司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2021年7月

7月 12 2021

相続登記の後の抵当権抹消 相続登記(26)

抵当権付不動産の相続

相続した不動産に抵当権が付いていることがあります。ローンを返済中であれば、そのまま相続することになりますが、ローンを完済している場合は抵当権を抹消することになります。

本来はローンを完済した時に登記名義人が抹消しておくべきなのですが、後回しにしたまま放置されているケースも少なくありません。

抵当権抹消を放置されたまま名義人が死亡した時は、相続人が抵当権抹消登記をしなくてはいけません。

抵当権がかなり古い場合

相続してから確認すると、抵当権がかなり古いものである場合があります。そのような場合、抵当権者である金融機関が吸収合併などで変わっていることがあります。

特に平成に入ってからは金融再編で銀行の吸収合併が多いので、そのままである方が少ないかもしれません。

抵当権者が変わっている時の抹消登記

抵当権抹消登記の登記義務者は抵当権者です。売買や贈与の場合、登記義務者に住所や氏名などの変更があった場合は、事前に変更登記を申請しなければなりません。

しかし、抵当権抹消の時の登記義務者の変更については事前の変更登記の申請は不要です。変更を証明する書類を添付して、いきなり抹消登記を申請することができます。

変更証明書とは何か

抵当権抹消登記の登記義務者の変更証明書とは、商号変更や本店移転または合併を証明する登記事項証明書などになります。

これらの書類は通常、金融機関から送られてきます。抵当権者がハウスメーカーなどの場合も同様だと思います。

変更証明書は抵当権者から申請後の返却を要請されることが多いので、抹消登記の際に法務局に原本還付の申請を忘れないようにしましょう。

抵当権移転登記が必要な場合

注意すべき点として、ローンを完済する前に抵当権者の吸収合併が起こった場合、抹消登記の前に抵当権移転登記を申請する必要があります。抹消の原因(ローン完済など)が生じる前に抵当権者が変わったことになるからです。

古い抵当権の抹消は権利証が無いことが多い

長期間放置された抵当権の抹消の場合、権利証が紛失していることも多いです。その場合は、事前通知制度などを利用して申請することになり、手間も時間も余分にかかります。

ローンを完済したら、すぐに抵当権は抹消しよう

長い時間が経つと、もともとは簡単だった抵当権抹消登記も複雑になり手間も時間もかかるようになります。このようなことを避けるためにもローンを完済したら、すぐに抵当権抹消登記をするように心がけましょう。(ローンを完済すると、抹消登記の必要書類が抵当権者から郵送されてくるのが一般的な取り扱いです)

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相続登記

7月 12 2021

権利証が無い時の事前通知制度 生前贈与⑧

権利証が必要な場合

不動産の贈与や売買などの名義変更登記を行う時、登記名義人(贈与の渡す方、売買の売主)は必ず権利証を法務局に提出しなくてはなりません。権利証は登記済証の場合もあれば、登記識別情報の場合もあります。

これは権利証を持っていることが、自身が不動産の所有者であることの証明になっているからです。
一方、相続の場合は登記名義人は死亡しているので、権利証の提出は不要となっています。

権利証を失くしてしまったら

しかし、様々な事情で権利証が見つからない場合もあるでしょう。権利証は再発行されない書類なので、失くしてしまったらどうすればよいのでしょうか。

このような時に解決する方法が2種類あります。一つは本人確認情報の作成、もう一つは事前通知制度です。

事前通知制度とは

本人確認情報については以前にブログで簡単に説明しましたので、今回は事前通知制度について説明します。

事前通知制度とは、登記申請の際に権利証を紛失した旨を法務局に説明して、事前通知によって登記を処理するように申請することで利用できる制度です。

事前通知の利用が正しく申請された場合、法務局は登記名義人に対して、「登記申請があったこと」および「登記申請の内容が正しいと考えるのであれば、一定期間内にその旨の申出をすること」を郵便で通知します。

事前通知制度の郵便の種類

登記名義人が個人の場合は、本人限定受取郵便で通知されるのが一般的です。一方、登記名義人が法人の場合は、書留郵便で送られるようです。

事前通知制度の流れ

法務局から登記名義人宛に事前通知書が届いたら、原則として2週間以内に名義人本人が署名押印して返送しなくてはなりません。

押印は申請書または委任状に押した印鑑と同一ものとされていますので、実印で押すことになります。

抵当権抹消の場合の印鑑証明書

古い抵当権抹消の登記を申請する場合、権利証を紛失していて提出できないことがたまにあります。

抵当権抹消の登記名義人は抵当権者(ほとんどが金融機関)ですが、一般的には印鑑証明書は添付書類になっていません。(所有権の売買や贈与では印鑑証明書は必須です)

しかし、権利証を紛失して事前通知制度を利用する場合は、例外的に印鑑証明書の添付が求められます。通知書に押された抵当権者の印鑑を照合するために必要だからです。

事前通知制度の注意点

事前通知制度は権利証が無くても登記を受け付ける制度なので厳格な運用がされています。例えば、期限内に通知書が返送されなかった場合、通知書に押された印鑑が実印と違っていた場合などは、申請自体が却下されてしまいます。

特に売買の場合はお金が動きますので、買主が代金を払った後で売主が事前通知の返送を忘れてしまったら、お金を払ったのに買主の名義にならないという大変な事態が起こります。
従って、売買の実務の現場では事前通知はまず利用されません。売買の時は本人確認情報を利用するのが一般的です。

贈与の場合も、却下されてしまうリスクがあるので、確実に一回の手続で済ませたい場合は、事前通知制度は避けた方が良いでしょう。

生前贈与についてより詳しく知りたい場合は以下をクリック

生前贈与

7月 07 2021

数次相続の中間省略登記 相続登記(25)

数次相続とは

登記名義人が死亡した後、遺産分割協議を決着させる前に法定相続人の一人が死亡した場合、専門用語で数次相続といいます。

例えば、Aが死亡して法定相続人が妻Bと長男Cだった場合、遺産分割協議の前に長男Cが死亡してしまい、長男Cの法定相続人はCの妻Dと、Cの長女Eだったというようなケースです。

中間省略登記とは

数次相続の場合、原則どおりなら相続登記(名義変更)は2回行わなければなりません。Aの相続登記を行ってから、次にCの相続登記を行うことになります。
これだと手続きを2回行うことになるので、登録免許税も2回支払うことになります。

しかし、ある条件を満たした場合、中間省略登記と言って2回分の相続登記を1回で済ませることができるのです。中間省略登記だと、支払う登録免許税も1回で済み非常にお得です。

中間省略登記の条件

数次相続で中間省略登記を行える条件は、「途中の相続が単独相続であること」です。単独相続とは、相続人が一人であることを言います。

事例の場合で言うと、Aの法定相続人は妻Bと長男Cの二人です。
このままでは中間省略登記はできません。

この場合、BとCの法定相続人で遺産分割協議をして、Aの相続人をCのみにしてしまえば単独相続になり、中間省略登記が使えるようになります(単独で相続するのは途中で亡くなった相続人です)。

この時の遺産分割協議に参加する法定相続人は、B・D・Eの3人になります。DとEは、死亡したCからAの相続権を受け継いだ形で参加します。

※単独相続でなければならないのは途中の相続のみです。最終の相続人(この場合はCの相続人)は二人でも構いません。
※数次相続の中間省略登記の原因日付は以下のようになります。
平成〇年〇月〇日C相続(日付はAの死亡日)
令和〇年〇月〇日相続(日付はCの死亡日)

間違えやすい代襲相続

数次相続と似ているため間違えやすいケースに代襲相続があります。

例えば上記のケースで、Aが死亡するよりも前に長男Cが死亡してしまったら、数次相続ではなくて代襲相続の問題になります。

数次相続か代襲相続かを決めるポイントは死亡の順番です。
Aが死亡するより前にCが死亡した場合は、Cには子がいますので、Cの長女EがCの代わりにAの遺産の分割協議に参加することになります。

ここで重要なのが、代襲相続の場合はCの妻Dは分割協議に参加できないということです。

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