代金請求事件です。相談者は3次下請の一人親方で、相手方は2次下請の元親方です。相談に来た時は人間関係が相当にこじれいて、「もう、請求に躊躇はしないので、あらゆる手段で回収して下さい」と言われました。
今回のような小規模下請業者の商習慣では、いちいち請負契約書を交わしたりはしないようなので、契約を直接証明する証拠はありませんでした。ならば間接証拠を集めることになります。有力な間接証拠として、元親方が相談者に出した発注書がありました。これに工事内容や金額が記載されていたので、「これがあれば何とかなるかな」と判断しました。
まずは、元親方が転居していたので住民票の調査で転居先を見つけて、内容証明を送りました。しかし、全く反応はありません。まあ、これは予想通りです。半年近くも未払いが続いていた訳ですから、このような場合、内容証明であっさり支払ってくるケースは稀です。相談者にも事前に説明してあったので、納得して頂けました。
そして、いよいよ訴訟になりました。訴訟にあたっては間接証拠しかありませんので、補強の為に陳述書を作成しました。陳述書とは、具体的な事実についての記憶を書面にしたものです。陳述書は内容が詳しければ詳しいほど信用力が増しますので、どれだけ事件について相談者が覚えているかが勝負になります。実際に書いてもらったところ、最初はボリュームが少なかったのですが、書いているうちに徐々に細かいところまで思い出してきて、何回か書き直してもらっていると、相当に詳しいものが出来上がりました。
さて、これらの証拠を添付して裁判所に訴状を提出しました。既に第一回期日は決まっています。今後どうなるかは、また報告しましょう。