3月 11 2020
遺産の使い込みを取り戻したいケース 遺産分割⑨
相続では割と良くあるトラブルです。
他の相続人が遺産を使い込んでしまったというものです。
「その分を返せ」と請求したところ、相手が聞く耳を持たなかったので、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てるべきか、という相談を受けることがあります。
「遺産の使い込み」は遺産分割調停では解決しない
意外と思われる方も多いと思いますが、実は「財産の使い込みは遺産分割調停の範囲外である」、というのが家庭裁判所の見解です。
使い込みは遺産分割の前提条件についてのトラブルで、遺産分割そのもののトラブルではないと考えられているのです。
分かりやすく言うと、
「そもそも財産がどれだけあるかが決まってなければ遺産分割は始まらないのだから、財産の範囲を決めてから調停を申し立ててくれ。」
と裁判所は言っているのです。
遺産分割調停は決まっている財産の分け方を話し合う場所であって、財産の範囲を決める場所ではないということになります。
「遺産の使い込み」を解決する方法は?
遺産分割調停では解決しないとすると、遺産の使い込みを解決する方法は何があるのでしょうか。
もちろん、使い込んだ相続人が認めて自主的に返還してくれるなら問題ありません。しかし、多くの場合、素直には返還に応じないでしょう。
そのような時は、民事訴訟になります。
訴訟の種類は不当利得返還請求訴訟になる場合が多いようです。
使い込みをされた相続人が原告となり、使い込んだ相続人を被告として訴訟を起こす訳です。この訴訟で決着をつけて遺産の金額を確定させて、それから初めて遺産分割協議が始まることになります。
遺産分割のみを対象とした訴訟は無い
これも意外に思う人が多いかもしれませんが、実は遺産分割のみを対象にした訴訟というのは存在しません。遺産分割訴訟というのは無いのです。
相続人と相続財産が確定した後に分割方法で争いが起こった場合は、裁判としては家庭裁判所の遺産分割調停しかありません。いきなり遺産分割審判を申し立てることも制度上はできますが、現実の裁判所の対応では、例え審判を先に申し立てても裁判官の判断で調停にされてしまうケースがほとんどです。
この点は誤解されている方も多いので覚えておきましょう。
遺産分割審判の後に訴訟はできない
遺産分割調停でも話し合いがまとまらなかった場合は、遺産分割審判になります。審判は家庭裁判所の裁判官が最終的な分割方法の判断を下すものです。では審判で決まった後に改めて訴訟を起こすことはできるのでしょうか。
結論から言うとできません。離婚の裁判に詳しい方は意外に思うかもしれません。離婚の場合は離婚調停でまとまらない場合は離婚訴訟を起こすことは可能です。しかし遺産分割の場合は、このような仕組みにはなっていないのです。
従って遺産分割の争いは、遺産分割審判が確定してしまったら、それが最終決着となります。
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