司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

4月 26 2021

相続登記における登録免許税の免税措置 相続登記(24)

最近、問題となっている所有者不明土地問題に対処するため、相続登記を義務化する仕組みが国会で成立しました。
他にも更なる相続登記の推進のために、登記にかかる登録免許税を条件付で免税する措置も設けられています。

上記の免税措置は今年の3月末で期限が切れる予定でしたが、来年3月末まで延長されました。
全部で2種類の免税措置が用意されています。これから順番に説明していきましょう。

相続により土地を取得した方が相続登記をしないで死亡した場合

個人が相続により土地の所有権を取得した場合において,取得した個人が土地の所有権の相続の登記を受ける前に死亡した時は、令和4年(2022年)3月31日までの間であれば、該当する相続の登記については,登録免許税を課さないこととされました。

上記のケースで免税を受けることができる相続登記の申請のイメージは,以下のとおりです。

現在、登記簿に記載された登記名義人となっている被相続人Aから相続人Bが相続により土地の所有権を取得しました。
ところが、その相続登記をしないまま相続人Bが亡くなってしまいました。この場合、相続人Bをその土地の登記名義人とするための相続登記については、登録免許税が免税となります。

この時、注意すべきポイントが2つあります。
1つは、相続人Bは亡くなっていますから第二の相続が発生しています。第二の相続の相続人をCとした場合、一般的にはAからBの相続登記と、BからCの相続登記の2種類の登記が必要になります(1種類でできるケースもあります)。

この場合、上記の免税措置の対象になるのは、AからBの相続登記だけです。BからCの相続登記については通常どおり登録免許税がかかります。

2つ目は、上記のような場合に、必ずしもCがその土地を相続している必要はなく、例えばBが生前にその土地を第三者に売却していたとしても、AからBの相続登記の登録免許税は免税となります。

市街化区域外の土地で、相続登記の促進を特に図る必要があるものとして法務大臣が指定する土地のうち、不動産の評価額が10万円以下の土地の場合
土地について相続登記(所有権移転)又は表題部所有者の相続人が所有権保存の登記を受ける場合において,以下の3つの条件に当てはまる時は、令和4年(2022年)3月31日までの間,登録免許税を課さないこととされました。

  1. その土地が市街化区域外の土地であること。
  2. 相続登記の促進を特に図る必要があるものとして,法務大臣が指定する土地であること。
  3. 不動産の評価額が10万円以下の土地であること。

ただし、不動産の所有権の持分の取得に係るものである場合は,当該不動産全体の評価額に持分の割合を乗じて計算した額となります。  

市街化区域外とは何か、を理解するためには市街化区域を理解する必要があります。市街化区域とは、住宅をどんどん建てて住んでもいいですよ、という土地の事です。人が暮らす都市としての機能を有する区域のことです。都会は市街化区域が多いということになります。

ということは、「市街化区域外」とは、住宅があまり建っていないような土地、となります。目的の土地がどちらかを正確に知るためには、役所に問い合わせるのが確実です。

法務大臣が指定する土地は、各法務局のホームページに記載されています。ただし、地域によってはかなり大雑把にしか指定されていない部分もあるので、その場合は逐一登記を申請する予定の法務局に確認する必要があります。

この免税措置については当初は所有権移転の相続登記のみが対象でしたが、後から「表題部所有者の相続人が所有権保存の登記を受ける場合」が追加されました。

表題部とは、登記簿の一番上に記載されている部分で、土地や建物の現況(構造や面積など)を表している部分です。
この表題部に所有者欄があって、そこに記載されているのが表題部所有者になります。

表題部所有者は暫定的な権利の表示なので、正式な権利の表示をするには所有権保存登記を受けなければなりません。この登記を受ける前に表題部所有者が亡くなってしまった場合は、相続人が所有権保存登記を受けることになります。

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