司法書士ジャーナル
橋本司法書士事務所ブログ

2023年11月

11月 30 2023

差押の取下による時効の中断(更新)

時効の中断(更新)とは

時効の中断(改正法では更新)とは、今まで進行してきた時効期間がゼロに戻り、再びスタートすることを言います。

裁判上の請求や差押、債務承認(支払または支払の約束)などが代表的な中断の理由になります。

差押が空振りになった場合、時効は中断するのか

では差押をしたものの空振りに終わって取下げになった場合は、時効は中断するのでしょうか。実はこれは非常に難しい問題で結論が出ていません。

裁判では、「中断する」と言う判決と「中断しない」と言う判決が両方出ていて、明確になっていないのです。法律家としては、この質問を受けた場合、「はっきりしていません」と答えるしかない状況です。

取下げの効力について

例えば預貯金の差押をして口座に残高が無かった場合、取下げをします。いわゆる差押の空振りです。法律上は取下げの効力は「最初から無かったものとみなす」なので、単純に考えれば差押をしなかったことになると思えます。

ちなみに私はこの考え方を支持していて、取り下げた場合は差押は無かったことになり時効は中断しないのではないかと考えています。

時効は中断するという判決

では時効は中断するという判決はなぜ出てくるのかについて説明しましょう。

そもそも時効と言うのは、「債権者が取立などの行為を何もせずに放置していた場合、放置するような債権者を保護する必要は無い」という考え方に基づいています。法律では「権利の上に眠るものは保護しない」という言い方をします。

しかし、債権者が差押と言う行為をした場合、たまたま空振りになったとしても、「債権者は権利の上に眠っていたわけではない。そのような債権者は保護するべきである」と考える裁判官もいるのです。

その結果、差押が空振りになり取り下げたとしても時効は中断する、という判決も存在することになります。

結論は出ていない

このように判決が分かれている場合、法律家としては非常に困ります。争った時に勝てる保証が無いからです。法律家個人の見解で「私はこう考える」というのはありますが、実務では決着は付いていない訳ですから保証はできません。

この論点については最高裁判所まで争われたことが今まで無いので、あいまいなままです。早いうちに最高裁判所が決着をつけてくれることを期待したいと思います。

消滅時効について、より詳しい情報が知りたい場合は消滅時効のページをクリック

11月 28 2023

UCSの任意整理 任意整理㊵

UCSとは

UCSは元はユニーカードサービスといって、中部圏を中心に展開するクレジット会社です。中部圏では店舗数の多いスーパーであるピアゴ(以前の店名はユニー)やアピタの系列のカードになります。

名古屋で債務整理の相談を受けると、UCSカードが含まれていることは多いですね。

クレジット会社の中では要求は厳しめ

任意整理に協力的な業者が多い傾向のクレジット会社の中では、UCSは要求が厳しい方です。

まず、3年を超える長期分割には、すぐには応じてくれません。絶対ダメという訳ではありませんが、かなり渋ります。あと、勤務先や収入、家族構成なども詳しく聞いてきます。

結論

結論としては、消費者金融よりはマシですが、クレジット会社の中では厳しいという評価になります。

3年分割ならば応じてくれますので、その範囲で支払可能ならば、積極的に任意整理を検討しても良いと思います。

任意整理について、より詳しい情報が知りたい場合は任意整理のページ

11月 14 2023

ギルドの差押 時効(118)

ギルドからの差押

最近ギルドから差押を受けたという相談が非常に増えています。

「ギルドという業者から給料または銀行口座などの差押えを受けた。どうしたら良いか」という内容です。

差押は、いきなりはできない

これらの相談を受けて思うのが、多くの方が大きな誤解をしていることです。

それは「差押をいきなりすることはできない」という点です。差押をするには必ず事前に裁判をする必要があります。裁判には訴訟支払督促などがありますが、ギルドの場合はほとんどが大阪簡裁での訴訟になります。従って、差押の前には必ず大阪簡裁から訴状が届いているはずなのです。

ギルドの訴訟を放置してはいけない

この大阪簡裁からの訴状を何もしないで放置すると、しばらくすると判決が届きます。判決を受け取ってから2週間が経過すると確定します。こうなるともう手遅れです。裁判での判決が確定した後では、もうひっくり返すことはできません。何か反論がしたいのならば、判決が確定する前にしなくてはいけません。

ギルドの相談の半分以上が手遅れになってから

そして特徴的なのが、ギルドの相談は他の業者に比べて手遅れになってからの相談が極端に多いのです。他の業者の場合、裁判所から訴状や支払督促が届いた段階で相談されることが多いので反論ができます。

しかし、ギルドの場合は判決が確定して差押が来た段階での相談が多いのです。

こうなるともう手遅れで、残された手段は自己破産するか支払うかの選択しかなくなります。

ギルドは一括払いを要求してくる

ギルドは分割払いの交渉が非常に難しい業者です。ほとんどの場合、分割払いを希望しても担当者は聞く耳を持ちません。通常、貸金業者は破産されるくらいならば分割払いの方がマシと言う判断で、分割払いに応じるケースが圧倒的に多いのですが、ギルドは例外です。

担当者自らが債務者に対して、「ウチは一括しか認めないから、支払えないなら自己破産してください」と伝えてきたケースもあります。実際にギルドで手遅れになったことで自己破産の依頼を受けるケースが増えています。

ギルドの対策

ギルドは最初の大阪簡裁での訴訟の段階で相談されたら、ほとんどのケースが時効で処理できます。差押をされて手遅れになってしまった方も内容を確認すると、訴訟の段階で連絡してくれれば、ほとんどが時効で解決できています。こういう方の中には、「自分は知らなかったんだから何とかならないのか」とか「自分は悪くない。悪いのはギルドだ」と文句を言う人が一部います。しかしどれだけ文句を言っても法的にはどうにもなりません。

私が言えることは、「裁判所から何か届いたら絶対に放置しないで専門家に相談する」ということです。最初の訴状が届いた段階で、これを徹底していれば恐らく解決しているからです。自分の身を守るためにも良く覚えておきましょう。

ギルドについて、より詳しい情報が知りたい場合は ギルドのページをクリック