司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

1月 19 2018

遺産相続で配偶者を優遇する規定の新設 (相続登記⑭)

現在、政府が進めている民法改正要綱案によると、遺産相続における配偶者優遇措置が強化されることになりそうです。

被相続人(亡くなった人)の配偶者が、これまで住んでいた家にそのまま住み続けられるように配偶者居住権という権利を設定できるという、法的に結婚している配偶者の優遇を強く打ち出した内容となっています。

総務省の全国調査によると、2人以上世帯の家計資産に占める不動産の割合は全国平均で約66.5%になります。
子どもがいる場合の配偶者の法定相続分は2分の1です。
法定相続で遺産を分割した場合、現状では、子どもの取り分をねん出するため、自宅を売却する必要に迫られるケースが多くなっており、配偶者が住み慣れた家を追い出されることで問題になっていました。

  • 配偶者居住権
  • そこで新しい要綱案では、住んでいる家に限って所有権とは別に「配偶者居住権」という権利を新設。
    この権利を設定することによって、他の相続人が家の所有権を持っていても、配偶者は家に住み続けることが出来るようになる、というものです。

    この際、配偶者居住権は家の評価額よりも低くなるので、配偶者が法定相続分で相続しても、住んでいる家を失わない上に、現金・預貯金を相続できるケースが増えると見込まれています。

    配偶者居住権の評価額は住む年数などに応じて変わります。
    また、権利を行使するためには設定の登記が必要となります。
    相続登記と一緒に依頼するのが、自然な流れでしょうか。

    他にも、結婚後20年以上経った夫婦に限り、遺言による遺贈または生前贈与された居住用の家は遺産分割の対象から外せる規定も盛り込まれました。

  • 仮払い制度の新設
  • また相続開始後に預貯金が凍結され、葬儀費用などを相続人が立て替えなくてはならない問題を解決するために、遺産分割前に相続人が預貯金を引き出せるようにする仮払い制度も新設されました。

  • 被相続人の介護について
  • さらに、被相続人の介護などをした相続人以外の親族が、相続人に金銭を請求できる規定も盛り込まれています。
    これは、被相続人と同居していた長男夫婦の場合、長男の妻が被相続人を介護していたときなどが該当するでしょう。

    常々、問題になっていたことなので、画期的な改正と言えるでしょう。

    主だったものはこのくらいですが、まだいくつかあります。
    民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律について(相続法の改正)

    法案は今月から始まる通常国会に提出される見通しで、早ければ今年度中には成立する可能性があります。今までの相続制度を大幅に変える規定が多く盛り込まれているため、国会の成り行きを注目していきたいと思います。

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