8月 06 2009
シリーズ 過払金③ 取引の分断(1)
今回は過払金を請求する時に、今、一番の問題になっている取引の分断についてです。これは非常に大きなテーマなので、何回かに分けて説明したいと思います。
さて、まずは「取引の分断」とは何でしょうか。これは、比較的長い取引の途中で完済したことがあって、しばらく取引の無い空白期間があり、その後、再び取引が始まった場合のことを言います。
途中の空白期間は1回だけの場合もあれば、複数回ある場合もあります。いずれの場合も取引の分断が問題となります。
では次に、「取引の分断」は何が問題なのでしょうか。これは、もし分断した取引だと判断された場合は、過払金の計算が債務者にとって非常に不利になってしまうからです。
どのように不利になるかを、具体的に説明しましょう。説明を分かりやすくする為に、途中の空白期間を1回と仮定します。例えば次のような事例で考えてみましょう。
10年前(平成11年)から取引が始まって5年間取引を続けた後で完済しました(平成16年に完済)。その後、1年間は全く取引をせず放置していましたが、平成18年に再び同じ業者から借り入れ取引が始まりました。そして現在(平成21年)も取引をしているところで支払いが苦しくなり司法書士に相談しました。
以上の事例の場合、取引を次のように3つに分類できます。まずは平成11年から16年までの5年間が第1取引です。次に、平成17年の1年間が空白期間になります。最後に平成18年から現在までの4年間が第2取引となります。
要するに第1取引と第2取引を合わせるとトータルで9年間の取引がある訳です。シリーズ過払金①でも説明したとおり、9年の取引期間は過払いの可能性が極めて大きくなります。今回の事例でも過払いだったと仮定します。過払いの金額は60万円としておきましょう。
ところが分断した取引だと判断された場合、第1取引と第2取引は、それぞれ別の独立した取引だとみなされます。具体的には次のような計算になってしまいます。
まず、第1取引は一旦完済してますから、第1取引だけで考えると必ず過払いになっています。しかし、期間は5年しかありませんから過払いの金額は40万円としておきましょう。
一方、第2取引だけを考えると、第2取引は司法書士に依頼する直前まで取引をしていた訳ですから、完済はしていません。更に期間は4年しかありません。期間が短く完済もしていない訳ですから、第2取引は債務が残ってしまう確率が極めて高いでしょう。要は過払いになっていない訳です。ここでは、30万円の債務が残ったことにします。
ここで先ほどの第1取引の過払金40万円と第2取引の残った債務30万円を相殺します(過払金と残った債務を差し引きます)。そうすると過払金10万円が残ります。
この結果を取引の分断をしなかった場合(9年間の取引と見た場合)と比べてみて下さい。60万円と10万円ですから、かなりの金額の差になりますね。
驚かれた人も多いと思いますが、実は、これはまだ良い方なのです。例えば、第2取引で残った債務が第1取引の過払金よりも多かったら、どうでしょうか。要するに過払金が30万円で、残った債務が40万円だったとしたら、何と過払いだと思っていたのが、10万円支払わなければならなくなるのです。
今回は仮定の金額なので実際には色々なパターンがありえます。しかし、どんなパターンでも変わらないことが一つだけあります。それは、「分断をした場合は、しなかった場合に比べて必ず債務者に不利になる」という事実です。
最近ネットを検索していると過払金請求を自分でやろうというサイトが目に付きます。そういうサイトを見ていて思うのは、この取引の分断について、あまり説明されていないということです(全く説明されていないものもあります)。このテーマは実際に請求をする時に業者が最も強く主張してくる部分です。当然、業者は自分たちに有利なように分断した計算を主張してきます。自分で請求しようと思ったら、このテーマは避けて通れないと思います。サイトを見て自分で請求しようしている人は、このことは覚えておいた方が良いでしょう。
では業者と戦うには、どうすれば良いかは後ほど説明することにして、次回は、分断を主張された場合の最悪のケースである「時効と分断」について取り上げます。









