5月
11
2015
時効期間満了後の不当請求は、ギルドやアビリオ債権回収だけではありませんでした。何だか貸金業界も、なりふり構っていられなくなっているようです。今回、ご紹介するのは「株式会社シーエスジー」という債権回収業者です。
この業者は北海道が本拠地なんですが、私が受けた依頼では、非常に複雑な経緯で債権が移っていました。
元の債権はアイクという貸金業者です。アイクは、ディックファイナンス及びユニマットライフと合併してCFJという業者になります。この名前は結構聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
そして、CFJの債権がクリバースという業者に譲渡され、さらにクリバースの債権がシーエスジーに譲渡されました。
経緯は複雑ですが、明らかに消滅時効期間が満了しているにもかかわらず不当な請求をしているという点に関しては、ギルドやアビリオ債権回収と何ら変わりはありません。
債権回収業者は元の貸金業者よりも強引なところがありますから、シーエスジーもアビリオ債権回収のように、放置しておくと裁判に訴えてくる可能性もあります。ご心配な場合は、法律専門家の名前で時効援用通知を出してもらいましょう。
2月
25
2015
前回もお伝えしたアビリオ債権回収の不当請求ですが、何と裁判になっているケースもあります。裁判になった場合、より注意が必要なので、詳しく説明しましょう。
まず覚えておいて頂きたいのが、「裁判所は勝手に時効について判断してはくれない」という事実です。
例え時効期間が経過していても、裁判所がアビリオに対して、「あなたの請求している債権は既に時効なので請求できません」とは決して言ってくれないということです。
債権の消滅時効とは、あくまで、請求された側が「既に時効期間が経過しているから支払いません」と、はっきりと相手に向かって主張しないと(出来れば証拠の残る形で)効果が無いのです。
従って裁判所も、被告(民事訴訟における訴えられた側)が何も言ってこないと、そのまま原告(この場合はアビリオ)の請求を認めた判決を出してしまうのです。判決が一旦出てしまったら、次には強制執行が可能になり、アビリオが、被告の給料や銀行口座などを差し押さえてくる可能性があります。
民事裁判では、何も反論しないと相手の主張を全て認めたものとみなされることになっています。ところが、一般の人は裁判になじみが薄いため、裁判所から書類が届いても、そのまま放置している場合が意外に多く、後で取り返しがつかなくなることがあります。
裁判における反論には一定のルールがありますので、一般の人には難しいかもしれません。訴えられた場合、「○○までに答弁書を出すように」という期限もあります。5年以上取引が無いのに、アビリオに訴えられたことに気付いた場合は、一刻も早く法律専門家に相談に行った方が良いでしょう。
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http://www.hashiho.com/guild/
1月
29
2015
アビリオ債権回収という会社があります。
この会社は、大手の貸金業者だった三洋信販という会社の債権を譲り受け、新たな債権者として請求をしているようです。(他の貸金業者からも譲り受けている可能性があります)
しかも、悪名高いギルドと同じように、既に消滅時効期間が経過し、支払う必要の無い債権の請求までしているようなのです。(実際に相談に来られた方がいらっしゃいます)
この場合、注意する点も対策もギルドと同じです。念の為、繰り返しになりますが説明しておきます。
まず、以下の条件が成立していれば消滅時効が成立していますので、支払う必要はありません。
① 過去5年間、借入も返済も一切していない。
② 貸金業者から裁判を起こされたことがない。(支払督促や訴状などの裁判所から届いた書類は無い)
この二つを満たしていれば、消滅時効が成立している可能性は高いと思われます。
時効が成立していることが分かったら、その後、絶対に払わないことが肝心です。払ってしまうとギルドのところでも説明しましたが、後で消滅時効が主張できなくなる可能性があります。
このような業者は、支払うまで請求書を何度も送りつけてきたり、場合によっては自宅に訪問して取り立てに来ることもあります(相談者で自宅に来られたという人も何人かいます)。あるいは、裁判に訴えてくることもあります。
法的には、消滅時効が成立していても訴えることは可能です。しかも、裁判に訴えられた場合、何も反論せずに放置してしまうと貸金業者側の言い分が認められてしまい、取り返しのつかないことになる可能性があります。(本人には時効を主張する意思が無いと裁判官に判断されてしまうのです)
時効とは勝手に効果が出るものでなく、相手方に「時効が成立しているから支払わない」ときちんと主張して始めて効果が出るものなのです。
請求に対して不安を感じている人は、一度、法律家に正式な書面を送ってもらった方が安心できるかもしれません。今のところ、私が書面を送ってから、再度請求してきたケースはありませんから。
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9月
16
2014
以前に何回かブログ記事で取り上げた貸金業者ギルドの件ですが、ここへきて再び請求が活発になっているようです。懲りない業者ですね。会社の実情が、それだけ苦しいことの裏返しだとは思いますが、だからと言って放置しておくわけにもいかないので、繰り返しになりますが注意喚起したいと思います。
まず問題になっているのは、貸金業者に対する債務は5年で消滅時効にかかり支払う必要が無くなるのですが、この会社は既に時効にかかっている債務であるにもかかわらず、そのことを債務者に知らせずに請求書を送りつけてくるのです。(一応、法的には知らせる義務はありませんので、これ自体を違法だと責める訳にもいかないのです。)
困ったことに何割かの債務者は、強硬に請求されると支払ってしまう場合があります。(だいたい請求書には、支払わないと法的措置を取るという脅しの文句が書いてあります)。ところが支払ってしまうと、法的に時効が主張できなくなる可能性があるのです。この辺りの説明は一般の人には難しいと思いますので、とりあえず、「ギルドの請求どおりに一部でも支払ってしまうと、後になって、時効だから支払わないという主張が通らなくなる可能性がある」ということだけ覚えておいて下さい。当然、ギルド側はこれを狙っている訳です。
ならば無視して放置しておけば良いのかというと、最近はさらに悪質になり、貸金訴訟を本当に起こしてくるケースが増えているようなのです。訴訟を起こされた場合、裁判所から何らかの書類が届きます。この段階で司法書士などに相談に来て頂ければ良いのですが、万が一、裁判所から届いた書類を放置しておくと大変なことになってしまいます。
裁判制度では、「何も反論せずに放置しておいた場合、放置した側が無条件に負ける」という構造になっているのです。従って、この場合、本来、時効で支払う必要の無かった債務者が負けることになります。これは、裁判の構造が、「何も反論しなかった人は、相手の言い分を認めたのだ。」という仕組みになっているからです。もともと裁判制度自体が西洋の制度を取り入れて発達してきたものなので、構造が西洋的になっているのです。日本式の以心伝心は全く通用しないのが裁判制度なのです。
実際に事務所で受けた相談の中にも、裁判を放置していた為に負け判決を取られて、その結果、給料を差し押さえられてしまったという悲惨な例もありました。差し押さえられた段階では、もう裁判は終わっていますので、この段階で相談されても正直、打つ手がないということになってしまいます。
従って、裁判を起こされたら必ず反論しなければなりません。この場合は、「既に時効が完成しているので支払いません。」とはっきりと主張するということになります。
他にもこの問題を複雑にしているのは、ギルドという会社が吸収合併や商号変更などを繰り返してきた会社なので、借りた本人がギルドという会社名を認識しておらず、「自分は、こんな会社から借りた覚えは無い。きっと架空請求だろう。架空請求なら無視するのが一番だ。」と考えて放置した結果、先ほどのように負け判決が出て、給料の差し押さえをされてしまう場合があることです。
ギルドという会社は古くは3つの会社に分かれていました。
信和(スマイル)、山陽信販、ハッピークレジット(スカイ)の3つです。
これらが合併してトライトという会社が出来ました。このトライトが何と2回も商号(会社名)を変更します。
トライトは後にヴァラモスになり、ヴァラモスは後にギルドとなるのです。
このような複雑な変遷をたどっているために、過去に借りていたことがあったにもかかわらず、借りた時の名称とは異なるギルドという名前に覚えがない為に架空請求だと勘違いしてしまうケースが後を絶たないのです。
いずれにしても、多くの場合、きちんと法的な時効完成の主張をすれば請求は止まります。もし裁判を起こされていても、判決が出る前ならば、時効の主張をすればギルド側が負けるケースが大半だと思われます。これらの法的な主張を自分でやるのは心配だと思われる人もいるでしょう。その場合は、事務所にご相談下さい。
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10月
02
2013
債務整理、特に自己破産や個人再生を検討されている相談者が、よく勘違いしていることに、「家族の財産は、どうなるのか」ということです。
相談していると、家族の収入を必要以上に低くく見せようとしたり、家族の車や不動産について聞くと、口ごもったりする場合が珍しくありません。これは、「家族の収入や財産について話したら、それが影響を受けるんじゃないか」と心配されているからだと思いますが、実はそのような心配はいりません。
債務整理において、「保証人になっていない限り」家族の収入や財産が影響を受けることはないのです。よくドラマや映画などで貸金業者が怒鳴り込んできて、家族に支払いを強要している場面が出てきますが、あれは法律的には完全に違法行為になります。保証人ではない家族には支払義務は全くないのです。
しかし、ドラマや映画などの影響は思ったよりも大きくて、例えば破産を考えている人は、家族の財産も全部処分しなければならないと本気で思っていたりしますので、まずは、「そんなことはない」ということを説明するのに結構な時間がかかったりします。
だからと言って、「じゃあ、事前に家族に財産を移転した後に破産すればいいんじゃないか」と考える人がいるかもしれませんが、残念ながら、そううまくはいきません。
裁判所もその辺は分かっていますので、直前の財産移転には神経を尖らせてきます。裁判所の命令で、「移転した財産を元に戻すように」指示されることもあります。世の中、上手い話はそうないということです。
まあ、1年以上前に移転されている場合は、よほど大きな金額でなければ裁判所もうるさくはないと思いますが、移転日が申立日に近ければ近いほど、相当厳しくチェックされることは覚悟しておいた方が良いでしょう。
一方で、最初から家族のものだと明らかな財産については、問題なく債務整理の範囲外になります。そのことで迷っている人がいたら、ご心配は無用ですから、専門家に相談してみましょう。
9月
25
2013
「最初に借りたのとは違う業者から催促の電話がかかってきた」というのは、借金ではよくあるケースです。たいていの場合、債権譲渡といって、最初の貸金業者が債権(借金)をそのまま他の業者に売ってしまった結果、起こることです。
借金に対して不慣れな人の場合、債権譲渡をされると、「何だか怖い業者に転売されたんじゃないか。これから恐ろしい取立てが始まるんじゃないか。」と考えて、必要以上に怖がる人もいますが、実はそういうケースは少数派です。大半は譲渡された業者も普通の請求をしてきます。
貸した相手が勝手に変更されることに理不尽さを覚える人もいるでしょうが、債権譲渡自体は法律も認めている手続で、法的には全く問題はありません。ただ注意しなければならないのは、最初に借りていた業者がA社で、途中から突然B社から請求が来て「自分はA社から債権を譲り受けた。だからこれからはB社に払え」と言われてB社に支払った後で、A社から「B社なんて知らない。譲った覚えは無い。今までどおりA社に払え」と言われた場合、どうするのかという問題です。
結論から言うと、この場合はA社にも支払わなければなりません。二重払いになってしまうのです。それが嫌なら払った本人がB社から取り戻すしかありません。しかし、こんなことをするB社はどうせ詐欺ですから、今さら探してもまず見つからないでしょう。(A社とB社が裏で結託しているという最悪のケースもあるかもしれません)
では、どうすれば良かったのかと言うと、B社から請求を受けた時にA社に確認をとっておくべきだったのです。そこでA社が「確かにB社に債権を譲りました。」と言ったら(出来れば書面で、もらいたいところですが)、二重払いを避けることが出来ます。
一方、債権譲渡とは一見似ていますが、事実は全く異なる手続に債権回収代行があります。債権回収代行とは、債権は最初に借りた業者から全く変更されていませんが、取立てだけを他の業者に任せることです。ようするに債権回収のアウトソーシングです。
債権回収代行の場合、支払い先が元のままである場合と、回収代行業者が支払い先になっている場合と2種類あります。元のままなら二重払いの心配はありませんので問題ありませんが、支払先が回収代行業者の場合はやはり元の業者に確認を取った方が安全でしょう。ちなみに債権回収の代行は、サービサーと呼ばれる法務大臣が認可した業者か、弁護士か、認定司法書士しか法的に認められていませんので、それ以外のものがやっていたら違法だということになります。
あと、見かけは似ている制度が、もう一つあります。銀行ローンに付いている保証会社による代位弁済です。銀行でローンを借りると、それが住宅ローンであれ、短期融資であれ、たいていは保証会社が付いています。もし、銀行ローンが払えなくなった場合、それらの保証会社が肩代わりして銀行に弁済し、それと同時に債権が保証会社に移転します。すると、その後は保証会社が請求していくことになりますので、見かけは債権譲渡に似ていますね。ただ、移転する業者が、あらかじめ決まっているところが異なります。
9月
20
2013
クレジットカードによるショッピングのリボルビング払いは、今ではすっかり定着しています。利用されている方も多いでしょう。しかし、これが借金と同じだという認識を持っている人は果たしてどの位いるでしょうか。
キャッシングの場合は直接現金を借りるので、誰でも借金をしているという自覚があります。しかし、ショッピングの場合は翌月一括払いの時は、通常は借金とは扱われません。これが勘違いの原因だと思われます。
今まで翌月一括払いしかしていなかった人が、何らかの理由でリボルビング払いを選択した場合、「ショッピングなんだから借金とはならないだろう」と考えてしまうことがよくあるのです。
それで破産や再生の相談を受けている時に、ショッピングのリボルビング払いを申告するのを忘れてしまう依頼人さんがたまにいます。あとから気付いて手続が遅れてしまったというケースが現実にあります。
破産の場合は申告を忘れたまま手続が進んでしまうと、せっかく破産をしたにもかかわらず、最悪の場合、そのカードに関しては借金が残ってしまうことになります。。
また、破産や再生では官報広告がなされます。官報は政府発行の広報誌ですが、一般人で見ている人はほとんどいません。少なくとも同業者を除いた私の知り合いでは、官報を見たことがあるという人を今のところ知りません。従って、知り合いが一般人であれば、ばれる心配はかなり低いと言えます。
しかし金融機関は官報を良く見ています。彼らは自分が貸している相手が破産や再生をしていないかをチェックしているのです。従って官報を見るのが仕事の一部になっている訳です。
過去の事例で、依頼人自身が申告を忘れた債権者がいて、そのまま個人再生を申し立てたのですが、裁判所が官報広告をした時点で申告していなかった債権者から、「ウチはこの人に貸しているけど、裁判所から何の通知も来ていない。どういうことですか。」と電話がかかってきたことがありました。こういうことが起こる可能性があるので、借金として扱われるのかどうかは、とても大切なのです。
この記事を読んでいる破産や再生を検討している皆さんは、「ショッピングのリボ払いは借金になる」、ということをよく覚えておいて下さい。ちなみに携帯電話の未払いなども同様に借金として扱われます。
9月
05
2013
最近、債務整理の相談に来られる方の特徴として、消費者金融からの借入の割合が減っていることです。
以前は、相談者の大半が、借入の半分以上を消費者金融が占めていました。借入全部が消費者金融という人も珍しくありませんでした。
ところが最近は、総量規制の影響もあってか、めっきり消費者金融の割合が減り、代わりにクレジットと銀行ローンが増えています。
先日ついに、借入が300万ちかくあるのに、消費者金融がゼロという相談者がいました。私の記憶では、個人の債務整理で、住宅ローンの保証人になっていたケースなどの特殊な例を除けば、これだけの金額を消費者金融の借入なしというのは無かったように思います。
このブログでも度々指摘してきたように、現在は総量規制が存在しますので、破産や再生になるような本人の収入を大きく上回るような借入は、かなりの割合でクレジットショッピングや銀行ローンがからんでいるのです。
それにしても、この仕事をしていると、かつて隆盛を極めた消費者金融の没落は予想以上です。私が開業した頃は、電話帳で消費者金融の項目を引くと、数十ページもの分厚い広告が載っていたものです。「こんなにあるのか!」と当時の私は驚いたものでしたが、今や生き残るのは数社なんじゃないかと思えてきます。
これで平穏になったかというと、やはり世の中は単純ではなくて、代わってクレジットや銀行がショッピング枠や貸出を増やしているようです。資金需要がある限り、どこかで貸す人がいる訳です。
むしろ、クレジットで買った商品を換金してお金に換えるような手法も増えてきていますので、こんな手法でなければ借りられないのなら、以前よりも良くなったとは言えないのでは、と思います。
そろそろ総量規制についても考え直してみる時期に来ていると思うのは私だけでしょうか。
8月
06
2013
アイフルが最近、消滅時効の主張に対して厳しい対応をしているようです。昔からこの業者は、やっかいな反論をしてくることで有名でしたが、これだけ消費者金融業界が不況になっても、その体質は変わる気配がありません。(むしろ不況になったことによって、より強化されたのかもしれませんね)
具体的には、最終取引日から5年以上経過して、途中、裁判上の請求などがなければ通常は消滅時効が成立し、司法書士が消滅時効の援用通知を送付すれば、それ以降は業者の請求は止まるのが、今までのパターンでした。アイフルも例外ではありませんでした。
ところが最近は、「債務者が途中で債務承認をしているので、消滅時効は中断している。よって、未だ時効ではない。」という反論をしてくるようなのです。また、この反論を裏付ける為に、債務者との会話記録なるものをアイフルが用意していて、「○年○月○日○時○分に、債務者と以下のような会話をした」という詳細なものが出てくるようです。恐らく電話などの記録なのでしょう。大手の消費者金融は電話の内容を録音していることが多いですから、そこから作成しているとすると、これは相当に有力な証拠になる可能性があります。
もし上記のような証拠が裁判上で実際に出てきたら、これは消滅時効の主張は通らない可能性は充分にあります。そういう場合は、利息制限法に引き直した後の債務は支払わざるを得ないことになります。
こうなった場合、個人再生や自己破産などの手続で債務を圧縮することも検討した方が良いでしょう。会話の記録を取られてしまった以上、仕方がありません。他にも助かる手段はあるわけですから、プラスに考えていきましょう。
7月
24
2013
最近では、自宅が夫婦の共有名義になっている場合も珍しくありません。この場合、夫が住宅ローンを滞納したら妻にも支払義務はあるのかという質問を、たまに受けます。
一見、共有名義になっているんだから妻にも支払義務はあるように考える人も多いのですが、実は共有か単独かは支払義務には関係ありません。大切なのは住宅ローン契約書の債務者または保証人の欄に妻の名前が書かれているかどうかです。
一般的には共有の場合、妻も連帯債務者として名前が書かれている場合が多いかと思いますが、必ずという訳ではありません。もし、妻の名前が債務者にも保証人にも登場していなかったら、妻には支払義務は発生しません。
ならば、妻は何も心配がいらないかというと、夫の滞納が長引いた場合、自宅が競売か任意売却となり、共有不動産を失うというデメリットは当然あります。
この場合、法律上は妻は物上保証人という立場になります。物上保証人とは他人の債務の担保としては財産を提供することを言います。この場合、妻は共有不動産という財産を、夫の債務の担保として提供したことになります。物上保証人は債務者ではありませんので、債務の支払義務はありません。ただ、担保として提供した物を失うだけです。
では妻は失った分は、あきらめなければならないのでしょうか。
法律上は、夫の債務を妻の不動産で支払った形になりますから、夫に対して請求権があります。これを求償権と言います。ただし現実には、住宅ローンを滞納する事態になったということは、夫に支払能力は無いのが実情でしょう。従って、あきらめるケースが大半だと思います。むしろ、それ以上の支払義務が無かったことを喜ぶべきでしょう。
以上は、あくまで法律上の話です。実際には、夫婦の問題ですから、協力して解決される方が多いです。