司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2011年8月

8月 29 2011

臨時ニュース SFコーポレーション倒産

消費者金融の倒産ラッシュが続いています。今回は、8月26日東京地方裁判所にてSFコーポレーション(旧三和ファイナンス)が破産開始決定を受けました。

最近では、消費者金融の倒産は珍しくありませんが、今回の特徴は破産であることです。今までは、クレディア・丸和商事の民事再生、武富士・ロプロの会社更生など倒産したといっても、会社を存続させる手続でした。しかし破産となると話は別です。SFコーポレーションという会社は解散して消滅することになります。

実はSFと言う会社は非常に悪質だった為に、今までに何度も債権者破産の申立をされていました。債権者破産とは会社ではなくて、会社に債権を持っている側(SFの場合は過払請求者)が、「この会社は債権(過払金)を払わないのだから既に破綻している」という理由で破産を申し立てることです。

ところが破産を申し立てられたSFは、その度に、どこからか金銭の都合をつけてきて一時的に過払金を払うことによって破産を免れていました。そして、ほとぼりが冷めた頃には、再び払わなくなるということを繰り返していたのです。(全く、あきれるほど、ケシカラン会社です) それが、ついに自ら破産を申し立てて開始決定が出された訳です。

破産となると、スポンサーを見つけて会社を存続させる民事再生や会社更生と違って、今あるSFの資産を処分して配当金を払うことになります。当然、配当金は微々たるもので、ほとんど期待できないと考えた方が良いでしょう。(その代わりSFという悪質な会社は、この世からなくなりますが)

まだ情報が入ってきたばかりなので、詳細なことが分かるまでに、しばらくかかるでしょう。追って、このブログでも報告していきます。

8月 24 2011

臨時ニュース ホームページ更新

ホームページを大幅に追加・更新しましたので、お知らせします。より充実した内容になりましたので、どうぞ、ご覧下さい。細かい更新も加えると、ほぼ全てのページに渡っていますが、特に大きく更新されたのが、以下のページとなります。

1 Q&A

Q&Aの数を大幅に増加しました。債務整理に関することでは、かなりの疑問に答えていると思います。増加に伴って、分野別に目次を分けて検索しやすいようにしました。知りたい項目に、すぐにたどりつけるようになっていると思います。

2 最近の業者の状況

過払金返還請求における最近の業者の対応について新規にページを追加しました。過払金返還請求のページからボタンをクリックして参照して下さい。各業者の対応の違いは興味を持たれている人も多いのではないでしょうか。参考にして頂ければ幸いです。

3 ブラックリスト             

債務整理を考える時に、どうしても気になるのがブラックリストに関することだという人は多いと思います。こんな人達の疑問に答える為にブラックリストに関しても新規でページを設けました。トップページの上部のボタンで閲覧できます。ブラックリストに関しての知識を深めて下さい。

4 家計相談

不景気が長引いています。家計が厳しい家庭も多くなっていると思います。こんな時に必要なのが家計の管理です。健全な家計に近づけるには、どうしたら良いのか。そんな疑問に、お答えする為に新しく家計相談の業務を始めました。ファイナンシャルプランナーの資格を持った専門家が、あなたの家計を診断して解決方法を探ります。詳しい内容はトップページの上部のボタンをクリックして参照して下さい。

他にも細かい改定をしておりますので、一度、ご覧になったページでも、もう一度、読んで頂ければ、きっと新しい発見があるでしょう。                  

 

8月 17 2011

裁判所の特徴④ 名古屋地方裁判所

地方裁判所は訴額が140万円を超えた場合の第一審の裁判所ですが、他にも簡易裁判所の判決に不服な場合に第2審として裁判をするところでもあります。

名古屋地裁は大都市に置かれていますので、かなりの数の裁判官が配置されていて部署もたくさんあります。部署のことを名古屋簡裁では係と呼びましたが名古屋地裁では部と呼びます。この部が名古屋地裁の場合、民事だけで10部もあります。(民事2部は執行専門なので、通常訴訟は扱いません)

しかも簡裁と違うところは、この部が更にイ、ロ、ハなどと呼ばれる係に分かれており、それぞれに裁判官が違うのです。また、これらの係が更に担当する書記官によってA、B、Cと分かれています。ですから、名古屋地裁の係属先を表す場合は、民事3部イA係などと宛先を書くことになります。(とても、ややこしいですね)

これだけ部署や係が、たくさんあると簡裁以上に係属する部署によって取り扱いにばらつきがあります。特に最近、問題があると思えるのは過払調停に関してです。名古屋地裁の場合、係属する部署によって半強制的に過払金請求が調停に回されてしまうのです。(もちろん普通に通常訴訟で受けてくれる部署もあります。しかし、前にもお話したとおり、こちらで部署を選ぶことが出来ません)

過払調停は特定調停とは違います(読者の方は勘違いしないで下さい。特定調停では過払請求は出来ません)。これは訴訟をするつもりで過払金返還の訴状を出したにもかかわらず、裁判所の意向で半強制的に調停に回されてしまう制度のことです。この制度に関しては私の回りにいる法律家で評価している人は、ほとんどいません。みな早急に止めるべきだという意見が大半です。

何故、これほど評判が悪いのかというと、最近の業者の状況を全く反映していないからです。例えば、今やかなりの数の業者が判決を取らないと回収が困難になっています。だとすると、そのような業者相手では話し合いを前提にしている調停では全く解決することは出来ません。結局、調停が不成立に終わって通常訴訟に戻されることになります。それなら、調停を行う意味は全く無く、むしろ時間の無駄ということになります。

もっと深刻な問題も起こっていて、調停が不成立に終わることを嫌がる調停委員が一部いて、そのような調停委員に当たった場合、訴訟になったら回収できる想定金額よりも、かなり低い金額で調停を結ばされてしまうというケースも報告されています。

では何故こんな評判の悪い制度を続けているのかと言うと、過払金請求が増えすぎた為に裁判所の負担が大きくなり、少しでも裁判所の負担を減らす為、というのが表向きの理由です。(仮に、この理由が本当だったとしても、国家機関が忙しいからという理由で国民の意向を制限することが許されるのでしょうか。そんなことを言ったら警察が忙しいことを理由にして捜査をしないことが許されることになってしまいかねません)

私は、これ以外にも、調停委員の多くは弁護士がやっていますので、裁判所による弁護士の仕事の斡旋という側面があるのではないかと疑っています。(もし、そうだとしたら、過払金請求者の負担によって、仕事を斡旋していることになりますから許せませんね)

そもそも国民の裁判を受ける権利は憲法によって保障されている権利です。国民が訴訟でやってくれと訴状を出しているのに、裁判所が国民の意向を無視して半強制的に調停に回してしまうのは明らかに問題があるでしょう。この点、名古屋簡裁の方が、まだ良心的で、簡裁では事前に調停を拒否した場合は最初から通常訴訟で進めてくれます。しかし、考えてみれば、簡裁の取り扱いは、ある意味、当然で、訴状を出した人が通常訴訟で進めて欲しいと希望を出しても聞きもせずに強引に調停に回してしまう、一部の名古屋地裁の裁判官の方が常識に反しているのです。

こういう問題がありますから、名古屋地裁に過払訴状を出す場合は、どこの部署に係属するかで非常に大きな影響を受けることになります。このような差は、本来あってはならないことですから、一刻も早く、過払調停制度は廃止されるべきだと思います。少なくとも名古屋簡裁のように当事者が拒否した場合は通常訴訟で行われるように改めるべきでしょう。

 

 

 

 

8月 08 2011

臨時ニュース 武富士その後④

武富士の会社更生手続の中で最も注目を浴びていた弁済率が先月発表されました。何とたったの3.3%です。かなり低いだろうと噂はされていましたが、現実に発表されると各方面で衝撃を与えているようです。(もっとも衝撃を受けたのは過払金請求者ですが)

この発表を受けて先月末頃から弁護士事務所や司法書士事務所、または個人で請求された人は個人の住所宛てに、続々と投票用紙が郵送されてきています。

この投票用紙に武富士の会社更生に対して賛成か反対か(厳密には投票用紙の記載は同意か不同意)を書いて返送することになります。そして、金額ベースで反対(不同意)が過半数になると武富士の会社更生は失敗に終わることになります。(反対した人の頭数ではないようです)

もし失敗になった場合、武富士に残された選択は破産しかなくなります。ようは武富士という会社自体が解散により消滅するということです。武富士が会社更生を申し立てたのは会社を存続させる為ですから、破産になるのは何としても避けたいでしょう。

ということで、投票用紙が送られてきてから間髪いれずに、武富士から各事務所に(恐らく個人にも)電話攻勢がかけられています。中身は、「破産になったら3.3%も受け取れなくなりますから、賛成に(同意)投票して下さい」というものです。また、投票用紙と一緒に同封されている書き方の見本にも同意の方に丸がうってあるという念の入れようです。(もっとも、この見本については弁護士有志からもクレームがついているようですが)

私の事務所にも複数の投票用紙が送られてきて、それぞれ依頼人に対し、「少しでも良いから回収したいのであれば賛成に、こんな低い金額なら武富士を懲らしめてやらなくては気が済まないという考えなら反対に、というのが投票の目安ではないでしょうか」と説明しました。

私は依頼人の回答は賛成の方が多いのではないかと予想したところ、見事に予想ははずれて何と9割以上の人達は反対と回答してきたのです。いかに武富士という会社が顧客から嫌われていたのかが、今回の投票で明らかになったような気がします。顧客との信頼関係を維持するような経営をしていたら、これだけ反対する人が多くはならなかったでしょう。

もっとも会社更生が決まるかどうかは金額の過半数だそうですから、今頃、武富士は高額の過払請求者にターゲットを絞って集中的に電話を架けていることでしょう。個人で請求している人は武富士からの電話に説得されてしまう人もいるかもしれませんので、最終的な結果に関しては未知数です。

武富士の結果は他の消費者金融も固唾を呑んで観察しているものと思われます。もし、成功した場合は、こんな低い弁済率で会社が存続できるのならと、追随する業者が出てくる可能性が高いでしょう。業者の倒産ラッシュに拍車がかかる恐れがあります。

一方、反対多数により武富士が破産に移行した場合は、他の業者も倒産手続に対して慎重になることでしょう。今後の貸金業界の動向に大きな影響を与える武富士の会社更生ですが果たしてどうなりますか、決定は秋頃の予定です。

 

 

 

8月 01 2011

差押① 差押は何故、必要か?

過払金請求に限らず、貸金請求や売買代金請求などの金銭を請求する訴訟を起こして勝訴判決を得たとしても、残念ながら全ての債務者(この場合、判決で負けた方を債務者と言います)が、おとなしく支払ってくれる訳ではありません。

多くの人は判決で勝ったら負けた方は支払うのが当たり前だと思っています。もちろん理屈では、その通りです。しかし、ここでちょっと考えてみて下さい。そもそも裁判になったということは、請求された側に素直に支払う気持ちが無いからこそ裁判にまでなったのです。それが判決で負けたからと言って、とたんに心変わりして素直に支払うようになるでしょうか。実際には、かなりの人が判決で負けた後も支払わないのです。

では、負けた方が支払わない場合、どうしたら良いのでしょうか。残念ながら警察が犯人を取り締まるように裁判所が負けた人から、お金を取って勝った人に支払ってくれる訳ではありません。判決で勝っただけでは裁判所は何もしてくれないのです。このまま放っておいたら泣き寝入りをしてしまうことになります。それを防ぐ為に強制執行、いわゆる差押という制度が用意されています。

判決で負けた人が支払わなかった場合、勝った人は裁判所に対して差押を申し立てることが出来ます。もちろん訴訟とは別の手続ですから新しく申立書などを書いて裁判所に手数料も納めなくてはなりません。しかし、この手続をすることによって負けた人の財産を合法的に差し押さえることが出来るのです。

それなら全ての人が判決を取って差押をすれば良いではないかと思った人もいることでしょう。実は、ここで多くの人が勘違いをしている重要なポイントがあります。それは、何を差し押さえるのかは裁判所は一切、考えてくれないし、探してもくれないということです。

もし、負けた人の住所と氏名だけを書いて差押の申立書を裁判所に出したら、裁判所から次のように質問されます。「この人の何を差し押さえるのですか」と。

要するに相手の財産の調査は判決で勝った人が自分で行う必要がある訳です。(調査に費用がかかったとしても、それはもちろん自腹です)ということは相手が、どこに財産を持っているかが分からない場合は、差押が出来ないことになります。こういう場合は、予測を立てて(簡単に言えば勘で)成功するかどうかは、やってみなければ分からないという前提で差押をすることも、よくあります。

ですから差押の成功率は決して高いとは言えません。裁判の多くが判決までいかず、和解で決着する最大の理由がここにあるのです。例え勝訴判決を取っても相手から全額を取れるかどうか分からない、それなら多少なりとも減額しても和解で終わらせようと考える訳です。裏を返せば、相手の財産が確実に分かっていて、いざとなったら、そこを差し押さえれば絶対に回収できると分かっている場合は、判決を取りにいっても良いということです。

差押の中で、よく使われるのが給料、銀行口座、売掛金などの債権執行と呼ばれるものです。一方、あまり使われないのが不動産執行、動産執行です。何故、そうなのかの説明は次にいたしましょう。