司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

5月 08 2017

配偶者の居住権の保護(住み慣れた家に住み続けるために)(相続法改正①)

4:14 PM その他

現在、相続法の大幅な改正が検討されています。
まだ確定ではありませんが、一応、このような改正が検討されているということについては知っておいても損はありません。
今回は、配偶者の居住権の保護の規定について紹介しましょう。

例えば以下のような事例を考えてみましょう。
夫が亡くなり、相続人は妻と夫の甥姪の4人です。
夫の姪とはほとんど会ったことも無く他人も同然です、夫の姪からは、家を売却したいから出て行ってほしい、と言われています。
妻は出て行かなければならないのでしょうか。
遺言(子どもがいない場合)相続関係図
配偶者の一方が死亡した場合、残された配偶者は、それまで住んでいた家に住み続けたいと思うのが普通でしょう。

しかし、最近は子どものいないケースも少なくありません
高齢化も進んでいるため、配偶者の一方が亡くなったときには両親も亡くなっていることが多いでしょう。
そうなると、残された配偶者との共同相続人になるのは、亡くなった配偶者の兄弟姉妹か甥姪になります。

高齢で亡くなっている場合は、兄弟姉妹も同様に高齢で亡くなっているケースが多くなりますので、必然的に甥姪が共同相続人になるケースが増加しているのです。

自分の甥姪ではなく、配偶者の甥姪ですから、あまり面識がなく他人も同然というケースも多くなります。
このとき、相続財産に預貯金が多くあれば、あまり問題にはなりません。
めぼしい財産が居住している不動産だけ、あるいは不動産が占める割合が高いと問題が生じます。
あまり面識の無い配偶者の甥姪に対して何らかの財産を渡す必要があるのに、元手が無いということになるからです。
この場合、甥姪からは、不動産を売却して現金に換えて分配して欲しいという要求が来る可能性が大きくなります。
預貯金が多くあれば、預貯金を分割する方法もありますので、住み慣れた家を売却することを避けることができます。
(預貯金は減ってしまいますが……。)

また、事例のケースで夫が妻以外の者に不動産を遺贈していた場合、遺贈された者から妻に対して建物明渡請求をされる可能性があり、現状の法律では、この明渡請求を拒むのは難しいとされています。
これらの不都合を一発で解決する方法があります。
甥姪には遺留分が認められていませんので、「妻に不動産を相続させる」という遺言が残されていればよいのです。
しかし、残念ながら日本では遺言を残す習慣が確立しておらず、まだまだ少ないのが現状です。
最近は、徐々に増えてきていはいますけれど。

それで、このような場合の配偶者の保護規定として、現在、改正が検討されているのが、一定の期間、配偶者に住み慣れた家に住む権利(居住権)を認めよう、というものです。

検討されている居住権には、短期居住権と長期居住権の2種類があります。
これについては、別のブログでご紹介しましょう。

配偶者の短期居住権について