司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2011年11月

11月 29 2011

出会い系サイト被害

最近、出会い系サイト被害の相談を受けました。サイトを利用した後、確かに解約手続をして解約の画面も表示されたのに、その後もクレジットの請求が毎月、止まらないというものです。

一口に出会い系サイト被害と言っても内容は様々です。上記のようなケースもあれば、画面が「無料」と表示されていたのに後から料金を請求されたり、あるサイトに登録したら全く関係のない別のサイトに勝手に登録されていたり、退会したいと申し込んだら多額の違約金を請求されたりと色々です。

このようなサイトは、ほとんどが怪しい悪質サイトですが、かなり多くの人が泣き寝入りをして、お金を払って、そのままにしているようです。

特に問題を複雑にしているのが、クレジットの利用です。利用料金の支払は、ほとんどの人がクレジットを利用しています。この方がサイト運営会社も料金が取りやすいからです。しかし、クレジットには意外な落とし穴があります。それは、サイト運営会社とクレジット会社とは全くの別会社だということです。

これが原因で、被害を受けたサイト運営会社に対するクレームをクレジット会社に対して言っても取り合ってくれないことが多いのです。クレジット会社の言い分は「ウチは支払の代行をしているだけなので、文句はサイト運営会社に言ってくれ」ということになります。まあ、一応、理屈はとおっています。だから、やっかいなのです。

しかし、被害者からすれば、金を引き落とされるクレジット会社が一番、困るわけです。

今回のケースではクレジット会社と交渉することによって支払をストップすることが出来ました。しかし、いつも簡単に済むとは限りません。特に最近のクレジットは直接、加盟店と契約している訳ではないケースが多いので、やっかいです。では、実際に加盟店と契約しているのは、どこかと言うと、それを決済代行会社と言います。

決済代行会社はクレジットの明細に書かれている場合もありますが、書かれていない場合も結構あります。書かれていない場合は探すのが非常にやっかいですし時間もかかります。

このように、なかなか大変な出会い系サイト被害ですが、粘れば何とかできる場合も多いので困った場合は専門家に相談してみましょう。

11月 21 2011

裁判所の特徴⑥ 名古屋地方裁判所民事第2部

前に名古屋地方裁判所は、いくつかの部に分かれているという話をしました。しかし今回、取り上げる民事第2部は他の部とは明らかに異なっています。それで単独でタイトルをつけて説明することにしました。

民事第2部は別名、民事執行部とも言います。他の民事部は訴訟を担当する部なので裁判官の考え方のクセのようなもので多少の違いはありますが、やっていることは訴訟の進行ということで共通しています。ところが、民事第2部に関しては、そもそも訴訟を取り扱っていないのです。

第2部で扱っているのは、強制執行に関する業務(差押のことです)と、あとは破産や民事再生に関する業務です。従って、債務整理に関わっている司法書士にとって民事第2部は非常に良く訪れる場所だということになります。

そして、民事第2部は、他の民事部とは建物自体が別棟になっています。これは、全く系統の違う仕事をしているのが一つの理由で、あとは他の民事部よりも取り扱っている事務の量が膨大であることも理由になっているでしょう。(職員も多勢います)

私の知る限りでは東京地裁と大阪地裁も同じように民事執行部が独立して他の建物になっています。名古屋は同じ敷地内の別棟ですが、東京や大阪は全く別の住所の建物に入っています。従って、東京や大阪で破産や差押の書類を持って、地方裁判所を探して行ってみたら、全然別の場所を指示されたということがありうる訳です。(もちろん、きちんと検索すれば、ちゃんとホームページに載っていますが、最初から同じ場所にあると思い込んでしまう人も当然いるでしょう)

ただ、名古屋でも建物が独立して別になっているのは本庁だけです。支部になると訴訟と同じ建物の中にあるのが普通です。

本庁の第2部の建物の最上階に破産係と再生係が入っています。仕切りを一つ挟んでいるだけなのですが、驚くほど交流がありません。情報交換のようなことも、ほとんど行われていないようです。

ですから似たようなケースでありながら破産係と再生係で取り扱いが違ったりします。(例えば、賃貸住宅の敷金が破産係では財産には含まれないのに、再生係では財産に含まれるとか) この辺りが、いかにも役所の縦割りという感じで、融通が利かないなあと思います。

 

11月 17 2011

民事訴訟の基本② 要件事実

基本と言いながら「要件事実」という専門用語のタイトルで面食らった人もいるかもしれません。しかし、この要件事実だけは例え専門用語を使っても民事訴訟にとって避けては通れない部分なのです。

民事訴訟の訴状は要件事実に従って作成されます。要件事実が、きちんと書かれているかどうかで訴状の良し悪しが決まります。素人が訴状を書くのが困難な理由は、この要件事実が、よく分かっていないからである場合が、ほとんどです。裏を返せば要件事実を、きちんと理解できれば素人でも、そこそこの訴状を書くことは可能です。(もちろん、そんなに簡単なことではありません。だからこそ、法律家というものが存在するわけです)

ある出来事を訴状に書く場合、どのような法律を適用すべきかを考え、更に適用する法律が決まったら現実の出来事を法律に置き換えると、どのように表すことが出来るかを考えます。

その際、各法律によって、どのような事実があると権利が発生するかを表したものが要件事実と言います。

恐らく、抽象的で分かりにくかったと思いますので、具体的に、お金の貸し借りを例にして説明してみましょう。

お金の貸し借りのことを金銭消費貸借契約と言います(略して金消契約と言います)。よく銀行のローン契約書に金銭消費貸借契約書と書かれていますので、ご存知の方も多いと思います。金消契約は民法587条に記載されていますので、請求する根拠は、この法律になります。

では金消契約が成立する為の要件事実は何かと言うと、次の2つになります。

1 返還の約束が当事者の間にあったこと。

2 金銭が相手方に交付されたこと

何だ当たり前じゃないかと思われた方がいるかもしれませんが、これが実は当たり前ではありません。例えば売買契約の場合は、2番目の目的物の交付は要件事実にはなっていません。従って、売買契約の訴状を書くときは目的物を相手に渡したかどうかは訴状に書かなくても良いということになります。(相手方の反論を防ぐ為に書いておいても構いません。しかし、絶対に必要な訳ではないということです)

しかし、金消契約の場合は2番目の金銭の交付が訴状に書かれていなかったら、そもそも権利が発生する根拠が無いと裁判所に判断されて、門前払いの可能性が高いでしょう。

このように要件事実とは各法律によって異なっています。それぞれの法律に照らし合わせて適切な要件事実を見つけ出して、不足の無いように訴状に書いていく必要がある訳です。

そして、以前のブログにも書きましたが、要件事実が確かにあったということは、原告に立証責任があります。ここが非常に重要なことです。裏を返せば、要件事実以外のことは証明できなくても裁判の直接の負けの原因にはならないということです。

この立証責任があるからこそ、何が要件事実で、何がそうでないかを確実に把握しておく必要があるのです。

要件事実の立証に失敗した場合(証拠が足りなくて証明できなかった場合)、裁判は原告の負けとなります。この場合、被告は裁判所で否定するだけで構いません。要件事実に関しては原告に立証責任がある訳ですから、被告はただ否定しているだけでいいのです。だから、原告に充分な証拠が無いと分かっている裁判の場合、被告の立場は非常に楽なのです。

ただし、原告が証拠無しでも勝てるケースが少しだけあります。それは、被告が裁判に欠席した場合と、裁判所に出席しても被告が何も反論しなかった場合、あとは答弁書という被告の提出する反論の書面を出さずに放っておいた場合です。

このように被告が何も反論する気持ちが無いという態度を示した場合は、原告の請求を全て認めたものとみなされてしまいます(擬制自白と言います)。刑事裁判では自白が証拠にならない場合もありますが、民事裁判における自白は絶対です。自白をしたら自動的に認めたものとして判決が書かれてしまいます。だから、民事裁判では被告は絶対に放っておいてはいけません。必ず反論しなければならないのです。(放っておいたら、例え架空請求であっても原告勝利で判決が出ます)

さて要件事実と立証責任については分かってきたでしょうか。次は訴えられた場合の被告の対応について考えてみましょう。

11月 07 2011

臨時ニュース 武富士その後⑥

ついに武富士の会社更生に対する投票結果が発表されました。残念ながら結果は、「会社更生認可決定」となりました。非常に落胆しております。これで3.3%という信じがたい配当率が決定されてしまいました。

発表によると、過払債権者の同意率(賛成した割合)は何と88.07%となっています。これは、弁護士・司法書士が代理人となった案件とは、かけ離れた数字となっております。

私の知り合いの同業者に問い合わせても、ほとんどが反対票の方が多く(別に強制した訳ではありません。普通に説明した結果、反対の方が自然に多くなるのです)、むしろ数多くの一般債権者(弁護士・司法書士に依頼しないで武富士に申請した人達)が、武富士からの電話等による強烈な説得を受けた結果であろうと容易に推測できるわけです。(武富士は投票にあたって、かなりの電話攻勢をかけていたと聞いております。恐らく、一般債権者などに焦点をしぼって電話をしていたのでしょう)

私の事務所でも9割の人が反対を表明してきて、むしろ私自身は意外な結果だと受け止めていたくらいです。要は普通に武富士の立場や条件を説明して意見を聞くと、自然に反対の方が多くなる訳です。

まあ、直接、担当者と話して、低姿勢に泣き落としでもされると転んでしまう日本人の性質もあるのでしょう。こういう性質は時には人情深くて良い場合もありますが、反対に物事の本質を見失う結論を出してしまう恐れもあり、諸刃の剣と言えるでしょう。

他には会社更生が失敗して破産になると配当は0円になると担当者が説得していた例もあると聞いています。これが本当なら虚偽の説明です。破産になった場合でも会社の財産調査をして(恐らく破産の方が徹底的な調査をされるでしょう)、明らかになった財産から分配はされる訳です。もちろんスポンサー企業が存在しない分、少なくなる可能性もありますが、0円になるとは限りません。

なにしろ元が低い金額ですから、少なくなったとしても、たかが知れていると考えることもできます。それなら武富士を破産させて、きっちり責任を取らせたいと考える人が実際には、もっと多かったであろうと考えるのが自然ではないでしょうか

今回の認可決定により、傍観していた他の消費者金融は、「武富士は、うまいことをやった。我々も同じ手口で過払金をカットできるのではないか」と考え始めることは火を見るより明らかでしょう。今後、続々と会社更生や民事再生のラッシュが起こるのではないかと心配になります。

特に気になるのが、銀行の支援を受けていない大型消費者金融であるアイフルの動向です。以前から武富士の次はアイフルと噂が絶えなかったので、武富士が会社更生で生き残ったという知らせは、アイフルにとって大きかったのではないでしょうか。

皆さんは、アイフルのカウントダウンの声が聞こえてきたような気がしませんか。