司法書士ジャーナル<相続>
橋本司法書士事務所ブログ

12月 03 2015

持っている財産で決まる?後見制度支援信託の現状(成年後見②)

最近、全国の家庭裁判所で強力に推し進められているのが、「後見制度支援信託」と呼ばれる制度です。

この制度は、そんなに古い制度ではありません。
最近になって急に増加しました。

自分が関わった時に、どうして良いのか分からないという人も多いのが実情です。
そこで、詳しく説明しようと思います。

後見制度支援信託の概略

後見制度支援信託とはどういうものなのでしょう。

被後見人さんの、財産はどのくらいありますか?
一定額以上の財産をお持ちの場合、財産の一部を手元に残して、残りを信託銀行に預けるよう、家庭裁判所から指示が出ることがあります。
信託銀行からのお金の引き出しに関しては家庭裁判所の指示書が必要となります。

家庭裁判所が、被後見人さんのお金の管理に関して、より積極的に関わる制度ということです。

一定額とは、いくら位なのかと気になりますよね。
これは各家庭裁判所によって異なるようです。

ちなみに、名古屋家庭裁判所の場合は、1000~1200万円以上あると、この制度の対象となるケースが多いようです。

では手元に残る一部の財産とは、いくら位なのでしょう。
これも名古屋家裁の場合ですが、だいたい200万から300万の間というのが相場のようです。

後見制度支援信託の2つのパターン

①複数後見方式
既に親族後見人が付いていて、その上で更に、司法書士や弁護士などの専門職が二人目の後見人として選任されます。

この場合、権限分掌が行われることが多いです。
権限分掌とは、親族後見人が身上監護、専門職後見人が財産管理というように権限が分かれていることを言います。

そして、専門職後見人が信託手続を進めて、信託が終了した段階で後見人を辞任して、全ての権限を再び親族後見人一人に戻すというパターンです。

②リレー方式
バトンタッチするパターンです。
誰から誰にバトンタッチするのでしょうか。

専門職後見人から、後見人候補者(親族の場合が多い)にです。

新規に成年後見の申立がされた時に、先ほどの一定額以上の財産があることが確認できた場合、まずは専門職後見人一人を選任します。
そして信託手続を任せて、信託が終了した段階で専門職後見人は辞任して、後見人候補者
にバトンタッチするのです。

後見制度支援信託2つのパターンの現状

現状では、①のパターンが圧倒的に多いです。
しかし、①のパターンは徐々に少なくなっていくと思われます。
それは、②のパターンが同時に行われているからです。

そのうち、一定額以上の財産がある人は、ほとんどが新規申立の時点で信託が終了している状態になります。
名古屋家裁の予想では、①パターンのピークは2016から2017年ごろです。

では次回は、具体的な手続について、お話をしたいと思います。

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12月 03 2015

兄弟姉妹の相続登記は、書類収集が大変!(相続登記⑥)

被相続人(亡くなった人)には、配偶者は既に亡くなり、子どももいませんでした。
そこで被相続人の兄弟姉妹が、相続をすることになりました。
手続はどうなるのでしょうか。
簡単にはいきません。
証明しなくてはならないことが、たくさんあるからです。

兄弟姉妹が相続人になる場合

日本の民法では、相続順は以下のようになっています。
まず配偶者は生きていれば必ず相続人になります。
それ以外には、

(1)第一順位  子供
(2)第二順位  直系尊属
(3)第三順位  兄弟姉妹

となっています。

上記の例の場合では、第三順位の兄弟姉妹が相続人となります。
そのためには第一順位と第二順位が全て生存していないことを証明しなくてはなりません。
主に戸籍で証明します。
他の相続人のときとは異なり、膨大な量の戸籍の収集が必要となります。
正直なところ、司法書士ですら、兄弟姉妹の相続の資料を集めるのは相当に大変な作業です。

では具体的に何が大変なのかを説明していきましょう。

①兄弟姉妹が何人いるかの証明

これを証明する為には、被相続人の父親と母親、双方の出生から死亡までの全ての戸籍の収集が必要となります。
なぜ必要なのでしょうか。

被相続人の父親または母親に、過去のどこかの時点で生まれた、被相続人の把握していない子が存在するかもしれないですよね。
だから、必要になるのです。

実際に、ありますよ。
「うちはそんなこと、一度も聞いたことがないから大丈夫」
調べてみると、母親が若い頃、誰かと結婚していて子どもを1人産んでいたということは、珍しくありません。

わたしは何度も、目にしています。

それに、そもそも父母の戸籍自体が、集めるのに時間がかかることもあります。
よくお引越しをされている方は注意が必要です。
本籍も動いていたりすると、特に面倒なことになりやすいですよ。

②直系尊属がいないことの証明

まずは、両親が既に亡くなっていることの証明が必要です。
しかし、これだけでは済みません。

祖父母が亡くなっていることの証明も必要になります。
祖父母は、父方、母方と双方いますので、合計4名分の証明が必要となります。

ちなみに、祖父母が生年月日から110歳を超えていることが明らかな場合は、生年月日の証明だけで良いということになっています。
これは、法務局が、110歳を超えていれば亡くなっていると推定してくれる取り扱いになっているからです。

裏を返せば、110歳を超えていないことが明らかな場合は、祖父母の上の世代の証明も必要となります。
(若くして亡くなられた場合の相続では、可能性がありますね)

③兄弟姉妹で既に亡くなられた方がいる場合は?

兄弟姉妹は被相続人と年齢が近い場合が多いですね。
そうすると、被相続人が亡くなられたときには、兄弟姉妹の中にも亡くなられた人がいるケースが多くなります。

その場合、親に代わって兄弟姉妹の子供に相続権が発生します。

これを民法では代襲相続と呼びます。

兄弟姉妹の相続の場合は、代襲相続が発生しているケースが珍しくありません。
そのときは、亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの全ての戸籍を収集する必要があります。
子どもが何人いるのかを調べる為です。

終わりに

いかがでしょうか。
ここまで読んできて、うんざりしてきた方も多いのではないでしょうか。
兄弟姉妹の相続登記は、一筋縄ではいきません。
あれも足りない、これも足りないと、何度もあとから取る必要が出てくることもよくあります。
法律に詳しい方でも途中であきらめしまうのも、うなづけますね。
多少のお金で解決するなら、司法書士に依頼するのも1つの方法です。
貴重な時間の節約にもなりますよ。

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12月 02 2015

「敷地権の無い区分建物」の登記事項証明書の取得方法(相続登記⑤)

敷地権の無い区分建物とは、どういうものでしょう。
その登記はどうなっているのでしょうか。
登記事項証明書を取得するときの注意事項もあります。
見ていきましょう。

マンションで、敷地権の表示がある場合

マンションのことを不動産登記法では区分建物と呼んでいます。
区分建物の場合、登記の仕方が一戸建てとは異なり、登記事項証明書(登記簿)を見れば、すぐに分かるようになっています。

具体的には、「専有部分の建物の表示」という項目があり、全体の中の一部を所有していることが表示されているのです。
(一戸建てには、この表示はありません)

更に、区分建物の場合、「敷地権の表示」がある場合があります。
これは必ずある訳ではありません。

敷地権の表示がある場合は、一戸建てのように土地と建物に登記が分かれていません。
土地が建物にくっつく形で、建物の登記に土地の登記も含まれているのです。
従って、建物の登記事項証明書を取れば、土地の登記事項証明書は不要となります。
(不動産登記法では、「敷地権付区分建物」と呼びます)

マンションで敷地権の表示が無い場合

一方、区分建物であっても敷地権の表示が無い場合は、土地と建物の両方の登記事項証明書を取得する必要があります。
この時に、ちょっと、ややこしいことが起こります。

区分建物の土地の場合、当然、マンションの住人全員が、その土地の所有者となっています。
この状態を「共有」と呼び、共有している人を「共有者」と呼びます。
大規模マンションの場合は、かなりの人数の共有者がいることになります。

敷地権の表示の無い区分建物の土地の登記事項証明書を、何の指定もせずに取得すると、これらの共有者全員分の情報が記載されたものが出てきてしまいます。
大規模マンションの場合は相当に分厚い束になり驚く人も多いようです。

中身は共有者全員の住所・氏名、いつ購入したか、購入した時の借入金額、担保を付けている金融機関の名称などです。

ここまで読んで「そんなの個人情報の流出じゃないか」と思った人は、残念ながら早合点です。
上記の情報は公開が義務付けられた情報なのです。
不動産登記法では、「登記事項証明書は誰でも取得することが出来る」と規定されているからです。

もともと、不動産登記とは、買主が不良物件をつかませられないように、購入する前に不動産の情報を入手する為に整えられたものです。
不動産は高額な商品ですから、何かあったら取り返しがつきません。
それで常に情報を公開して安心して取引できるようにしたのです。

必要な部分だけ登記事項証明書を取得する方法

司法書士が敷地権の無い区分建物の登記を引き受けた時は、通常、依頼者以外の部分は記載されていない土地の登記事項証明書を取得して渡します。

例え公開が義務付けられていると言っても、わざわざ第三者の情報が満載されたものを渡すのには抵抗があります。
また、何ページにもなる分厚い書類だと依頼者の情報を探すのも一苦労で、分かりにくいというのもあります。
窓口で特定の所有者を指定して取得するのは可能なのです。

そこで問題になるのが、最近、増加してきたオンライン申請です。
オンライン申請は費用も安く窓口に出向く必要も無いので非常に便利です。
しかし、欠点もあります。
それが、「敷地権の無い区分建物の土地の登記事項証明書を取る時に特定の所有者の指定が出来ない」というものです。
つまり、オンラインで取ると必ず共有者全員分が記載されたものが届いてしまう
のです。

従って、特定の所有者のものだけを取ろうと思ったら、窓口で申請するか、郵送申請するか、しかありません。
しかし、どちらもオンライン申請よりも100円高くなります。

情報が少ない薄い方が高いなんておかしいと思った方もいるかもしれません。
発行する側からすれば、一人だけ抜き出す方が事務作業としては手間がかかる訳です。

法務省は、いずれオンライン申請でも、特定の所有者を抜き出して申請できるようにしたいとは言っていますが、目途はたっていません。
今のところは、窓口か郵送の申請で取得するしかないのが実情です。

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7月 10 2015

登記識別情報のシールはがれ、紛失の対処法(相続登記④)

登記識別情報の失効という手続

登記識別情報の目隠しシールが気づかないうちにはがれていた、あるいは登記識別情報の記載された紙を紛失してしまった、というような場合、どうしたら良いでしょうか。

こんな場合に備えて、登記識別情報には「失効」という手続が用意されています。
登記識別情報を失効した場合、そのパスワードは登記には使えなくなります。
ようするに無効になるのです。
クレジットカードを失くした時の「紛失の届出」のようなものだと言えば分かり易いでしょうか。

登記識別情報の再発行はありません!

しかし、クレジットカードとは異なる点が一つあります。
それは再発行が出来ないということです。どんな理由であれ、法務局は登記識別情報の再発行を認めていません。

これは恐らく、もし再発行を認めてしまったら、大きなトラブルになるからでしょう。
免許証などを偽造して本人になりすまして再発行を申請してきた場合に、法務局が「なりすまし」を見抜けなかったら大変です。
何しろ、不動産ですから金額も高額になりますので、謝って済む問題ではなくなります。

失効後、次に登記するには?

では失効させた場合、次に登記をする時には、どうすれば良いのでしょうか。

これについても対策が用意されています。
司法書士に「本人確認情報」というものを作成してもらうのです。
これが添付されていれば、「登記の専門家である司法書士が間違いなく本人確認をした」ということで、法務局は登記手続を受け付けてくれます。

しかし、本人確認情報は司法書士にもリスクがあります。
登記識別情報を持っていない人に対して、不動産の権利者であることを保証する訳ですから、もし間違っていたら当然、司法書士の責任になります。

ですから、本人確認情報を作成する場合、追加の費用を頂くのが通常です。
これは責任が重い立場なので、ご理解頂きたいと思います。
また、登記識別情報よりも慎重な審査が法務局でされますので、通常よりも時間がかかることも覚悟しておいて下さい。

例え時間と費用が余分にかかったとしても、他人に見られた可能性がある登記識別情報を放置しておくことは、おすすめできません。
不動産という高額の財産を安全に維持する為にも、心配だと思ったら迷わず失効手続をしましょう。

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7月 09 2015

登記識別情報とは? 昔の権利証との違い(相続登記③)

不動産登記法が改正されてから、新しく登記を行うと、従来の「権利証」とは異なり「登記識別情報」というものが発行されます。
今回は、まだ見慣れない人も多いと思われる登記識別情報について説明しましょう。

権利証から登記識別情報へ

長らく日本の不動産登記では、所有権を証明する重要書類として「権利証」が使われてきました。
権利証とは正式名称を「登記済証」と呼び、不動産を譲ることを「権利証を譲る」と表現する場合もあり、金庫などに大切に保管していた人も多かったのです。
(厳密には、権利証を持っているだけでは所有権の証明にはなりませんが、一般的にはそのように考えられていますね。)

ところが長く親しまれていた権利証が、不動産登記法の改正により発行されなくなりました。
その後は、新しく「登記識別情報」という名前の1枚の紙が発行されるようになりました。

実は、この登記識別情報は、従来の権利証とは大きく性質が異なっています。では何が違うのでしょうか。

その違いを理解するためには、まず何故、権利証が重要な書類なのかの説明をする必要があります。

売買、借入時の必要添付書類としての権利証

不動産の権利を売買で他人に移転する場合、所有権移転という登記手続が必要です。
金融機関から金を借りて不動産を担保に入れる場合も、抵当権設定という登記手続が必要です。
その手続をする際に、申請する法務局に対し必ず権利証を添付書類として提出しなければなりません。
権利証が添付されていなければ、登記は却下されてしまいます。

権利証を持っていなければ、他人に売ることができない、金を借りて担保に入れることも出来ません。だからこそ権利証は重要書類だったのです。

これが登記識別情報になった場合、どのように変わるのでしょうか。

登記識別情報の注意点!重要なのは、紙ではない!

登記識別情報とは「紙に書かれた12桁のパスワード」です。重要なのは発行された紙ではなくて、パスワードそのものなのです。

従って、売買による所有権移転登記や、担保に入れるための抵当権設定登記の際に必要なのは、パスワードであって紙ではありません。
ここが最も大事なところです。

ようするに、登記識別情報の場合は、紙が手元に置いてあっても、そこに書かれていたパスワードを他人に知られてしまったら、取られたのと同じことになってしまうのです。

「何と恐ろしいことだ」と思った人も多いでしょう。
しかし、一応、予防策があります。
それは、発行された紙には、パスワードが書かれた部分に特殊なシールが貼ってあって読めないようになっています。

そのシールは一度はがすと、二度と貼れないように特殊な加工がしてあります。
従って、次に登記手続をするまでは貼ったままにしておけば、見られる心配はなくなります。
もし、はがれていれば、それは誰かが見たということが分かるようになっているのです。

では、万が一、はがれていたのを見つけたら、どうしたら良いのでしょう。それは、次回に説明したいと思います。

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7月 07 2015

2次相続の相続登記は、遺産分割協議書の工夫が必要(相続登記②)

2次相続とは、手続前に相続人が亡くなってしまうことです。
これが発生すると、非常にややこしいことになる可能性があります。
しかし、そんな場合でも例外はあります。ご紹介しましょう。

私の事務所で受けた相談です。
父親が亡くなった後、名義変更をしないで放っておいた不動産がありました。
そのうちに母親も亡くなってしまって、「さすがにまずいかな」と思って名義変更の相談に来た人がいました。

この場合、本来ならば、

    一旦、父親の相続登記をする
    その後、母親の相続登記をする

というのが、自然な流れです。
ただし、このやり方だと手間も時間も費用もかかります。

しかし、今回紹介した事例の場合、ある条件を満たすと、1回の相続登記で手続が済んでしまうことがあるのです。
もし1回でできれば、時間も早いし費用も安いですから、その方が良いですよね。

ただし、通常の相続登記とは異なり、遺産分割協議書にちょっとした工夫が必要です。
定型的な協議書のままでは法務局の審査は通りません。

また、添付書類に関しても、取得すべき戸籍の量が増えます。
ただでさえ、相続登記は添付する戸籍の量が多い手続です。
それに加えて、母親の「出生から死亡までの全ての戸籍」が必要になります。

本来、2回で行うべき手続を1回で行う訳ですから、特殊な手続には違いありません。
確かに時間と費用は節約できますが、ある程度の手間はかかるということは知っておいて下さい。

条件に合わなかった場合は、当然、2回で行うことになります。
余分に時間や費用もかかることになります。
条件に合うかどうかは、偶然に左右されます。

ごくまれに、故意に相続登記を遅らせることを考えている人がいます。
それはリスクが大きいのでおすすめしません。
リスクを避けるためにも、名義人が亡くなったら出来るだけ早めに相続登記をしましょう。

>>>相続登記について、詳しく知りたい方は<<<

7月 07 2015

相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書(相続放棄④)

相続放棄のふたごの書類「通知書」と「証明書」

相続放棄には、非常に似通った名前の二つの書類があります。
「相続放棄申述受理通知書」「相続放棄申述受理証明書」です。
以下、長いので前者を「通知書」、後者を「証明書」と呼びます。

名前だけではなくて、書類自体の見かけも非常に似ています。
「こんなの名前がちょっと違うだけで、ほとんど同じじゃないか」と思うでしょう。

通知書と証明書の効果の違いは?

しかし、法的には、この二つの書類は明らかに効果が違います。
「通知書」の方は公的な証明としては使えないことが多いのです。

相続放棄の手続が終了すると、放っておいても家庭裁判所から送られてくるのが「通知書」です。
裁判所から届いたのだから、そのまま相続放棄の証明として使えるんだろうと普通の人なら思ってしまいます。
(実は私も始めは、そう思っていました。)

ところが、「通知書」をコピーしてローンの債権者に送ると、
「これではダメです。証明書を送って下さい」と言われることが多いのです。
また、不動産の相続登記(名義変更)で法務局に提出しても、
「改めて証明書を出して下さい」と言われます。

ようするに「通知書」とは、単に相続放棄の手続が完了したという、家裁からのお知らせなのです。
(その割には「証明書」とあまり違いの無い書類なのですが。)

一方「証明書」は、相続放棄をしましたということを、家庭裁判所が証明してくれている書類です。
必要なときは、添付書類と申請書と手数料をそろえて家裁に申請しなくてはなりません。

「通知書」は相続放棄をした人に送られるお知らせなので、一通しか発行されないのが普通です。
複数必要な時はコピーを取って使用することになります。

「証明書」は何通でも申請できます。
債権者や法務局に出す時は、コピーではなく原本が必要ですから、提出したい分の通数を申請することになります。

「証明書」の原本が、文字通り相続放棄の事実を公的に証明した書類になります。そのためには、手続が終了した後も一手間かかるということを覚えておきましょう。

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7月 03 2015

相続放棄の「照会書」って何?(相続放棄③)

実際に相続放棄の手続をした人でないと、なかなかお目にかからない書類が「照会書」と呼ばれるものです。
これは、家庭裁判所に相続放棄の申立をしたあと、最初の審査が終わるころに、送られてくる書類です。
相続放棄をする相続人にむけての書類なのです。

相続放棄における「照会書」の内容は?

中には、いくつか質問事項が書かれています。
質問の内容は主に、以下の2つです。

    本人確認
    本人の意思確認

ですから、この照会書に関しては、本人が直接答えなくては意味がありません。

たとえ、書類の送達先(郵送先のことです)を司法書士事務所にしていても、照会書だけは放棄をする相続人の住所に郵送されます。

相続放棄の照会書は、間違うと取り返しがつかない

家裁は、照会書の回答を、重要視していて、回答によっては相続放棄を認めないこともあります。
これだけ厳しい対応をするのは、相続放棄の効果が非常に大きく、間違った相続放棄を家裁が認めてしまったら後で取り返しがつかない、と考えているからでしょう。

従って、私の事務所では、相続放棄の依頼を受けた場合、照会書が自宅に届いたら必ず連絡をして頂くように前もって伝えておきます。
万が一、不適切な回答をして返送してしまったら、放棄が認められなくなる可能性があるからです。
連絡を受けたら、どのような回答をすべきか、注意点は何かを詳しく説明して、審査が通るような状態で返送して頂きます。

ここまでしないで、本人にお任せにしてしまう事務所もあるようです。
しかし、照会書は家裁が重要視している書類ですから、申立書と同じくらい神経を使うべきです。

照会書は、家裁によって書式も質問の内容も違います。
ある家裁で質問されたことが、別の家裁では質問されない、あるいはその逆のこともあるのです。

従って、あまり遠くの事務所に依頼すると、管轄の家裁の照会書については詳しく知らないということも考えられます。
相続放棄に関しては、近隣の事務所に依頼された方が良いでしょう。

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7月 02 2015

相続放棄は結構大変で時間がかかります(相続放棄②)

相続放棄の申立書を提出してから、1週間以上待たされる

相続放棄の手続は、どの程度の時間がかかるのでしょうか?

この答えは、「想像よりも時間がかかる」です。
ほとんどの人は、「たいして時間がかからない」と考えているのではないでしょうか。
「戸籍や住民票を取るようなものなんじゃないの」と思っている人もいるかもしれません。

実際には、必要書類を添付して申立書を家庭裁判所に提出してから、1週間以上待たされる裁判所がほとんどです。
「なんで、そんなに時間がかかるんだ」と思うかもしれませんね。

これは、相続放棄が、重大な権利変更の効果をもたらすので、慎重に審査をしていると考えるべきでしょう。なにしろ相続の権利を完全に無くしてしまう訳ですから。間違っていたら大変なことです。

相続放棄の審査は1回だけではない

しかも、審査は1回だけではありません。

1回目の審査が終了した後で、相続放棄をする相続人に家庭裁判所から、書類が郵送されます。
「照会書」という質問書です。
この書類に書かれた質問に答えて家裁に返送すると、今度は2回目の審査になります。
ちなみに、この質問の答え方や印鑑の種類によっては、相続放棄が認められないケースもありますので注意が必要です。

2回目の審査は、1回目の審査よりは若干早いですが、それでも翌日ということはありません。
ここでも数日の時間がかかります。
審査の結果、問題無ければ「相続放棄申述受理通知書」という書類が家裁から送られてきます。
これでようやく相続放棄が完了したことになります。

しかし、実務の面では、これで終わりにはなりません。
債権者である金融機関に相続放棄を証明する書類を送る必要があります。
また、不動産の名義変更をするために法務局へ提出する場合も同様の書類が必要になります。

この為には改めて家裁に証明書の発行を申請しなくてはなりません。
これがまた、添付書類等が必要になりますので、戸籍や住民票を取るようにはいかないのです。

このように、相続放棄の手続は、全て終了するまでを考えると結構大変で時間がかかります。
「簡単に終わるんじゃないか」というイメージを持っていた人は注意しましょう。

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3月 25 2015

遺言は、相続人の争いをなくすためのマナーです(遺言①)

遺言がなかったばっかりに、分割協議が2年に

こんな事例がありました。

夫婦で夫が亡くなって、子供がいません。
妻(仮にAさんとします)は認知症を患っており、成年後見人としてAさんの姪(めい)が選任されています。
姪は認知症のAさんに代わって相続手続をする必要があります。

しかし相続人は、Aさんだけではありません。
会ったこともないAさんの夫の兄弟も相続人なのです。

まず、居場所を探すところから始まります。
その後も遺産分割協議はなかなか進まず、2年近くも経過してしまいました。
それでも、まだ決着はついていません。

世の中には、このようなケースで困っている人が、実は意外と多いのです。
これから高齢社会をむかえる日本では皆が真剣に考える必要があるでしょう。
特に上記の例のように、将来相続人になり得る人の中に、ほとんど会ったことが無い人が含まれている場合は、事前の対策が必要です。
こういうケースに遭遇するたびに、「ああ、遺言を残しておいてくれたらなあ!」と、つくづく思います。

遺言は、相続人の争いをなくすためのマナー

上記のケースでは簡単に解決する方法は遺言しかありません。

遺言が残っていれば、後に残された人の負担は大幅に軽減されます。
例えば、子供がいない場合、財産を妻に相続させるという内容の遺言があれば良いのです。
(実際の文言は、もう少し詳しくなります。)
そうすれば、兄弟姉妹ともめる心配はありません。

遺言は生きているうちに残さなければなりません。
もし、遺言がないために、相続人の間で争いが起こったらどうなるでしょう。
最悪の場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることになります。

親族が裁判所で争うことを望む人はいないはずです。
しかし、現実には、収拾がつかなくなるケースは決して少なくないのです。

私は、
「遺言とは、亡くなった人の最後のメッセージであるとともに、残された相続人の争いを無くす為の一つのマナー」ではないかと思っています。

日本でももっと遺言が広まって、争いが少しでも減ればいいなあと、常々思っています。

>>>遺言について、もっと詳しく知りたい方は<<<

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