司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

8月 19th, 2009

8月 19 2009

シリーズ 過払金④ 取引の分断(2)

 ご無沙汰しておりました。今回は「取引の分断」の2回目です。過払請求の時に最も問題になる「分断と時効」について説明しましょう。

 さて、取引の分断が認められると、債務者側にとって、計算上、非常に不利になるという話を前回にしました。(忘れた方は前回のブログを読み直して下さい) ところが、前回に説明したよりも、もっと悪いケースがあるのです。それが、分断されて当初の取引が時効消滅してしまう場合です。

具体的に例をあげて説明してみましょう。例えば、平成3年から取引を始めて平成10年に完済したとします。3年間の空白期間があり、平成13年から現在まで取引を続けていたとしましょう。

この場合、取引が続いていたと判断された場合(分断していなかったと判断された場合)、合わせて15年間の取引があったことになり、ほぼ過払いは間違いないでしょう。過払いの金額も相当な高額になるものと思われます。

しかし、分断された取引だと判断された場合、結果は全く違ったものになります。まず最初の平成3年から10年までの取引は、完済した年が平成10年になりますので、完済してから現在まで11年たっています(今は平成21年です)。ということは、完済して10年で過払金請求権は時効消滅しますので、当初の7年間の取引は無かったことにされてしまうのです。そうすると、15年もあった取引期間は一挙に8年に短縮します。いかに影響が大きいか、お分かりになったでしょう。

15年が8年になったら、過払金の金額は激減します。それでも、まだ過払いになればマシな方です。「シリーズ 過払金①」でも書きましたが、8年だと過払いになっていない人も中にはいるのです。こんな場合、「過払いを返せ」と訴訟を起こしたら、逆に支払うハメになった、なんてことが起こりうる訳です。(実際に、こういう目にあって困っている人が全国レベルでは結構いると思います)

 要するに、取引の分断がある場合は、最初の完済は、いつだったのかは常に押さえておかなければならないポイントです。最初の完済が10年以上前の場合は、過払金の額が大幅に減るか、場合によっては過払いでなくなる時もあると覚えておきましょう。

ただ勘違いしないで下さい。完済して現在は取引をしていない場合は、金額は減っても必ず過払いにはなります。

 取引の分断について、だいぶ分かってきたんじゃないでしょうか。では次回は、どういう場合に分断と判断されてしまうのか、を説明したいと思います。