2月 26 2016
後見制度支援信託における、家庭裁判所の指示書(成年後見⑦)
後見制度支援信託の場合、信託する金額が決定したら、信託銀行に振り込みます。
その際、家庭裁判所の指示書が必要になります。
(通常の民事信託では不要です。)
信託する金額はどのように決まるのか
まず、司法書士などの専門職が、本人予算収支表を精査して作成します。
そのうえで、適切だと考える信託金額を報告書に書いて家裁に提出します。
しばらくすると、報告書の金額を家裁が妥当と考えれば、指示書が発行されます。
これで、信託する金額が決定します。
しかし、家裁が金額の訂正を求めてくることもあります。
どのようなときに、家裁が訂正を求めてくるのでしょうか。
家裁の信託金額訂正事例
名古屋家裁の基準では、
「手元に200万から300万の現預金を残して、他は全て信託せよ」
となっています。
この基準に従えば、現預金額が1,100万円になった場合、信託金額は900万円ということになります。
手元に200万円残すと900万円ですよね。
従って、私は900万円の信託金で家裁に報告しました。
900万円ですと、三菱UFJ信託や三井住友信託といった手数料の安い信託銀行は選択できません。
しかし、家裁が基準を設けている以上、仕方がないと判断した訳です。
ところが、家裁は「信託金額を1000万円に変更して、手数料の安い信託銀行で再検討」と言ってきたのです。
もちろん、手数料は安いに越したことはありません。
ただ、親族後見人の手元に残る金額が100万円に減ってしまいます。
これでは、万が一のときの出費を考えると、親族後見人は少々不安になります。
家裁に電話して、「基準とは異なりますが、いいんですか」と聞きました。
すると、「手数料が安くなるなら構わない」という回答でした。
親族後見人の万が一の支出に備える金額をある程度確保しておくのか、それとも手数料を安くして、被成年後見人の財産を守るのかの選択です。
家裁は、被成年後見人の財産を守る立場ですから、当然こうなるわけです。
こういうところが、もう少し、融通が利いて欲しいですね。
あるいは、全ての信託銀行が、財産が1000万円以下でも、信託の手数料を無料にしてくれれば、問題ないのですが。
それぞれ、事情があるのでしょう。
申込みから信託手続き終了までの流れ
- 家裁から指示書が送付されたら、原本を添付して信託銀行に申し込みをします。
- 信託の申込が済み、信託金の入金が済んだら、信託銀行から信託契約書が送られてきます。
- 最後に、終了報告を家裁に提出します。
申し込みの際には、後見登記事項証明書の原本も必要になります。
そして、ここが肝心な部分ですが、信託の申込は
「家裁の指示書が交付されてから3週間以内にする必要がある」のです。
もし、3週間を超えてしまったら、再び家裁の指示書をもらうところから始めなければなりません。
このあたりが、役所っぽいですよね。
従って、申込の手続に手間取っている暇はありません。
信託銀行の中には、「家裁の指示書が交付された後でないと、申込書類の送付を受け付けない」というところもあります。
そうなると結構、タイトなスケジュールです。
できるだけ、早く正確に進めていく必要があります。
だからこそ、信託に際して専門職が選任されているのだろうと私は思っています。
(契約書が2通送られてきて、両方に署名・押印して送り返すと、1通返送されてきます)
これで信託手続は終了になります。
(同時に後見人辞任の申立・報酬付与の申立を行います)
では、次回は司法書士の報酬についての、お話をしましょう












