司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

2月 18th, 2022

2月 18 2022

遺言による「相続」と「遺贈」の違い 遺言(25)

遺贈とは

相続は聞いたことがあっても、遺贈は聞いたことが無いという人は珍しくないでしょう。まずは遺贈について簡単に説明しましょう。

遺言で渡す相手が法定相続人であった場合、「相続させる」と言う表記になります。しかし、この表記は法定相続人でなければ使うことができません。法定相続人でない人に相続させることはできないからです。

では法定相続人以外の相手に遺言で渡す時はどうするのかと言うと、この時に「遺贈する」という表記を使うのです。

※会社経営者などは、別の事情からあえて「遺贈する」を使うこともあります。

遺贈は税金面で不利になる

遺贈は相続に比べて、相続税や不動産の登録免許税などが高くなることが多いです。ですから、法定相続人に渡す場合は表記を「相続させる」と書くように気を付けましょう。

たまに相続の相談で自筆証書遺言を持ち込まれて、家裁で開いてみたら「〇〇に譲る」と書いてあって、トラブルになる場合があります。

「譲る」というのは一般的に遺贈と解釈されることが多いので、〇〇が法定相続人の場合に税金面で不利になる可能性があるからです。(法定相続人に遺贈するのも法的には有効です)

このようなことを防ぐためにも、遺言を書く時は専門家に相談するのが良いでしょう。

複雑な事例

以下のような相談がありました。
遺言希望者は80代の女性で、ご主人は既に亡くなられています。こちらの女性はとても80代には見えないほど、お元気な様子でした。

お話を聞くと、ちょっと複雑な相談で、子どもがいなくて兄弟姉妹がAさん、Bさん、Cさんの3人いるのですが、うちBさん、Cさん2人が既に亡くなられているようでした。Bさん、Cさんには、それぞれ2人と4人の甥姪がいて、法定相続人は合計で7人と言うことになります。(ご存命のAさんにも甥姪が4人います。)

複雑なのはここからで遺言で渡したいのは、存命しているAさんの甥姪4人と、亡くなられたBさんの甥姪2人ということでした。Cさんの4人の甥姪には疎遠なので渡したくないとの希望です。
一般の方が自力で書くと間違えやすい事例だと思います。

相続と遺贈が混じることになる

ここで注意すべきなのは渡したい相手に法定相続人と、法定相続人ではない人が混ざっているというところです。

亡くなられたご兄弟の甥姪2人は法定相続人ですから「相続」と言う表記になりますが、ご存命の兄弟の甥姪4人は現時点では法定相続人ではないので「遺贈」という表記になります。

更に予備的遺言を書いておくべき

気を付けたいのは、今回のような場合、もしご存命の兄弟が遺言者よりも先に亡くなった場合(年齢が近いので充分可能性があります)、その瞬間に甥姪が法定相続人になるということです。

遺言を書き直して「遺贈」を「相続」に修正するという方法もありますが、その時に遺言者が認知症になっていたら、書き直すことはできません。

このようなことを防ぐために予備的遺言を書いておく方法があります。
予備的遺言とは、「もし〇〇が先に亡くなったら、~する」という文言を遺言に入れておく方法です。

今回のケースだと「もし〇〇(存命の兄弟)が遺言者よりも先に亡くなったら、甥姪に相続させる」となるでしょうか。
このような方法を一般の方が気付くのは、なかなか難しいでしょう。遺言を正確に書くのは意外に大変なのです。

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