12月
22
2011
さて久しぶりに民事訴訟の基本の続きです。本日は訴えられた場合の被告の対応について話しましょう。
訴える側の原告は準備万端整えて、いざという覚悟で訴状を出します。従って、心の準備は充分すぎるほど出来ています。これに対して被告は、ある日、突然、訴状が郵送されてきます。もちろん、その前に内容証明郵便が来たり、原告や原告の代理人から電話などで請求されていることが多いので、突然というのは言い過ぎかもしれませんが、大半の人が実際に訴えられるまでは、「いくらなんでも本当に訴訟まではしてこないだろう」と、たかをくくっていることが多いものです。そういう意味では原告に比べて心の準備が出来ていないと言えるでしょう。
そこで最も、やってはいけない対応が放っておくことです。前回でも言いましたが、被告が何もしないで放っておくと原告の主張を全て認めたことになってしまいます(民事裁判における自白)。結果は、原告の全面勝訴で判決書が郵送されてくることになり、更に放っておくと次に差押が来る可能性が高いです。
従って被告が取るべき対応は答弁書を書いて裁判所に2通送ることです(裁判所の分と、原告の分の合わせて2通。1通は裁判所が原告に送ってくれる)。
原告と被告の双方に弁護士や認定司法書士がついている場合は、直送といって裁判所に1通、相手方に直接1通送ることが多いです。しかし、一方が一般人の場合は裁判所に2通送ることが多いです。
答弁書の内容は、だいたいが定型の書式で決まっています。ここで書くと長くなりすぎるので省きますが、簡単に言うと、「原告の請求を棄却する旨の判決を求める」ことと、原告の請求原因をとりあえず全て否認しておくことです。
ここで大切なのは、例え原告の言うとおりだなと思うところがあっても、とりあえず全て否認して構わないということです。ある意味、時間かせぎです。
正直な一般の日本人の感覚だと、ウソをつくことになるけど、裁判でそんなことをして大丈夫か、と思うかもしれません。しかし、裁判実務では良く行われていることです。裁判官も特に気にしません。
そもそも、裁判とは、必ずどちらかがウソをついているか、勘違いしているかなのです。双方が正しいということは、ありえません。にもかかわらず、お互いに自分こそが正しいと思っているから裁判になっているのです。従って、相手の主張を否定するのは、むしろ当たり前で、全部、認めるなら、原告は訴える必要は無いはずだし、被告は裁判になる前に支払ってしまえば良かったはずです。
また、被告は原告に比べて準備が出来ていないことが一般的なので、大半の被告は一回目の口頭弁論には出てきません。簡単に言うと、答弁書だけ出して1回パスできる訳です。(答弁書が提出されずに欠席すると自白になりますので、答弁書が出ていることが欠席の条件です)
こうやって原告に比べて準備不足の点を、パスした時間で埋めるのです。この時間を使って、一生懸命、作戦を練りましょう。
以上のようなことは、弁護士や認定司法書士では常識ですが、一般の人は、ほとんど知らないでしょう。だから、訴えられると、ひたすら、あわててしまって失敗することが多いのです。
12月
14
2011
順調に行くと思われた武富士の会社更生に危険信号が灯り始めました。予想外の展開です。
名乗りをあげていた韓国のスポンサー企業からの買収予定額の追加の入金が、ここにきて滞っているらしいのです。
何故、韓国のスポンサー企業の入金が滞ったのか詳しい事情は分かりませんが、一説によると、スポンサー企業自体が韓国国内で問題を起こしていて、そのことについて韓国で追及を受けており日本企業のスポンサーになっているどころではないという話しも聞こえてきています。(真偽のほどは分かりません)
いずれにしても、武富士にとっては予想もしない展開になっています。賛成多数で会社更生が決定してからは12月中に配当金を支払うと公言していたにもかかわらず、スポンサーからの入金が無い状態では最早12月の支払いは難しく延期は必至の状況です。そもそも延期したから支払える保証も無いのです。
配当金を支払うことが会社更生の条件ですから、武富士は新たなスポンサーを見つけなくてはなりません。果たして今から見つけることが出来るのでしょうか。
私の個人的な意見としては他の消費者金融に与える影響も考えると(過払金カットによる逃げ切りを許してしまうから)武富士には破産してもらいたいと考えていますので、ひょっとしたら破産に向かう可能性もあるのかなと期待してしまいます。
武富士に関しては全く余談を許さない展開になってきました。しばらく、武富士から目が離せません。
12月
05
2011
最近の過払金訴訟で貸金業者側がしてきた主要な反論が二つあります。
一つは、取引の途中で空白期間があった場合の取引の分断の主張、もう一つは、悪意受益者の利息に対して、当時は悪意だと考えていなかった特段の事情があるから、やむを得ない為に利息は支払わないという主張です。
上記2大反論のうち、悪意受益者の利息について、この度、最高裁判所が決着をつけました。結論から言うと、貸金業者は、きちんとした法定書面を交付していない場合、悪意ではないと考える特段の事情は存在しない。故に過払金に対する5%の利息は認められる、というものです。
この判決によって、今まで利息に関して、さんざん抵抗してきた業者も今後は支払う方向に向かっていくものと思われます。(もちろん、経営悪化の為に支払能力が無い業者は話が別です。こればかりは、どんな有利な判決が出ようと、どうしようもありません)
しかし、楽観は禁物です。今よりは支払いが良くなるとは思いますが、この判決だけで全ての利息が取れるようになるとは限りません。
例えば、今回は、きちんとした法定書面が交付されていない場合は利息は支払わなくてはならないと判決では言っていますが、裏を返せば、きちんとした法定書面が出ていた場合は支払わなくても良いという解釈も可能な訳です。(この反論は今後、予想されます)
法定書面には2種類あって、17条書面(契約書面)・18条書面(受取書面)がそれにあたります。法律では、これらの書面に返済期間と返済回数の記載が義務付けられていますが、実際には、これらの記載がされるようになったのは、ここ数年のことなのです。
従って、これらの記載がされる前に過払金が発生している取引ならば恐らく問題は無いと思われますが、これらの記載がされるようになった後に過払金が発生する取引の場合は業者の抵抗が予想される訳です。
まだ100%こちらの主張が通ると言う訳ではありませんが、今までよりは格段に良くなったことは確かです。貸金業者との争いは少しずつ前進する積み重ねの歴史でした。一朝一夕に事が進む訳ではありません。今回は素直に喜んで、利息の請求に努めていきましょう。