11月 19 2014
相続財産に借金が含まれていた場合のトラブル(相続放棄①)
相続した財産に、プラスとマイナスがあった!
父親が亡くなって、相続が始まりました。
相続人は父親の子ども二人(兄・弟)だけです。
父親の残した遺産が、プラスのものだけだったら?
預貯金・不動産・証券などです。
この場合、子ども二人で分ければ良いですね。
父親の残した遺産が、マイナスのもの、借金だけだったら?
子ども二人が、相続放棄をすれば、二人とも借金を背負わずに済みますね。
では、プラスもマイナスも両方あった場合はどうすれば良いのでしょうか。
遺産分割協議書で、ひと安心と思っていたら?
例えば、こんな場合です。
父親には、生前に消費者金融から借金があり、専門家に調べてもらったら、利息の払い過ぎで、300万円の過払金が取り戻せることがわかりました。
プラスの財産ですね。
一方、父親には、住宅ローンが500万円残っていて、売却価格400万円と査定されたため、住宅を売っても100万円の借金が残ることになりました。
マイナスの財産ですね。
プラスの財産300万円、マイナスの財産100万円。
200万円のプラス財産が残るように見えます。
これならば、相続放棄をしなくて済みそうに思えますね。
そこで、住宅ローンを引き続き支払っていくという条件で、兄が不動産を取得し、その代わりに過払金も兄が全額もらうという遺産分割協議がまとまりました。
遺産分割協議書が作成され、「弟は財産も借金も共に相続しない」と書かれていました。
弟も納得して実印を押しました。
これで、万事うまくいったと兄・弟は安心していました。
特に弟は、「もう自分は父の借金とは無関係だ」と思っていました。
ところが……。
借金を払わなくてはいけなくなってしまった
その後しばらくしてから、弟に対して住宅ローン会社から連絡がありました。
「お兄さんがローンを払っていないので、不動産が競売になりました。つきましては、ローンの残債の半分の50万円を支払って下さい」という内容です。
弟はびっくりしました。
「遺産分割協議で、住宅ローンは、兄が支払うことになっていますよ。」
こう答えました。
しかし、ローン会社からは、こう言われたのです。
「いいえ、あなたは相続放棄をしていませんので、残った借金の半分を支払う義務がありますよ。」
どういうことがおわかりでしょうか。
借金に対する、遺産分割協議書の法的な効力
兄は、過払金を先に使ってしまっていました。
つまり、住宅ローンの支払いだけが残っていた状態だったのです。
過払金を全部使ってしまった兄は、住宅ローンが支払えなくなり、その物件は競売にかけられてしまったのです。
もともと、売却しても借金が残る物件でした。
それで、弟のところに、連絡が来たのです。
この場合、法的にはローン会社の言い分は正しいことになります。
遺産分割協議書で法的な拘束力があるのはプラスの財産のみで、マイナスの財産(借金)に関しては協議書は効力がありません。
債権者、この例で言うとローン会社は、例え協議書があっても、法定相続分に応じた割合の借金を請求する権利があるのです。
従って、弟はローン残債の半分を払わなくてはなりません。
このような展開になったら、兄の支払いにはあまり期待できませんね。
終わりに 相続放棄の大切さ
このような事例は、実務では珍しくありません。
相続財産に、プラスとマイナスの両方があった場合は、気をつけなくてはいけません。
何ももらわなかった相続人は、万が一のことに備えて、相続放棄をしておくこととおすすめします。
人生、何が起こるかわかりません。
プラスとマイナス両方の財産を引き継いだ身内が、マイナスの方を全額きちんと支払ってくれるかどうかは、最後までわからないのですから。












