司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

10月 15th, 2009

10月 15 2009

シリーズ 過払金? 取引の分断(5)

 さて、本日はクレジットカードの場合の取引の分断についてです。

 今まで取引の分断は業者が非常に争ってくる部分であり、「分断している」と判断された場合は債務者に不利になるという話をしてきました。しかしながら、クレジットカードの場合は上記のような心配をする必要が、ほとんどありません。要するに取引の分断に関しては、クレジットカードの方が対処しやすいということになります。以下、理由を説明しましょう。

 取引の分断で争いになるポイントは、空白期間の前の契約(第1契約)と、後の契約(第2契約)が共通の1本の契約であるかどうかという点にあります(詳しくは過去のブログをご覧下さい)。消費者金融の場合は、この点を証明するのに苦労する訳ですが、クレジットカードの場合は証明が非常に容易なのです。むしろ、クレジット会社の方が、「1本の契約ではない」と主張するのが難しいのです。

具体的に説明しましょう。クレジットカードは消費者金融のカードとは違って、更新することはあっても再発行することは、まずありません(失くした場合は別です)。これが非常に重要なのです。例えば、クレジットのキャッシングで完済して空白期間があったからと言って、次に借りる時には前と全く同じカードを使用しています。もちろん有効期限が切れてカードが更新されている場合はありますが、更新されて送られてくるカードは有効期限が延長されているだけで以前のカードと同じものです。更新の時点で窓口に訪れて新たに審査をしたり、免許証で本人確認をしたり、申込書や契約書を新たに書いたりすることは、まずありません。従って、例え空白期間があっても、1本の契約が続いていると主張しやすくなる訳です。裁判所もクレジットカードの場合は、基本的に1本の連続した契約であると判断する場合が、ほとんどです。クレジット側が、この判断を覆すことは非常に困難でしょう。

 しかし、だからと言ってクレジット会社が黙って1本の契約を認めてくるとは限りません。相手が素人だったり、経験の浅い司法書士や弁護士だったりしたら、分断を強硬に主張してくる可能性は充分にあります。この辺りは専門家の経験のレベルを計るのには良い材料かもしれません。

いずれにしてもクレジットカードの取引に関しては空白期間があっても過払いが認められやすくなっている訳ですから、キャッシングの取引が長い方は過払いの可能性を探ってみた方が良いでしょう。消費者金融の影に隠れてクレジットの過払いを見逃している方は結構います。一度、確かめてみて下さい。

 では次回は、「悪意受益者の利息」について説明します。