司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

過払金請求

4月 22 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産その2

 丸和商事の倒産は民事再生という手続によって行われることになりました。武富士の倒産は会社更生という手続によって行われています。何故、異なる手続になったのか考えてみたいと思います。

 民事再生と会社更生の最も大きな違いは、届出期間内に届けなかった場合に救済が受けられるかどうかです。

民事再生の場合、旧クレディアの例でも明らかなように、やむを得ない事情(過払いであることを知らなかったなど)で届出期間内に間に合わなかった場合は、期間を過ぎた後も配当を受け取ることが可能となっている点です。故に、届出期間の周知に関しては、新聞等の広告でも許されていました。(間に合わなかった場合の不利益が少ない為)

一方、会社更生の場合は、届出期間を過ぎてしまうと一切の救済は認められていません。配当を受け取ることは不可能になってしまいます。これが為に、届出期間の周知は徹底することを裁判所から求められます。配当を受け取る権利が無くなってしまう以上、あらゆる方法を使って全国に知らせる必要がある訳です。

武富士の場合で言うと、TVコマーシャルを流したり、過払いになっている顧客に対しATMで届出の必要を知らせたり、あるいは既に完済して取引が終了している元顧客に対しても電話連絡等で知らせたりしています。当然ながら、かなりの時間と費用がかかることになります。

今回、丸和商事からの説明によれば、民事再生を選択したのは、上記のような徹底した周知を行う為には莫大な費用がかかる為(TVコマーシャルだけでも相当な費用でしょう)、費用負担に耐えられない可能性があるからということです。

結果的には債務者にとって民事再生の方が有利な点が多い為、喜ばしい結論だと思います。届出期間を終了しても配当が受け取れる可能性がある方が、ありがたいことは確かです。最も、期間終了後も認められる為には「やむを得ない事情」が必要ですから、過払いであることを知っていながら、ただのサボリで届出をしないというのは止めておきましょう。

 最近の情勢からして、今後も貸金業者の破綻は続くでしょうから、これからは倒産の方法が、民事再生か会社更生かが注目すべきポイントとなりそうです。(会社の規模が大きいところほど会社更生を選ぶ傾向があるようです)

4月 12 2011

臨時ニュース 丸和商事倒産

 本日は予定を変更して丸和商事の話題です。

中堅消費者金融の丸和商事(ニコニコクレジット)が平成23年4月8日付けで、東京地方裁判所に民事再生を申し立て、事実上、倒産しました。

丸和は静岡県掛川市に本社を置く消費者金融で、主に東海地方を地盤に業務を行っていました。私の地元の愛知県では割とポピュラーな業者の一つです。(関東や関西ではマイナーかもしれません)。

静岡県には、もう一つクレディアという消費者金融があり、ここは一足早く平成19年に民事再生を申し立て一度、倒産しております。その後、フロックスと名前を換え(正確にはフロックスという会社を新しく作って、そこに業務を承継させて)破綻後の対応をしております。

これで静岡県の主な消費者金融2社が破綻したことになります。東海地方では結構、インパクトのある事件です。

クレディアの時は、最終的に40%の配当がありました。これは、その後の破綻業者の対応を見ると結構マシな数字であり、果たして丸和が、これだけの配当を確保できるかどうかは未知数です。(私としては期待したいですが)

いずれにしても、今後、債権届出期間が設けられて債権届を呼びかけることになると思われます。クレディアの時は届出期間満了後も救済されましたが、今度も同じように救済されるとは限りません。最悪の場合も想定して、届出期間内に債権届を提出するようにしましょう。

4月 05 2011

オリコの取引履歴

 オリコ(オリエントコーポレーション)は以前から取引履歴に問題のある会社でした。最近はマシになっていますが、それでも完全に改善されたとは言えません。以下、オリコの取引履歴の何が問題なのかを説明します。

 オリコの取引履歴は長期間の取引がある場合、取引当初の入金額(債務者の支払額)が実際の支払額よりも少なく表示されているのです。

最近でこそ、当初の入金額が違うということを別の文書で明らかにするようになってきていますが、それも、ここ数年のことです。私が事務所を始めた頃は、それすら明らかにせず、平気で少ない金額を表示した履歴だけを送ってきていました。

私は、かなり早い時期から依頼人の預金通帳と照らし合わせて引き落とし金額と履歴の金額が違うことに気が付いていましたが、実際には、そこまで確認する専門家は少数派で、少ない支払額のままで過払金を請求していたケースも世の中には多かったのです。昔は過払請求自体が珍しかったので、そんな杜撰な処理でも許されていたのです。

 現在は、オリコの方から、金額が違うことを別の文書で明らかにしていますので、さすがに訂正してから計算している専門家が多いとは思いますが、完全に安心して良いとは残念ながら言えません。一応、オリコの過払請求をする人は注意した方が良いでしょう。

しかし、これも考えてみれば、おかしな話で、そもそも、オリコの方が最初から正しい支払額の取引履歴を送ってよこせば、それで済む話なのです。にもかかわらず、オリコは、わざわざ別の文書で古い時期の入金に関しては、別の入金記録から計算したものが正しい金額なので、専門家の方で勝手に計算して訂正してくれと書いてあります。

何度も言いますが、こんな計算を相手にやらせるオリコの方が、おかしいのです。最初から計算した上で正しい履歴を送れば良いだけです。事実、他の貸金業者は全て最初から正しい取引履歴を送ってきます。保存期間が過ぎたから残っていないという業者はありますが、間違った金額を載せてくるのは今やオリコだけです。(昔はセントラルファイナンスも少ない金額で送ってきましたが、合併してセディナになってからは正しい履歴を送ってくるようになりました。やれば出来るじゃないかという良い見本です)

 一般の人はクレジット会社は消費者金融に比べて、そんなことはしないのじゃないかと思っている人が多いようですが、事実は全然違います。むしろ、取引履歴に関しては、消費者金融の方が誠実なくらいです。昭和の時から履歴が出てくるのは圧倒的に消費者金融の方で、クレジットは昭和になると、もう、ほとんどの業者が「保存期間が切れていて残っていないから開示できない」と言ってきます。

その中でも最も問題のあるオリコの対応ですが、まさに少しでも過払金を減らす為に相手に面倒な計算を押し付けて、あわよくば怠慢な専門家にあたったら見落としてもらえるかもしれないという効果を狙っているとしか思えません。

専門家ですら面倒な計算ですから、素人がオリコの取引履歴を見たら、まんまとオリコの罠にはまってしまう可能性が高いと私は見ています。オリコと長期間の取引がある人は自分で過払請求はやらない方が良いのではないかと私は思います。

 では次回は、自己破産の時の自動車の扱いについてです。

 

3月 08 2011

過払金の相続

 最近、立て続けに過払金の相続の依頼がありましたので、本日は、この話題を取り上げようと思います。

 高齢の両親が消費者金融やクレジットカードから、かなり長期間の借入をしていて、過払金が発生している可能性が極めて高い場合に、ご両親が亡くなると過払金の相続の問題が発生します。

過払金は相続財産に含まれますので、相続人が複数いる場合は、

1 相続人全員から請求して後ほど相続分に応じて分配する。(専門家に依頼する場合は全員と面談し、委任状も全員からもらう必要があります)

2 遺産分割や相続放棄をしてもらい、誰か一人を相続人に決めて、その相続人から請求する

の二通りの方法があります。

ちなみに過払金の金額を確かめる為の取引履歴の開示のみだったら、たとえ相続人が複数であったとしても相続人のうちの誰か一人から請求することは可能です。(要は遺産分割の前に金額を確かめることは可能ということです)

生前、貸金業者からの催促の電話が、よく家にかかってきた場合などは同居の家族も苦労している訳ですから、故人の過払金を請求する権利はあるように思います。

一方、生前は全く借金があることなど知らず、亡くなってからカードや明細書が見つかって驚いて相談に来られる方もいます。こういう場合、そもそも何社から借りていたのか、過去に完済している業者があるのかなどの重要な情報が分からなくなっている場合があるので注意が必要です。

残高がある場合は、相続人であることが証明できれば情報機関に問い合わせれば、ほとんどのケースで解決しますが、完済している場合には情報機関にも情報が残っていない可能性があるので、やっかいです。この場合は故人の机や書棚をひっくり返して探すしかないでしょう。完済しているケースは一般的に過払金の金額が大きくなるので、面倒がらずに探した方が良いと思います。

特に完済している場合は完済から10年で時効により回収できなくなってしまいますから、どうせ相続財産など無いと考えて遺産分割もやらずに放っておいたような人は、見覚えがある場合は探してみるべきでしょう。ひょっとしたら驚くような過払金が眠っているかもしれません。

相続人の一人から過払金を請求する場合は、かなり詳細な相続証明書類が要求されるのが普通です。請求された側の貸金業者の立場からすれば、間違った人に支払ったら大変なトラブルになってしまいますから、まあ、これは仕方がないでしょう。

例を挙げると、被相続人(亡くなった人のこと)の死亡を証明する書類、被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍(これが人によっては大変な分量になります。特に住所を転々と移動していた人は遠方の役所に請求を出す必要がありますので非常に大きな手間になります)、遺産分割協議書、相続放棄証明書(家庭裁判所で取得します)などです。正直、素人が正確に集めようとすると、かなり面倒だと思います。ですから、ほとんどのケースで相続関係書類は司法書士・弁護士の仕事になっています。(不動産の相続が絡む時は、圧倒的に司法書士の仕事になることが多いです)

 では次回は、クレジットカードのマンスリークリアについてです。

 

3月 03 2011

クレジット会社ライフの経営悪化

 本日はクレジット会社ライフについての話題です。

 今までクレジット会社は消費者金融に比べて過払金の支払いが良いというのが定説でした。さすがに任意で請求(訴訟をしないで電話等で請求すること)した場合は減額を要求されることもありましたが、それでも訴訟を提起すれば元金に関しては、ほぼ満額回収できました(粘れば利息も回収できる会社が多いです)。ところが、ついにクレジット会社の一部にも経営悪化の影響が忍び寄ってきたようです。

その第一弾としてライフカードが挙げられます。ライフが最初となったのはアイフルの子会社であることも影響していると思われます。親会社のアイフルが経営悪化が取りざたされているので、その関係で支払いが悪くなってきているのでしょう。

前のブログでも取り上げましたが、ライフはクレジット会社では珍しく移送申立などの悪質な引き延ばし手段を使ってきます。電話も頻繁にかかってきて、早く解決したいなら金額を下げろと執拗に圧力をかけてくるようになっています。もはや、ライフ相手に元金に近い金額を回収しようと思ったら勝訴判決を取るしかないという情況になっているのです。

今のところは勝訴判決を取れば元金にかなり近い金額の回収は出来ています(それでも利息の回収は難しいです)。ただ、この情況が、いつまで続くかは分かりません。

 今後、ライフのようなクレジット会社が、これ以上、増加しないことを祈りましょう。

 次回は「過払金の相続」の予定です。

2月 15 2011

SF・ライフ・ヴァラモスの移送申立(後編)

 前回の続きです。本日は移送申立に対する対抗手段について、お話ししましょう。

 まず、移送申立が出されたら放っておいてはいけません。放っておけば移送が認められてしまいます。前回も説明したとおり、移送が認められてしまえば事実上、過払請求を諦めることになりかねません。これだけは避けなければなりません。

そこで、移送申立に対しては「移送申立に対する意見書」というものを裁判所に提出します。これは裁判所に対して「移送を認めないでくれ」と理由を付けて反論する書面です。ほとんどの場合、移送申立の根拠は前回に説明した合意管轄条項によるものです。従って、この条項に対して反論していくことになります。

具体的には、以下のような反論が考えられます。

1 そもそも契約書に、そんな条項が書かれていること自体、知らなかったし説明も受けていない。合意とは双方が認識していて始めて成立するものであるから、管轄の合意など成立していない。

2 契約書に書かれた管轄の合意には過払金返還請求訴訟は含まれていない。何故なら、契約書を交わした当時に貸し手と借り手が認識していた将来の紛争とは貸金業者の行う貸金請求訴訟のことであり、双方ともに過払金に関しての訴訟が将来起こることなど想定していない。

3 付加的管轄の合意である。(契約書に専属的という言葉が無い場合)。専属的とは、契約書に書かれた裁判所以外は一切、認めないという意味です。この言葉が書かれていない条項なら、これを逆手にとって、「専属的と書かれていないんだから他の裁判所も認める余地がある」と反論するのです。この反論を付加的管轄の合意と言います。

4 民事訴訟法17条による移送の却下を求める。民事訴訟法17条に「当事者の衡平を考えて裁判所は事件を別の裁判所に移送できる」と書かれています。これを逆に解釈すると、「当事者の衡平を考えて移送を却下することが出来る」と読むことも出来ます。もちろん、このとおりの意味に解釈してくれるかどうかは裁判官にかかっていますが、裁判とは言える反論は、とりあえず何でも言っておくのが正しいやり方なのです。(この点、普段の日本人の考え方とは、かなり違います)

5 消費者契約法10条により無効だと主張する。消費者契約法10条には「消費者の利益を一方的に害するものは無効とする」と定めています。借りた人が法人や事業主でなければ消費者です。また、契約書に書かれた合意管轄条項は貸金業者に一方的に有利なものであり、借り手である消費者にとって利益になることは何もありません。従って、この法律を根拠にして、「契約書の合意管轄条項は消費者契約法10条により無効であり、故に移送申立は却下されるべきである」と反論する訳です。

 以上の反論が認められて、めでたく移送申立が却下されたとしても安心は出来ません。中には、即時抗告という手段を使って更に争ってくる場合もあるのです。私の経験ではSFコーポレーションが、よく即時抗告を申し立ててきます。

即時抗告とは移送申立が却下された時に、その却下が不満な相手方(この場合は貸金業者)が、「もう一度、別の裁判所で判断してくれ」と言って申し立てるものです。簡易裁判所で却下された場合は地方裁判所に、地方裁判所で却下された場合は高等裁判所に申し立てることになります。

即時抗告の反論の仕方は基本的に前と同じです。ただ、仮に却下を勝ち取ったとしても、時間がかかるという点において、過払請求者にとっては非常に痛いことは確かです。実は移送が認められる確率は高くありません。もちろん、100%勝てる訳ではないので油断は禁物ですが、確率としては却下の方が多い訳です。では何故、一部の貸金業者は移送申立を行うかと言えば、「時間かせぎ」をする為です。

訴状を出すと第1回口頭弁論期日が約1ヵ月後くらいに決められます。そして、移送を出すような業者は、この第1回期日に狙いを定めて期日直前(ひどい時には前日)に移送申立を出してきます。そうすると、移送の審査の為に第一回期日は取り消しとなり、そこから移送の審査、却下、即時抗告、もう一度審査、却下と2ヶ月近くの時間を費やします。例え、却下されたとしても業者から見れば「時間の引き延ばし」の効果は充分にある訳です。だからこそ、この手を使う業者は、たちが悪いのです。

 さて、理解の無い裁判官に当たって、万が一、移送が認められてしまった場合は、諦めるしかないのでしょうか。実は簡易裁判所の場合は、何とかする方法があります。それは簡易裁判所の特則を使う方法です。

簡易裁判所の特則とは色々ありますが、その中に「本人が出頭しなくても書面で反論や主張が出来る」というものがあります。これを使えば、遠方の裁判所に移送されてしまった場合でも、戦う方法はあります。

こう書くと、「何だ、そんな方法があるのなら、始めからそれを使えば良いじゃないか」と考えそうですが、実は、そう簡単なことではないのです。

一応、この特則はありますが、では現実に使われているかというと、あまり使われていません。何故かと言えば、やはり裁判官も人間であり、実際に出頭してきた生の声の方を信頼する傾向があるからです。書面だけ出して来ない人には「真剣に訴訟をしようと思っていない」と判断されてしまう危険性があるのです。故に、この特則は移送が認められてしまった場合などの、やむを得ない時にのみ使うのが得策です。むやみやたらに使うのは、控えた方が良いでしょう。

 では次回は、クレジット会社のライフの最近の状況についてです。

2月 07 2011

SF・ライフ・ヴァラモスの移送申立(前編)

 本日はSFコーポレーション・ライフ・ヴァラモスの過払訴訟における移送申立についてです。最近は弁護士や司法書士に頼まずに自らで訴訟を行い過払請求をする人も増えてきましたが、移送申立が行われることによって、一般人が過払訴訟を行うことが以前よりも難しくなったと思います。以下、理由を説明しましょう。

 最近、貸金業者の過払請求に対する抵抗が激しくなっているのは今までにも何度か、ご紹介してきましたので、ご存知の方も多いと思います。その中でも特に激しい抵抗を示しているのが、上記の3社です。(ライフは、つい数ヶ月前までは激しい抵抗はしていませんでした。最近の過払情勢は本当に短期間で変化するという良い例だと思います)

この3社は過払訴訟を起こすと、かなりの確率で移送申立をしてきます。通常、過払訴訟は請求者の住所地にある裁判所に提起します(義務履行地と言います)。ところが貸金業者側が裁判所の場所にクレームをつけてくることがあります。これが移送申立と呼ばれるものです。

移送申立では以下のような説明がなされます。「請求者の住所地の裁判所で審理するのは正しくない、正しくは貸金業者の本店所在地の裁判所で審理されるべきである。」というものです。そして、その根拠になっているのが契約書に書かれている合意管轄と呼ばれるものです。

ほとんどの場合、貸金契約には合意管轄条項が含まれています(お金を借りる人は気が付いていないと思います)。この条項では、「もし契約上のトラブルがあった場合は貸金業者の本店所在地の裁判所で審理する」と書かれています。要は貸金業者に一方的に有利に書かれている条項なのです。

しかし、ほとんどの人が合意管轄条項の存在そのものを知りませんし、例え説明されても拒否することは事実上、不可能です。何故なら、拒否してしまったら、お金が借りられなくなってしまうからです。契約とは本来、双方の自由意志に基づいて結ばれるものですが、貸金契約の場合は借りる側は貸す側の条件を呑むしかありません。ここが問題なのです。

にもかかわらず、SF・ライフ・ヴァラモスといった業者は最近、移送申立を頻繁に出してきます。もし、こんなものが認められてしまったら、地方在住の依頼者は事実上、過払訴訟をあきらめなくてはならなくなります。何故なら、ほとんどの業者の本店は東京や関西にあり、裁判をする為には東京や関西まで出掛けていかなくてはならないからです。(弁護士や司法書士に頼んだとしても、交通費は請求されるでしょうから同じことです)

ですから、この3社を相手にする場合は、過払訴訟で絶対に移送申立を認めないように裁判所に働きかける必要があります。冒頭で一般人が訴訟をするのが難しくなったと言ったのは、これが理由です。一般人が貸金業者の移送申立に対抗するのは、なかなか大変だと思います。

 では、どのような対抗手段があるか、次回、説明しましょう。

2月 02 2011

過払調停の問題点

 本日の話題は過払調停です。

 債務整理に関心のある人は調停と言えば、一般的に特定調停を思い浮かべるでしょう。特定調停とは弁護士や司法書士の行う任意整理を裁判所を介して一般人でも行えるようにと始まった手続です。

当初は費用の安さも手伝って特定調停は非常に件数を伸ばしていましたが、ここ数年は減少傾向にあります。その最大の理由は特定調停では過払金の請求が出来ないということにありました。

特定調停が始まった頃には、まだ過払金の請求は一般的なものではありませんでした。ところが最高裁判所の判決が出てからは過払金請求が一気に広まって、過払金請求の出来ない特定調停に以前ほどの魅力がなくなってしまったのです。

 その代わりに激増したのが過払金請求訴訟です。簡易裁判所及び地方裁判所における過払金請求訴訟は増加の一途をたどり、ついには増えすぎて処理できないと裁判所が悲鳴を上げるほどになりました。

そこで裁判所が新しく考え出したのが過払調停という制度です。これは、本来は訴訟にするか調停にするかは裁判所に書類を提出する時に本人または代理人が決めることなのですが、その常識を覆して、もともと訴訟として提出された場合でも裁判所の判断で調停に変更されるというものです。(事前に電話で調停に変更して良いか聞いてくれる裁判所もあります)

 この制度の何が問題かと言うと、まず、裁判所や裁判官によっては本人の意向を無視して強引に訴訟を調停に変更してしまう場合があることです。例えば私の地元である名古屋地方裁判所で実際にあった出来事ですが、本人が「調停ではなく訴訟で進めて欲しい」という上申書を提出していたにもかかわらず認められずに調停に変更されたことがありました。(もちろん書類は訴訟で出しているのです)

では何故、過払請求は調停ではダメなのかと言うと、いくつか理由があります。その一番の理由は何と言っても和解金額が下がるケースが多いということにあります。(これは国家権力が過払金請求者の権利を侵害しているとも考えられる訳で非常に問題だと思います)

どうして金額が下がることがあるのかと言うと、率直に言って調停委員が貸金業者から甘く見られているからです。調停とは裁判所から指定された調停委員が取り仕切る手続です。調停委員は過払金請求の専門家とは限りません。我々、司法書士のように最新の貸金業者の状況や和解の適切な基準などは知らない人が圧倒的に多いのが実情です。そして調停委員が詳しくないということを相手方の貸金業者が知っているというところが問題なのです。

当然、貸金業者は司法書士や弁護士に対するよりも低い和解金額を提示する傾向があります。最近は専門家に頼まずに自分で過払訴訟を出す人も増えてきていますが、こういう人達にとっては過払調停は脅威だと思います。一般人が裁判所に行って調停委員から「この金額が妥当だから、この金額で和解しなさい」と言われたら、果たして断れるでしょうか。ほとんどの人は和解基準が、どの程度か分かりませんので承諾してしまうでしょう。

もう一つの問題点は時間が余分にかかるということです。調停になった場合、まず訴訟外で和解交渉をまとめることが難しくなります。貸金業者も調停になったら安く決着する可能性があるので、事前に交渉しなくなります(訴訟の場合は、ほとんどの業者が弁論期日前に電話をかけてきます)。

あと、調停の場合は最低でも1時間は裁判所に居なければなりません。これは最低ラインで、ひどい時には2時間以上も調停室に閉じ込められるケースがありました。調停の場合、ほとんどの業者は裁判所に出てきません。では、どうやって交渉するのかと言うと、調停委員が裁判所から直接、業者に電話をかけるのです。ですから、調停室には必ず各部屋に電話が設置されています。そして、困ったことに、この電話が非常にかかりにくい業者があるのです。例えばプロミスなどは、かけても常に話中で、つながるまでに1時間近くかかる場合があるのです。そうすると調停室に入ってから交渉が始まるまでに無駄な時間が膨大に発生することになります。

 このように、いろいろと問題点が多いのが現状の過払調停です。もし、選択することが可能な裁判所だったら調停を選択しない方が無難でしょう。強制的に調停に変更になった場合は、自分の気に入らない金額なら絶対に、まとめないという覚悟が必要でしょう。

 

 

 

1月 11 2011

アイクカードサービス

 アイクカードサービスという会社を、ご存知でしょうか。「アイク」と言う名前を聞いたことがあると言う方はあるかもしれません。今はCFJと呼ばれている外資系の中堅消費者金融の合併前の商号の一つが「アイク」でした。(アイク、ディック、ユニマットが合併してCFJとなりました) しかし、アイクカードサービスは同じシティグループの系列ではありましたが、別会社になります。

何故、過去形を使ったかと言うと、現在はシティグループを離れ、というか現実には経営悪化の為にシティグループから見放され、独立系となっています。

経営が悪化しているところに系列会社が手を引いてしまった訳ですから、ますます経営状態が悪くなるのは当然の成り行きでした。今や、この会社は過払金の請求をしても全く支払ってきません。何と裁判で勝訴判決を取っても、ふてぶてしく、「1割くらいしか払えません。不満があるなら、差押えでも何でも自由にして下さい。どうせ取るものありませんから」と開き直っています。

 実は、こういう会社が一番、困るのです。他にも似たような会社としてクラヴィス、ヴァラモス、アペンタクルなどがありますが、本当に支払う金が無いのか、それとも単に隠しているだけなのか、こちらからは調べようがないからです。

これらの会社に比べれば、武富士の方が、よほどマシだと言えるでしょう。何故なら武富士は法的な倒産手続を取っている訳ですから(全く問題が無い訳ではありませんが)裁判所の審査があります。裁判所が審査の結果、財産はこれだけですから分配します、と言われたら従うしかありません。少なくとも会社が勝手に、「これだけしか払えない」と言っているよりはマシだと言えるでしょう。

だから、アイクカードサービスのような会社は非常に悪質だと思う訳です。何故なら、本当に会社が苦しいのなら本来は倒産手続に入らなければならないはずだからです。

 しかし、このような問題のある会社が、いくつか存在するのが残念ながら現在の貸金業界です。今のところ、これらの会社から有効に取り立てる決定的な方法は見つかっていないのが現状です。(もちろん本当に、お金が無いのかもしれません。しかし、それなら武富士のように倒産手続を取るべきでしょう) 

 

11月 15 2010

シリーズ 最近の状況⑧ クレジット会社

 ご無沙汰しておりました。本日はクレジット会社の状況について説明しましょう。

 消費者金融が軒並み経営状態を悪化させて過払金の支払いが減額になっている状況で、クレジット会社に関しては、まだ救いがあるようです。

クレジット会社の経営も決して良くはありませんが、まだ過払金の大幅な減額に至っている会社は少ないようです。クレジット会社の収益源にはショッピングなども含まれていますので、この辺りも消費者金融に比べてマシな原因かもしれません。

従って、クレジットのキャッシングで長期間の取引がある人の過払請求は、今なら、まだ間に合うと言えるでしょう。それでもアイフルの子会社であるライフなどはアイフルの経営不振の影響を受けて減額傾向が出てきていますので注意が必要です。

クレジット会社で取引が長ければ過払いになりやすい会社(要は過去の利率が高かった会社)には、ニコス(旧日本信販、旧UFJカード等)、セディナ(旧セントラルファイナンス、旧オーエムシーカード等)、イオンクレジット、オリエントコーポレーション、UCS(旧ユニーカード)、クレディセゾンなどがあります。

一方、利率が元々低くて過払いになりにくい会社(または過払いにならない会社も含みます)としては、オリックス、ジャックス、楽天、旧UCカード、旧DCカード、三井住友カード、UFJカードなどがあります。

 クレジット会社は普段の買物やETCカードなどで使用している為に、せっかく長期間の取引があるにもかかわらず、過払請求をためらっている方が多勢います。こういう人達の為に私は、ご自身による取引履歴の請求を提案します。現在は法律が整備されていて、名義人から直接、取引履歴の請求があった場合、会社は応じなければなりません。これは法的義務になります。相手が消費者金融だと請求をためらう人もいるかもしれませんが、クレジット会社なら消費者金融よりは頼みやすいのではないでしょうか。(もちろん消費者金融でも頼んで全く問題ありませんが)。

届いた取引履歴は引き直し計算がされている場合と、されていない場合とがあります。されていない場合は、どこか計算してくれる事務所を探すと良いでしょう。私の事務所では計算サービスを行っていますが、他でもやっている事務所があるかもしれません。

取引履歴を請求することによって、自分が過払いになっているのかどうかが、まず明らかになります。そして、もう一つ、過払いになっていた場合、その金額が分かります。これはカードの使用をあきらめても過払請求をするかどうかを悩んでいる人にとっては非常に大きな判断の目安になると思います。

例えば、もし100万円以上の過払請求が可能だったとしたら、やっぱり請求してみようと言う人もいるんじゃないでしょうか。逆に5万円だったら、やっぱり止めておこうとか具体的な判断が出来るようになります。

結果が分からない段階で、あきらめてしまうのは、ひょっとしたら後で後悔することになるかもしれません。そういうことにならないように是非、一度、取引履歴の請求を考えてみて下さい。

 

« Prev - Next »