司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2012年1月

1月 23 2012

保証委託契約の保証人

ローンが払えなくなった時、「保証人に請求がいくのは困る」と考える人は多いと思います。しかし、ローン契約書に保証人の記載が無いと、ほとんどの人は安心してしまうのではないでしょうか。ところが、そういう場合にも思わぬ落とし穴がある時があります。それが本日のテーマ、保証委託契約の保証人です。

保証委託契約とは借主と保証人(保証会社であることが多い)が結ぶ契約のことです。文字通り、借主が保証人(保証会社)に対して保証してくれることを頼む契約です。

それに対して、良く知られる保証契約とは貸主と保証人が結ぶ契約なのです。借主は実は保証契約の当事者ではありません。一般的には借主から頼まれて保証人になることが多いので、多くの人は借主が保証契約の当事者だと勘違いしている場合が多いようです。

保証人が個人の場合は、保証契約のみのケースが多いと思います。一方、住宅ローンが代表ですが、高額で長期間のローンの場合は保証会社と借主が保証委託契約を結ぶことが一般的になっています。

実は、ここが問題なのですが、大元のローン契約自体に保証人がついていないにもかかわらず、保証委託契約に保証人がついている場合があるのです。

この場合、ローン契約書を眺めていても絶対に分かりません(ローン契約書には保証会社のことしか書かれていません)。しかも、保証委託契約による保証人への請求は、前回に説明した保証会社への代位弁済が行われた後でなければ起こりません。例え滞納していたとしても、代位弁済が行われる前の段階では銀行は保証人へ請求してきませんから(ローン契約に保証人が設定されていない以上、当然ですが)全く気が付かない訳です。(住宅ローンの場合、約6ヶ月間の滞納で保証会社へ代位弁済されるケースが多いようです)

このことから、住宅ローンが払えずに自己破産に踏み切った人が、しばらくして保証会社に代位弁済がなされ、その後、保証人に請求されてびっくりするということが起こりうる訳です。

従って、自分のローンに保証委託契約が付いているかどうか、付いていたら保証委託契約に保証人が付いているかどうかを、まず確かめることが重要だと言えるでしょう。

1月 16 2012

住宅ローン付き破産

住宅ローンが返せなくなってローン会社から督促が来ている、けれども給料が大幅に下がった、あるいは失業したなどの事情で今後も返せるあてが無い、そういった人は現在、増えていると思います。

このような人は、やはり自己破産を選択するのが適切だと思われますが(個人再生は安定した給料が維持されていることが条件になっていますから)、問題は同時廃止で処理できるかどうかです。

破産には同時廃止と管財事件の2種類がありますが、このうち管財事件は裁判費用が約40万円と高額です(弁護士や司法書士の報酬とは別に裁判所に支払う費用です)。提出書類の数も多く期間も長期化しますので、出来れば同時廃止で済ませたいのが破産を試みる人の素朴な感想でしょう。一方、同時廃止ならば裁判費用は通常5万円以下と格安です。

しかし同時廃止を試みる時に障害になるのが不動産です。不動産は高額の財産なので同時廃止のような簡略化された手続ではなく管財事件で処理したいというのが裁判所の本音だからです。

その際、名古屋地裁の場合、こういうケースならば不動産を持っていても特別に同時廃止にして良いという基準を発表しています。それは以下のようなものです。

固定資産税評価額を調べて(市区町村役場の税務課という部署で調べることが出来ます)、その評価額を土地ならば2倍、建物ならば1.5倍して評価額の合計を出します。評価額の合計と住宅ローンの残債務額を比較してローンの残債務額の方が上回れば、その不動産は無価値とみなして同時廃止で処理して良いということになっているのです。

現在は不動産価格は下落傾向にありますので、この条件に当てはまる人は結構いるでしょう。住宅ローンが払えなくなって破産したいけど、管財事件の費用はとても払えないと考えている人は検討してみると良いでしょう。

1月 11 2012

代位弁済

代位弁済とは一般の人にとっては聞きなれない言葉だと思います。しかし、この言葉は銀行に対する借金が返せなくなると必ず耳にする言葉です。

銀行ローンを借りる時には、消費者金融とは違って、ほとんどの場合で保証人を要求されます。しかし、最近では少額のカードローンを銀行も用意していて、これに関しては保証人不要となっているケースが多いのです。

ところが、ここが銀行らしいところですが、決して銀行は損しないような仕組を作っているのです。これが保証会社と呼ばれるものです。

保証人が不要の銀行のカードローンであっても必ず保証会社は付いています。(最近では高額の住宅ローンでも保証人ではなく保証会社になっているケースが多くなっています)

保証会社とは債務者が返済できなくなった時、銀行に対して代わりに支払ってくれる存在です。だから銀行は絶対に損はしないようになっているのです。

保証会社を付ける時には保証料が必要です。保証会社は銀行が損しない為に付けるのですから、本来、保証料は銀行が負担すべきものだろうと私は思うのですが、現実はそうなっていません。保証料は借りる時に債務者が負担するのです。(いかに銀行が保護されているか良く分かるでしょう。彼らはリスクを一切取らないで稼いでいる訳です)

そして、現実に銀行ローンが返せなくなった時に保証会社が代わりに銀行に支払うことを代位弁済と呼ぶのです。

このように書くと代位弁済によって債務者は支払義務から解放されるものと勘違いされている人もいるかもしれません。残念ながら全く違います。

代位弁済の後は、銀行に代わって保証会社が債権者になって債務者に取り立てるのです。そして、一般的に保証会社の方が取立てが厳しいのが普通です(銀行は損しないように保護されていますから品良く振舞えるのです)。

銀行のカードローンの中には消費者金融が保証会社になっているものすらあります。銀行から借りているつもりが、返済が滞った途端、取立てが消費者金融になったという笑えない話が現実にある訳です。

債務整理の場合、銀行は法定利息で貸していますので、利息の引き直しで減額になることはありません。従って、任意整理で登場することは、ほとんどない訳です。

銀行ローンの債務整理と言えば、ほとんどが自己破産や個人再生となります。破産や再生を考えている人は代位弁済という言葉を覚えておいた方が良いでしょう。

1月 04 2012

臨時ニュース 武富士その後⑧

明けまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。

さて、新年の一発目が武富士から始まるとは今年も、お騒がせな会社です。

昨年末にスポンサー企業であった韓国A&Pファイナンシャルが急遽、資金繰りがつかないということでスポンサーを降りてしまう事件がありました。(更正決定が出た後にスポンサーを降りるなど、スポンサー企業側にも問題があることは間違いありません)

案の定、大混乱に陥った武富士側ですが、当初予定していた12月の配当金の支払いは中止となりました。

そこで、新たなスポンサー探しを始めた訳ですが、年の押し迫った12月28日に新しいスポンサーが決定したようです。Jトラストという会社です。

ところが、武富士の責任を追及する弁護士の団体が、この新たなスポンサーによる会社更生に対して取消を求める申立を東京地方裁判所に提出したようです。

理由は今回のスポンサーの変更によって、武富士に支払われる対価が30億円ほど減額になるらしいのです。これは文字通り過払債権者に支払われる分配金に大きな影響を与える可能性が大です。

従って、改めて関係人への説明集会の開催や、再度の書面投票が必要だと主張している訳です。

まあ、スポンサー企業の変更という会社更生の根幹に係わるような出来事が起こった訳ですから、「もう一度、債権者の信を問え」というのは説得力のある主張でしょう。

果たして、どういう結末になるのでしょうか。今年も武富士からは目が離せそうにありません。