司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2010年4月

4月 30 2010

シリーズ 司法書士事務所の見分け方⑦ 面談(3)

 本日は面談の内容についての私の意見です。

 面談の内容で私が最も大切だと思っているのは、その時点で予想されるデメリット(マイナス部分)について説明するということです。依頼人と専門家の間の、ほとんどのトラブルは、このデメリットを説明していなかったことで発生していると思います。

例えば、よくあるトラブルとして以下のようなものがあります。

①任意整理で事故情報について聞いていなかった。(債務が残る任意整理では事故情報に載ります)

②過払金が必ず発生していると言われたが取引履歴が届いて計算してみたら過払いではなかった。

③処理スピードが早いことを強調していたのに頼んでみたら半年以上かかった。話が違う。

④過払金は満額取り戻すと言っていたのに、元金以下の金額で和解された。

以上が最近多いトラブルだと思いますが、いずれも事前に説明を受けていれば苦情にはならなかったでしょう。

中には、きちんとデメリットを説明すると、「そんなはずはない」とか、「それは、お前の腕が悪いからだ」とか言ってくる人が一部います。こういう場合は依頼する側にも問題があるケースですが、多数派ではありません。

もちろんデメリットを説明することで依頼を止めてしまう人もいます。これは仕方がないでしょう。デメリットの説明に消極的になる事務所は恐らく、これを嫌がっているのだと思います。しかし、一時的に気持ちの良い思いをしたとしても、結果として、どちらが信用できる事務所でしょうか。このブログを読んでいる皆さんも良く考えてみて下さい。

ただし、ここに書いたデメリットの説明は、あくまで予想できる範囲内のことです。デメリットの中には予想外のこともあります。特に最近は業者の経営状態が悪化している為に、業者が短期間に態度を変更してきます。2ヶ月前に通用したことが今月は通用しなくなったということが現実に起こっています。これは専門家の責任ではありませんので、どうか皆さん勘違いしないで下さい。(業者が倒産した場合も予想できないケースに含まれるでしょう。今や、ほとんどの業者が倒産しても、おかしくない状況なので、怪しいと言えば全ての業者が怪しいのです。しかし、正確に何月に、どこどこの業者が倒産するということを予測することは不可能です。)

いずれにしても、説明を聞いてみてメリットばかりしか言わない事務所は要注意だと思います。(これは、そのまま広告・宣伝にも言えることです)

4月 20 2010

臨時ニュース 過払返還の際の事故情報の廃止

 以前、お伝えしました株式会社日本信用情報機構の発表による、過払金返還の際の事故情報登録(いわゆるブラックリスト)が昨日(4月19日)の時点で廃止されることになりました。

今まで、事故情報を気にして過払金請求をためらっていた人にとっては、またとない朗報となります。過払金請求の唯一のネックだった事故情報の心配が取り除かれた訳です。

 最近は業者の経営悪化などで過払金請求に関しては悪い情報が多かったのですが、久しぶりに良い情報となりました。事故情報で迷っていた人は、この機会に専門家に頼んでみたら、いかがでしょうか。

4月 16 2010

シリーズ 司法書士事務所の見分け方⑥ 面談(2)

 さて本日は久しぶりに前のシリーズに戻ります。面談(1)では「面談は必要か」というテーマで話をしました。今回は面談のやり方に焦点を当ててみたいと思います。

 面談のやり方で最初に問題になるのは面談の時間でしょう。面談に、どれだけの時間をあてているかということです。これは、あくまで私の意見ということになりますが、債務整理の場合最低でも30分、出来れば1時間くらいはかけるべきだと考えています。

事務所の中には10分や15分で済ませるところもあるようですが(特に大量に引き受けている事務所に多い)、私の経験上、それだけ短い時間だと依頼人との信頼関係が築きにくく、結果的に依頼人に不満な感情が残ってしまう場合があるように思います。

もし30分以内で終わらせようと思うと、事務所の用意した必要事項の質問で終わってしまい、依頼人が自ら話す機会は、ほとんど取れないでしょう。そうなると、依頼人としては「自分の話を聞いてもらえなかった」という不満が、どうしても残ってしまうのです。

もちろん、長々と自分の話を続けて、いつまでも話が終わらない人も中にはいますので、長ければ良いと言っている訳ではありません。あまりにも解決に関係ない話を長くされる場合は、専門家の判断で時間を短くする場合は、あってよいでしょう。要するに長いのも短いのも極端は良くないということです。

ちなみに私の場合は、任意整理・過払請求の時は約30分~1時間、自己破産・個人再生の時は約2時間~3時間くらいを目安としています。

あと、面談の最中に、やたらと依頼人を怒る専門家がいるようですが、これも程度によっては問題ではないかと考えます。

どうも一部の弁護士さんに、こういう方がいるようで、その後で私の事務所に来られて、怒られた時の文句をさんざん聞かされたことが何回かあります。もちろん、温厚な弁護士さんもいますから全てという訳ではありませんが。(何故か、この手の文句は弁護士さんが相手のことが多いです。やはりプライドが高いんでしょうか)

もちろん時と場合によりますから、依頼人を叱ることを100%否定する訳ではありません。例えば、「あなたは今のままで放っておくと本当にマズイことになるよ」と説得したい時や、「それは法的には無理です」と言っても全く聞かずに違法行為でも「やってくれ」と迫ってくるような場合は、多少きつい言い方になっても仕方がない場面はあるとは思います。しかし、債務整理に来る人を見下したような怒り方をする専門家のいる事務所は、避けた方が良いでしょう。

 次回は面談(3)として、面談の内容について説明します。

4月 09 2010

最近の任意整理事情

 本日は法定利息に引き直し計算をした後に債務が残ってしまった場合の、最近の業者の対応について話したいと思います。

 これについては、正直言って、各社とも相当に厳しい対応をしてきているというのが実情です。

背景には、今年の6月に完全施行される改正貸金業法に向けて貸金業者が経営の見直しを図っているという点があります。特に業者が神経をとがらせているのが、貸付を年収の3分の1に規制する「総量規制」です。

更に大量に発生している過払金請求が業者の経営を悪化させていますので、業者に余裕がなくなっているのも大きな原因でしょう。(だからと言って、過払金請求は正当な権利ですから、遠慮する必要はありませんが)。

最近の状況で特徴的なのは、過払請求の時にも指摘しましたが、以前は中堅・小規模業者に限られていた厳しい対応が、ついに主要業者にも波及してきたことです。主要業者は抱えている契約者の数が多いですから、影響が非常に大きいのです。

例えば、最近、問題になっているのが、「債務が残って分割払いになる時、将来利息のカットに応じない」というケースが目立ってきていることです。武富士・アイフルなどが最近、これを主張してきて、なかなか和解がまとまらなくなっています。

「将来利息カット」と聞いても何のことか分からない人もいるかもしれませんので説明しましょう。将来利息とは分割の和解を結んだ後で支払われる分割金に対して付けられる利息のことです。

今までは任意整理の際には将来利息のカットは暗黙の了解事項として業者は応じていました。従って、任意整理を専門家に頼むと分割金には利息が付かず、法定利息に引き直した金額を、そのまま分割回数で割った金額を払えば良かったのです。

ところが最近は主要業者でも武富士やアイフルは「分割の時は将来利息を付けろ」と言ってきます。プロミスも同じことを言ってきますが、ここは何ヶ月か粘っていると担当部署が変更になって、最終的には将来利息カットを認めてくれるようです。(それにしても以前に比べて交渉に時間がかかります)。

一般の人は、この話を聞くと、「専門家なんだから何とかならないのか」と思うかもしれません。しかし、この点に関しては業者が譲らない限り、どんな腕利きの専門家でも、どうしようもありません。何故ならば、法的には将来利息は付けなければならないものだからです。要するに、もし業者が裁判に訴えたら裁判所は業者の言い分を認めることになります。

では、何故、今まで業者は将来利息を付けない和解に応じていたかと言うと、余裕があったからです。経営に余裕があったので、やろうと思えばできたけれど、あえてやらなかった、ということになります。

しかし、最初に説明したように貸金業法の改正と、相次ぐ過払金請求の為に業者には昔の余裕が無くなりました。そこで、起こってきたのが将来利息カットには応じないという業者の態度です。

こうなってくると、法的には業者の言い分を否定することは出来ない訳ですから、債務が残った場合の選択は二つしかありません。一つは何としても一括で払う方法。もう一つは将来利息を付けてでも分割にする方法です。

一括で払うには、他の業者で過払金があれば、それを使います。それが無ければ親族に援助を頼むか、頼める親族がいない場合は一括で払えるまでお金を貯めるしかありません。

過払金で他の債務が返済できる場合は割と問題無いのですが、残った債務を過払金では支払えない場合は以前に比べて難しい状況になってきていることは事実です。

 では次回は久しぶりに前のシリーズ「司法書士事務所の見分け方」の続きになります。

 

4月 02 2010

シリーズ 過払金⑫ 最近の過払事情(3)

 本日は、武富士・アイフル・CFJの最近の対応について話をしましょう。

 まず、武富士の対応ですが一言で言うと、「全ての事務手続きが遅い」という印象です。例えば、過払いの交渉の為に電話をかけても、「まだ担当が決まっていませんので決まり次第、こちらから折り返します。」と言われ、その言葉を信用して待っていても、いつまでも電話がかかってこないとか、あるいは一旦、和解して決着した過払金の支払日目前になって電話がかかってきて、「お金が足りなくなったから支払日に払えません。遅らせて下さい。」と言われたり、かつての業界トップ企業とは思えない無茶苦茶な対応が目立ちます。過払訴訟に関しても、訴訟中に合意に達するのは珍しく、ほとんどが判決まで行ってしまいます。従って、支払われるまで非常に時間がかかると言うことです。その代わり判決を取った場合は利息も含めて満額を支払ってくれます。(あくまで今のところは、です)。ですから武富士には多少時間がかかっても判決を取りに行くのが良いと思います。支払時期に関しては、判決を取れば2~3ヶ月後、判決が無いと4~6ヶ月後くらいでしょうか。

 次にアイフルですが、武富士ほど事務が滞っている訳ではありませんが、ここも訴訟をしても、なかなか払いません。訴訟中の金額交渉だと何と過払元金の55%を主張してきます(このレベルで和解している事務所だったら止めた方が無難でしょう)。従って、ここも時間はかかっても判決を取るしかありません。しかし、判決を取れば武富士と同様に利息も含めて満額支払ってきます。(くどいようですが、今のところは、です)。支払時期は判決を取った場合は1~2ヶ月後くらいです。

 最後にCFJの対応です。ここは倒産するのではないかという噂が絶えない業者なので、多くの司法書士が、あまり粘らないで和解していた傾向があります。だいたい利息をあきらめて元金満額くらいで和解するのが標準だと思います。しかし、かなり前から倒産の噂が出ていた割には一向に倒産する気配がありませんので、試しに粘ってみたところ、利息の一部を上乗せすることが出来ました。本当に倒産するかどうかは結局、誰にも分かりませんので、私としては、今後は少し粘ってみようかと思っています。支払時期は2~3ヶ月後くらいです。

 これで、主要消費者金融に関しては一通り状況の説明はできたのではないかと思います。中小の業者に関しては、最早、「過払金が回収できたらラッキーだ」という気持ちでいた方が正解だと思います。大手が、このような状況ですから中小は更に厳しい訳で、あまり期待しない方が良いでしょう。そして何度も申し上げていますが、過払事情は頻繁に変化するということは忘れないで下さい。半年後には全く違う状況になっているかもしれません。その時には、また報告をしたいと思います。

 では次回は、過払いではなく、債務が残った場合の最近の状況について話をしたいと思います。